天国はまだ遠く (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101297712

感想・レビュー・書評

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  • 自殺を考えるほど辛い時、自然の美しさだったり人の温かさだったり、命の尊さに触れたりする事で、また生きる力をもらえる事がある。辛い時こそ読みたい本。

  • 田村さんが「あんた、自分のこと繊細やとか、気が弱いとか言うてるけど、えらい率直やし、適当にわがままやし、ほんま気楽な人やで」と言ったところにとても共感した。生きづらさの中で自分を見失っているだけで、何もない田舎でのびのびと過ごしていく中で本来の自分に戻っていく、そんなお話。そういう人はきっと今の世の中多いんだろうなぁと。立ち止まってゆっくりすれば気づくことができるのに都会でせかせか生きていると気づけない。この主人公は気づいてやり直すことができてよかった、同じようにこの本を読んで、やり直せる人がいたらいいなぁと思った。

  • 仕事している間はなかなか難しいけれど…仕事をしていて日常に不満を抱えながら働いている状態に、3.4日の旅行だけでなくて、田舎に1ヶ月ほど長期滞在してみたい。日常で当たり前に生活していたことにも新しい観点からの発見があるんだろうな、、、

  • 自殺は失敗だったんだ。死ねなかったのだ。

    23歳OL千鶴、人間関係も仕事もうまくいかない、心身共に疲れ果てたどり着いた「民宿たむら」

    キレイな空気、海、水、土の香りに囲まれる21日間の滞在が千鶴の心と体を癒す。
    というより、自分の本当の居場所、想いに気付きく。
    千鶴は、この地を守る、自分のルールで生きる、この地に惚れ込むものでない。
    絵にした風景には、鮮やかな色はなく、見たままが、本物の想いが描かれる。
    「天国」とは、逃げてきたこの地でないのだ。

    #読書記録
    #読書好きな人と繋がりたい
    #読書
    #読書倶楽部
    #瀬尾まいこ
    #瀬尾まいこ作品

  • オーソドックスな「再生の物語」なのだけれど、その過程が、なんとも麗しい。民宿の田村さんは、最後まで千鶴の名を呼ばず、そもそも尋ねもしない。千鶴の本質を素直に受け止め、そして送り出す。「山のように気高く堂々と」「海のように深く広い心で」まさしく自然そのもののような姿が、この物語を支えていたのですね。作家さんとの相性、というのもあるのかもしれないけど、瀬尾まいこさんは三作目にして、何だか虜になってしまいそうな。心の機微の描き方がとても上手です。

  • 死を決意して選んだ地で、再び歩き出す力を得る千鶴。たまたま泊まった民宿のオーナー(と呼ぶほどの宿でもオーナーでもないけれど)・田村がとても自然体で魅力的。P55 の田村の勘違いには声を出して笑ってしまった。明るく物語は進むが、最後千鶴が3週間滞在したこの地を去る場面では涙涙…瀬尾さんの作品2作目だけれど、温かさでいっぱいの話を書く人だなと思う。

  • いま本気で死のうと思ってる人間が読む本じゃない。

    万人受けの「良さ」といった感じで優等生的な印象を受けた。75点くらいをコンスタントにとれる作家さんなのかな〜と。
    それもまた素晴らしいことではある。

    初っ端の自殺未遂シーンからツッコミどころ満載。
    そもそもその程度の薬で死のうとするなんて愚か。まあそれは主人公の浅はかさを表してるのだと受け取ったが、それにしても単なる過眠で済みました!はちょっとナメすぎだろう。
    ODしたなら嘔吐描写くらい入れてくれよ。
    他の場面でやたら吐いてるくせにODしたあと吐かせないでどうすんだよ!一番の吐きどころだろ!
    そこで吐かなきゃ人間に生まれた甲斐がねえだろ!
    それに自殺未遂までした主人公は精神科や心療内科へのアクセスが必要そうなのになぜかイマジナリー田舎でスローライフを送るだけでいつのまにか改善しているという。
    まあ鬱的な感情の原因の多くが職場であって、彼女自身というキャラクターの生まれ育ちに特に深刻な問題はないようなので、まあそういうものなのだろう。
    しかし、死にたさへの本気レベルを見誤って読むと私のようにむくれることになる。
    主人公がどうしても浅く見えてしまう。
    絵を描くのが好きで努力した過去があるらしいのに田村さんに爆笑される程度の画力しかないのは違和感。この辺りは作者の責任だろう。
    この世界には確かに才能なんてものが存在するのかもしれないが、努力だってそうそうバカにできたものじゃない。こと画業に関してはね。そこのリアリティがどうもあやふやで受け入れがたい。

    まあ文学的才能に恵まれた作家先生には泥臭い絵描きのことなんてわかりはしないのだろうが。

    全体を通して何が言いたいかって、どうも設定だけがそこにある感じがする。リアリティがあまりにもなさすぎるし、掘り下げがなくてフワッとしてる。設定のツメが甘くて人間として存在してない感じがしてしまうので共感できない。主人公のことがわからないまま終わる。真実味があったのは彼女の吐き癖だけだ。おろろろろ。

    あと前述したイマジナリー田舎にも思わず笑ってしまう。好きねえ、スローライフ。

    田舎の人たちが過剰に良い人に書かれてないのは良かったが「お客さん」である主人公には見えていないだけで、この人たちも水面下ではずっと閉鎖社会の閉じた人間関係をやってるのかなと思うとゾッとする。

