セックスボランティア (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101297514

感想・レビュー・書評

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  • 昔、セックスボランティアというものがあると聞いてからずっと興味は持っていた。
    技術や医療が進歩したり、バリアフリー法が多くの施設で義務付けられていたり等、昔よりも圧倒的に障がい者の人が生きやすい世の中になっているはず。
    しかし、障がい者の方の性の話になると途端にタブーな話のように感じてしまう。

    実際私も、読んでいく中で
    「障がいを持っていて、周りに助けられながら生きる事が出来ているのにそれでもなお、必要最低限以上の欲望を満たそうとするのか」と思ってしまい、我に返った。
    結局、自分も障がい者の差別を行ってしまっている。

    恐らく一般的にも「障がいへの理解があり、差別はしない」と思っている人が障がい者のセックスになると「性欲まで満たしたいと考えるなんて贅沢だ」と反射的に考えてしまうはず。

  • 「性」とは生きる根本。
    それはたとえ障害者であっても同じこと。

    脳性麻痺の男性を風俗店に連れていく介助者。
    障害者割引のある出張ホストクラブの利用者と経営者。
    障害者専門のデリヘルで働く聴覚障害のある女の子。
    知的障害者にセックスを教える講師。
    体の動かない障害者にセックスボランティアを行なう主婦。

    性の介助について、オランダまでも出向き、その最前線で取材を重ねる。
    どう考え、どう捉え、どう係るのか?
    タブーに大胆に切り込み、手探りしつつも問いかけてくる、真摯なルポルタージュ。

  • 面白い内容だが、最終的に、障害者の性ではなく、人間一般の性に逃げてしまっているのが残念だ。結局つまらない結論にいきついてしまっている。ただのインタビューだけじゃ浅い。セックスで興味をひくだけのレポート。

  • 国内外の身体、精神障害者に対する性の支援について、国内や先進的であるとされるオランダなどの事例を紹介されたもの。提供者側の障害者への支援という行為、性に関する行為、と言う両面の葛藤と、性に対する支援ということへの、障害者側の葛藤との錯綜が現れていた。自然と、どちらかに立ち、それを当然としている自身の価値観とも向き合える作品だった。

  • 著者の立場とか動機とかが最後の最後まで出てこないのに、著者の知りたいという切実感が半端なく、その気持ちの熱量によってぐいぐい読み進めてしまう。テーマそのものがセンセーショナルで、興味はあるがなかなかうかがい知れないことを知ることが出来、知的好奇心も満たせた。若くて美しい女性が著者だけに、この人もセックスワーカーなのかと勘違いして買った男性は多そうだ。僕はその点は誤解はなかったが、男性とのセックスを前にしたわくわく感を主語無しに書いてある部分はちょっと反則(笑)。
    それはともかくとして、著者としての一線がちゃんと引かれているからこそ、下品にならず、知的読み物として、作品のバランスが保たれている。
    障害と性ということに限らず、男と女の付き合い方、幸せのあり方、快楽と恋愛の違い、介護する側とされる側、日本と外国での性についての考え方の違い、老いと介護、行政の支援のあり方…など、さまざまなテーマが自然と内包されており、その点においてもこの本は奥が深い。
    そして本の最後の最後、彼女の切実に行動していく動機の一端がエピソードによってちらっとだが開示される。その開示のされ方がさりげなく、それでいて効果的。ぐだぐだ書かないところが、ラストとして相応しい。

    テーマの広がり、作者の切実感、証言によって浮かび上がっていく知らなかった事実、問題提議、シーンの切り取り方。どの点においても、素晴らしい。噂に違わず、名作だと思った。

    と同時に書き手として対象とどう距離を置くのかという点でとても参考になった。だけどこの本以後、彼女はなぜ2冊しか本を出せてないんだろう。その点は気になる。

  • 正直なところ、本のタイトルに対して助平な気持ちがあったから読んだ。50歳目前にして性欲は食欲や睡眠欲とあまり変わらない。10代や20代の頃は歳をとれば自然に衰退するものだと思っていたけど、今のところその様子はない。本能だから逆らえないとも思う。身体障害者と健常者の間でもそこに違いはないみたいだ。ただ、人の介助ないしでできるか否かは大きい。他人にオープンにすることではないからだ。ホントは誰もがしていることだ。どんな美男子や美少女だって。身体障害者と健常者にそこに違いはない。愛がなくてもしたいものはしたい。でも、「したいって」他人に言わないとできない障害がある人はむしろ潔い。

  • 「障害者の性」についてのルポタージュ。
    かなりインパクトのあるタイトルということもあり、一時話題になっていた覚えがありました。

    正直動揺しつつ、色々と考えさせられました。
    そもそも私は性的関係は結婚した男女の間でのみ許されるものという考えが前提にあるのですが、
    このような性に対する心の奥底からの叫びと、一体どのように向き合ったらいいのだろうと思いました。
    それはまた、単なる欲求以上の、心の奥底からの満たしを求める叫びのようにも思えました。
    これは、本質的に方法論の問題ではないんだろうな。
    答えは出ていませんが、このような悩みを持つ人に福音はどのように届くだろう。イエス様だったらどうするだろうかと、思わずにはいられませんでした。

  • 現在学生で介護を行った経験から読み始めた。
    性の介護について客観的に書かれている。
    知らない事が多く驚きの連続だった。最後のシーンは感動的だった。今後に生かしたい。

  •  何も知らない身からすると、たいへん重いテーマです。読み終えていくぶんそれはやわらぎましたが、文章だからということもあるのでしょう。実際、目の当たりにすると、印象はよりなまなましくなるのえはと感じ入ります。

  • 障害者の性、と一口にいってもそれぞれの望む関係性があるし、それらに対応した受け皿があるのが理想的だけど、なんか要求する以前に触れることすらタブーな雰囲気があって難しい。

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著者プロフィール

河合 香織(かわい・かおり):1974年生まれ。ノンフィクション作家。2004年、障害者の性と愛の問題を取り上げた『セックスボランティア』が話題を呼ぶ。09年、『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で小学館ノンフィクション大賞、19年に『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』で大宅壮一賞および新潮ドキュメント賞をW受賞。ほか著書に『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』『帰りたくない 少女沖縄連れ去り事件』(『誘拐逃避行――少女沖縄「連れ去り」事件』改題)、『絶望に効くブックカフェ』がある。

「2023年 『母は死ねない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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