- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480815705
作品紹介・あらすじ
育てたい。愛したい。それだけの願いを叶えることが、こんなにも難しい――。一人として同じではない女性たちと著者自身の切なる声をたしかに聴き取る。
感想・レビュー・書評
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母は死ねない。とすべての母が思うのだろうか…。
生まれた我が子が、難病を抱えていたらこの子を育てるのは自分しかいないと思うかもしれない。
しかし、当たり前の子育てができないことに、普通ではないことに苦しみ続けてきた遺伝子難病の子をもつ母は、自死を選んだ。母として劣っていたとは思えないのにだ。必死に生きて生き抜いてきた。
それでも終わりを選ばざるを得なかったことを他人が否定はできない。
山梨での行方不明の事件や池田小の殺傷事件などの被害者の母の声もあり、ノンフィクションだからこそ壮絶な苦悩を知ることになる。
誰もが子育てに自信はないのではないだろうかと思うし、完璧な母などいない。
さまざまなかたちがあり、それぞれが別個の人格である。
不完全なままでいいのかもしれない。
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<書評>『母は死ねない』河合香織 著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/...<書評>『母は死ねない』河合香織 著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/246998?rct=shohyo2023/05/12
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雑誌の紹介文で読みたいと思ったけれど、同時に、重そうだから読みたくないなとも思った。
この本に出てくる母たちと同じ経験をしたわけではないし、共感するわけでもない。でもそれぞれの母たちに、私を見るような気がするのは何故だったのか。
私は母であり、娘であり、ひとりの不完全な女だ。そのことを読後意識し、やっぱりそうだよね、とホッとしたような変な気分。
毎日しんどいなぁと思うし、キャパオーバーだなぁと思うけど、結局「私」を生きていくしかないなぁと思う。 -
"私自身は、きっとこれからも間違い続け、不完全な母であり続けるだろう。また知らず知らずに、子どもを傷つけてしまうに違いない。それでも「あなたのために」という言葉だけは言わないようにしたいと誓った。"(p.146)
"それぞれが抱える絶望を、家族だからといって聞かなくていいし、語らなくていい。家族が向き合って、絶対的な愛情を持つべきだという規範にとらわれたとたん、苦しくなる。家族はそっぽを向いていても、ただそこにいるだけでいい。痛みを見つめ合って話し合わなくてもいい。同じ山を見て、同じ歌をくちずさむことができればいいのだ。"(p.210) -
ノンフィクション作家である河合さんが、“母”をテーマに自らの経験も織り込みながら、様々な形の家族を描いた圧巻の書。
母=親なのは当たり前だが、その関係は一筋縄ではいかない(未婚の母、養子、同性愛者など)。当然、母=娘でもあるわけで、自分自身が親とうまくいかなかった場合はどうなのか。子供も千差万別で、なんらかの障碍をもっていたりグレてしまったり……。
それでも“母は死ねない”のだ。
本書を読むと、“異次元の少子化対策”なんて真剣に言っているのかと疑ってしまう。金を渡せば自動的に子供は殖えるのかい?
※本書は刊行前にNetGalleyにて読了したが、「この作品は削除されました」と表示されてしまう。
「この作品は現在ダウンロードしたりレビューを書いたりできません。出版社が作品の準備を完了していないか、作品自体が取り下げられたものと思われます。」とのことなので、レビューは保留していた。
2ヶ月後に刊行されたが、遅延の理由や、加筆・訂正があったかは不明だ。あくまでも読了時(1月25日)のレビューであることをお断りしておく。 -
子どもを持つ決意、持たない決意。そして、子どもを産んだ後の親としての喜び、哀しみ、悩み、後悔…
親となった今では、子どもに関する悲しいニュースを聞くのが辛く、涙が出てしまうのだが、この本はそのニュースの裏にある当事者の親の気持ちをリアルに綴っている。実際に起きた事件についての取材や、筆者の周りの人との会話に基づいて書かれているので、まるで自分の目の前でその人が語っているかのような臨場感がある。
子どもを育てる上で、「親は死ねない」というのは、本当にその一言に尽きる。法律上や経済面の責任だけでなく、愛情の面でも、「私はこの子が死ぬまで死ねないし、この子が私より先に死ぬことは決してあってはいけない」と常に(無意識に)気を張り詰めていたことを認識させられた。
そして、子どもを持たないという選択をした人の気持ちも、同時にわかる、と思ってしまう。子どもを育てることは、それほどに責任の重い仕事なのだ。
でも、母親はかくあるべき、という決めつけから、自分を解放することも、子どもと自分を幸せにするために必要なのだと思う。母も一人の人間で、決して強くはない。そして、子どもは母とは違う人間で、思い通りに動かすことは不可能だということ。それを大事にして、一人の人間同士として向き合えた時に、お互いに信頼し合える関係になれるのだと思う。 -
何人もの人生を垣間見た感じがしました。読後感は、重苦しく感じてどっと疲れましたが、知ることをできて良かったです。自身の人生の在り方を問われた気がしました。
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壮絶な体験をした母達の記録だった。家族のあり方を真剣に考えていこうとする彼女達にエールを送りたい。
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「出産も、子育ても、
自分の思い通りにいかない日々を積み重ねていく。
その時間から、人生も人も思い通りにはできない
というのを学んだ」
この言葉は、最愛のわが子が失踪し、
すべての力をかけて子を探した母が、
子の死を受け入れた時に語られた言葉。
圧倒されるというか、刺さるというか、
語彙力無さすぎて表現し難いのだけれど
残しておきたい言葉が他にもたくさんあった。
その一部↓
誰も好き好んで被害者になったわけではない。
不条理な暴力にあっただけだ。
その苦しみの上に、さらにスティグマを抱えて
生きていかなければならないのだろうか。
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私自身は、きっとこれからも間違い続け、
不完全な母であり続けるだろう。
また知らず知らずに、
子供を傷つけてしまうに違いない。
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人生は失うことの連続だった。
これからも大切なものを失っていくのだろう。
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いつかこの生を終える時が来るだろう。
その日はゆっくりと来るかもしれないし、
突然来るかもしれない。
それでも人間はこの世に生を受けた時点で、
終わりが必ずくる。
生まれてすぐなくなる子もいれば、
百二十歳まで生きる人もいるし、
悲しい終わり方もある。
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「花畑の花を踏みにじる権利なんて誰にもありません」
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その日の情景はいまだに忘れられない。
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子どもは母と一体化した相手ではなく、
自分の思い通りにならない他者である。
...
母は、人は、弱くても、不完全でもいい
この本は、そう教えてくれた。