なんとなくな日々 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.64
  • (49)
  • (117)
  • (138)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 1106
感想 : 101
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292380

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 穏やかな秋の日、お日様があたるお気に入りの場所でこの本を読むと、ほっこり癒されます。
    解説でも書かれていますが(串間努さん著)、「川上さんにはもっと人にいえないような体験がきっとあるに違いないと思いますが、それは私も同じなので、大人なるものそのようなことは詮索しないものなのであります」

    きっと大変な半生を送ってこられたのに、「なんとなく」な日常を、さらりとありのままに表現されている。読み手のほうは、ゆるく楽しんでおられる様子に安堵し笑えてしまう。そういう言葉選び、起こる出来事を面白く捉えられてクスっと笑えてしまう。肩の力を抜かせてもらえる。
    例えばこんなところ、
    お葬式の帰り道、河童に会ったという彼女(お知り合い?)のお話。河童に似た生き物、あるいは河童らしきものではなく河童。「ほんとうなの、その話」
    そのたびに彼女は真面目な顔つきで深く頷くのであった。
    のせられ、居るわけないと思いながら思わず河童の顔が浮かぶ。

    これは自分(私)か、と思う所もあった。人の顔を正視するのが苦手なところとか、行きつけのお店を作るのが苦手(私の場合は、どこまで距離を近めていいか戸惑う、次もしゃべるのかと戸惑う)とか。そうそうほんとうに、と思うこと多い。

    なんとなくな日々1 
    つくづく川上弘美さんは海沿いが似合うなと思う。東海道線下りに乗り、熱海方面に電車で揺られがたごと行く。一人でも、大事な人と二人でも良い(グループは合わなさそう)。

    ここも好き 
    雨はなかなかやまない。わたしはやきとりの串を持ったまま、雨をじっと眺めている。春の雨をじっと眺めている。

  • ブックオフ購入本

    大好き、川上弘美さんのエッセイ。

    冬の台所で蛍光灯は、そろそろ いきますね
    ときれてゆく。
    春はなんでもありありで、15センチの河童にだって出逢えるのだ。
    デートなのにサシ飲みも、また良き。
    息子とラーメン、本屋もいいじゃないですか。

    なかでも、

    おそるべき君らの乳房夏来る
    西東三鬼 さいとうさんき

    のエッセイはぐぅっときた。
    戦後、光の強いこの季節。
    いつの世も、女の強さは、いや、人の強さは健在なのだ。私も骨太に過ごしてゆきたいな〜なんて、ぼんやり考えた。

  • 仕事用のカバンに入れておいて、通勤電車内で一話二話、乗り換えがあればまた一話二話…
    多少の疲れであれば、穏やかでユーモアに溢れる川上弘美さんの文体で癒されます。
    次の出勤用には東京日記かな。

  • 何度目か分からない再読。

    風邪をひくと読みたくなる本、というのが何冊かあり川上弘美先生のエッセイもそのうちの1つ。
    先生の文章は差し込まれるひらがなの間隔がちょうどよくて、やわらかくて消化に良い、うどんや雑炊のような味わいがある…と勝手に感じている。

    台所でふと感じる道具達の息遣い、松茸の焼き方の正解とは?老婆の背負うリュックにしまわれるペキニーズ犬、神出鬼没・自由気ままな友人の話…。なんとなく「あ、この子は某作の某登場人物のモデルかも」等と思ったり。
    作品は読んでもエッセイは読まない(またはその逆)人も居るだろうが、川上弘美先生のエッセイは作品と共通した空気が漂っていて心地よい

  • 言わずもがな、好き。ゆるむみかん。ゆすらうめ。熱の日のもものかんづめ。

  • 何も教訓めいたこととかは言わない、ただ日々の出来事を書いたエッセイなので心地よい。

    2022-19

  • 川上さんのエッセイ第2弾(?)。
    相変わらずほわんとしたタッチで書かれているので
    読んでいてほっこりしてしまいます。
    また読みたい一冊ですね。

  • 川上弘美さんのエッセイ。弘美さんのエッセイて、昔は少し苦手だったんだけど、
    これはとってもいいですね。いいなーすきだなー。

    小学生の息子さんとの会話は、「神様」にでてくるえびおくんみたいで可愛らしかったし、中年男性とのデートは「センセイの鞄」の博物館デートみたいでした。

    ただ、毎日同じ服っていうのは、すこし引きました(笑)。

  • この著者の本は初めて読みました。タイトルに、それこそ、なんとなく惹かれて。
    日常のささやかなことが、愉快に、美しく書かれていて、心潤いました。

  • 著者の柔らかな感性に触れるたびにホッとした心持ちになります。
    「文は人なり」といいますけれど、本当にそうだなと。

著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川上弘美の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×