    主人公が飲み会で美味しく食べた食事はきっと女の人だけが厨房に立って作ったものだし、漁師以外の生き方が自分にないことに絶望した若い少年がきっとどこかの家にいたかもしれない。
    飲み会すら店でやらないなんて、どれほどがんじがらめなんだろう。
    後片付けは誰がやるんだろう。
    いつから続いてる飲み会なんだろう。
    やめようって誰も言わないのかな。本当にそこにいる人全員が楽しくてたまらない飲み会なのかな。なら、それはいいけど。
    でもなんだか、怖いなあ。
    選択の余地がないまま「今」をひたすら暮らし続けてるみたいで。
    この集落で生まれて死ぬ人もいるのだろう。そんなことを考えるとなんともいえない気分になる。

    そして、それらの構造に対して無邪気でいられる主人公はやっぱり異邦人なんだろう。

    都会から来た主人公が田舎の上澄だけ眺めて、集落以外の生き方を知らない人々を「自然と共に生きている」だなんて形容してる様子がどうもグロテスクだ。
    結局のところ主人公はどこまでもお客さんでしかないのだ。最後に主人公は民宿を旅立つから、そこに作者が自覚的だったと理解できて大変に助かったが。
    結局、人間は生まれたところでしか生きられないから。主人公はずっとあの田舎で「異分子」でいいと思う。綺麗なところだけ眺めてればいいんだよ。
    「民宿のお客さん」として滞在することそれ自体も、主人公があくまで異質な存在であることを暗示しているように思える。

    それで主人公が休養をとって落ち着いて、自分がずっとここにいるべきでないと悟り、帰っていく。大きな変化はないけど、少しシンプルに、肩の力が抜けた状態で。

    …………うん、理解できる。お手本のように綺麗に流れ着く結末だ。
    しかし、あまりにも飲み込みやすすぎて、私のようなひねくれ者には逆に拒否反応が起きる。

    なんだかなぁ。なんだか納得できない。
    希死念慮は商業的に演出される「癒し」の踏み台ではないんだが。

    民宿行って?美味い飯食って?散歩して?綺麗な風景見て?ちょっとマシな私になれたねーって?

    そんな覚悟で自殺の描写をいれていいの?
    自殺はそんな甘いものじゃねえんだよ!!おい!!世間の人間がどれだけ思い詰めて生きてると思ってんだよ!!おい!!!

    甘いんだよ。瀬尾まいこ先生。
    冒頭、主人公の置かれている状況が「死にたい」である必要はあった?
    なんか、書かれてる死が軽いよ。希死念慮も軽いよ。
    回復がどれだけ大変だかわかってんのかよ!!
    そんなハンパに扱われちゃ困るんだ!!
    バカにすんな!!

    まあ、この感想は私の被害妄想とも言えるね。
    こういう本に癒されて頑張れる人もいるのだから。私のための本じゃなかったってだけ。
    でもここでは素直な感想を言わずにはいられなかった。それだけ。

    まとめます。

    わかりやすい。そのぶん浅い。
    きれいな物語。そのぶん見えない部分が怖い。
    大抵の人は共感しやすい。そのぶん私は共感できない。
    そして何より、いまマジで死にたい人間の読む本じゃない。本当に。

    まあでも、ちょっと気分転換したいなあという人には大いにおすすめ。短いし文章も平易だし、田舎の描写は素朴で好感が持てる。個人的には夜中に道路に寝っ転がって歌うシーンが好き。
    田村さんへのキャラ萌えだけを語るのなら最高としか言えない。よく笑うのも訛ってるのも、彼の過去も、都会との別離と田舎を守る覚悟も主人公との隔絶を感じさせる描写として簡潔で良い。メロつく。

    以上。田村さんは可愛い。

  • めちゃくちゃ読みやすかった
    主人公の性格にクスッと笑えるところがあったりして
    本が読めない期間におすすめだと思う
    読み終わったあとに達成感とか続きが気になるとかは無いけど
    何となくスッキリしていい話だったなぁと
    思い返せる本

  • 仕事に、生活に疲れ、遠くの人里離れた民宿で自殺を図ろうとした千鶴。しかし自殺は失敗して、民宿の主人田村さんの大雑把でおおらかな人柄に触れて自分を取り戻していく。

    仕事に疲れて思い悩んだり、いざ自殺するとなった時に誰に連絡しておこうとか考えているシーンに共感。今までの生活と全く違う田舎の暮らし、人間に触れて、自分のことを改めて知り、自分の生き方をどうするか考えるきっかけになっている。自殺失敗後は千鶴の自分探しの日々という感じ。
    たまに、全く価値観も違う人や生活の中に身を置いたり、普段とは違う時間の使い方をするのも良いなあ。
    時折出てくる、食材や、食事の表現が素敵で、思わず食欲が湧いてしまう。

    ★3.5

  • 瀬尾まいこさんの本は初めてでしたが、すごく心が軽くなるお話しでした。細かい描写と会話が多く想像力を掻き立てる本で、少し展開が読めてしまうところもあるが、ページが短いことでダレることはなく、読みやすく感じました。ささっと読めてほっこりしたいときにいい小説です。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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