出署せず (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 432
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101301532

作品紹介・あらすじ

柴崎令司警部は、今回も綾瀬署を離れることができなかった。その一方で、同世代のキャリア・坂元真紀が署長に着任。現場経験に乏しいコンビが誕生してしまった。職務にまつわる署内の不祥事、保護司による長男殺しの闇。そして、女性店員失踪事案の再捜査が、幾つもの運命を揺さぶりはじめる――。ミステリ×人間ドラマの興奮。日本推理作家協会賞受賞作を継ぐ、シリーズ第二弾。

感想・レビュー・書評

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  • 柴崎警部シリーズ第二弾。
    5つの短編集。
    警務でありながら刑事事件に深く関わらざるを得ない。
    署内の運営を円滑にするべく動いたことが事件の解決に繋がる。
    撃てない警官も面白かったが、こちらもとても面白かったです。
    柴崎警部は所轄から本部へ戻ることはあるのでしょうか?それも楽しみ。

  • 警視庁綾瀬署警務課課長代理の柴崎令司シリーズの2作目。今回も連作短編集の体をなしている。冒頭に新キャラクターのキャリアの女性署長が登場。現場を知らない署長と捜査部門との軋轢の間にたち、刑事では無いのに、あれよあれよといつの間にか、事件の捜査に関わることになる柴崎。ヒーローの活躍劇のような派手さは無い。しかしシリーズを通して警察組織の複雑な人間模様が淡々とだか味わい深く描かれる。そして事件の意外性からのミステリーの面白さもある。
    本作の表題作でラストに掲載されている『出署せず』は、中編というか短めの長編のボリュームで、柴崎か綾瀬署の要となるストーリー。

  • 2021.4.12-393

  • いまいち

  • これより先に「撃てない警官」があったが、しまったと思っていたら、解説が丁寧で読んだ気になれた。
    そしてあれやこれやで、柴崎が左遷されたのが綾瀬署の警務課、課長代理だった。
    間の悪いことが重なって、現場経験の少ない女性キャリアが署長になった。下で働く柴崎の署員との板ばさみ状態と、ついつい現場に足を踏み入れてしまう性格が、数多い警察小説の中でも物語を面白くしている。

    折れた刃
    職務質問をしてカッターナイフの携帯を見つけた。刃が6センチ未満なら軽犯罪法、6センチ以上は銃刀法違反になる、担当した警官二人は刃を折って短くしたがそれがリークされ、関わった巡査と警部補の取調べを開始した。難航したそれが終わったと告げると、署長はあっさり明るい声で「良かった」といった。

    逃亡者
    ひき逃げがあった、最近の車は塗料などの進歩で手がかりが残っていなかった。
    被疑車両が見つかったが所有者は貸し出していたものだという。しかし借りた本人は行方が知れなかった。
    犯人なのか、冤罪なのか。
    柴崎が活躍するちょっといい話。

    息子殺し
    課長代理さんのレビューでこれが読みたかった。
    保護司として人望もあり、世間に認められている人格者がなぜ息子を殴打して殺したか。
    他人の子を更正させることに心を砕いてきたが、自分の息子にはどうだっただろうか、自問しながら父親は罪を認めている。酔った息子の乱暴を止めるために犯した罪で、正当防衛は認められるのか。状況は確かに父親のいうとおりなのか。


    夜の王
    事件が起きると、上司も飛び越えて初動捜査の手配をする、その指揮の巧みさで城田は「夜の王」と呼ばれていた。
    9年前の事件もなんなく解決したが、新たに発生した窃盗事件で逮捕した犯人のタバコの吸殻が、9年前の4本のうちの一本のDNAと一致した。
    どういうことなのか。そのときの捜査官、城田が呼ばれた。

    出署せず
    23歳の矢口昌美が失踪した。失踪事件として片付けていたが、5年後転勤先から戻った父親が捜索ビラを撒きはじめた。警察としても放っておく訳にはいかなくなった。当時、昌美が付き合っていた人たちから調べ始めると、複雑な人間関係が分かってきた。
    昌美を可愛がっていたという南部は、今では周りの塀を高くして家に引きこもり、住居を要塞状態にして世間との交わりを絶っていた。中はごみ屋敷だというネットの写真も公開され、ついでに庭にごみを捨てる者も出る始末。係累のない南部は遺産相続人の甥、古山が何度訪れても門は閉ざされたままだった。
    だが、可愛がっていた昌美に相続させるという遺言を書いたという噂があった。
    古山は?付き合ったいたと言う横江は?昌美は無事でいるのか?
    この最後の中篇は面白く纏まっている。

    特に新味はないが、読みやすい。
    署内の人たちの関係も、よくある軋轢や意志の疎通や、人事異時期の思惑なども良くわかる。
    しかし、警察物というジャンルでは読者も手ごわくなっている。
    キャリアの美人署長、柴崎の人柄や彼の家庭の様子などもあり、無難な出来だった。

  • シリーズ第2弾,読み応えある5編の連作短編集だ。警視庁の中枢から所轄の警務課長代理に左遷されたエリート柴崎が,キャリアの若い女性警察署長と所轄の刑事の間で板挟みに。中間管理職の悲哀,花形部署への返り咲きを狙う野心,真相を追求する警察官としての良心に揺れながら事件を解決する。一番好きなのは5年前の失踪事件を題材にした『出署せず』。

  • 地味な事件の裏に人間の矮小さや小さな正義が潜んでいるのが面白かった第1作、二作目はあまりに地味過ぎるきらいがある。
    保身と出世しか考えていないのが魅力だった主人公が警官とは何かみたいなお利口さん的なことをいうのも一貫性がなくて違和感。もっと利己的な動機で動く人というのを徹底した方が魅力が出ると思うんだけど。
    あと謎のモテは意味わからんので不要。著者の女性経験の乏しさがうかがえる。妻子ある中年がそんな風に唐突にモテることはないという現実を見て知ってほしい。
    とはいえつまらないわけではなく地味に地味に読める。

  • 柴崎令司警部は、今回も綾瀬署を離れることができなかった。その一方で、同世代のキャリア・坂元真紀が署長に着任。現場経験に乏しいコンビが誕生してしまった。職務にまつわる署内の不祥事、保護司による長男殺しの闇。そして、女性店員失踪事案の再捜査が、幾つもの運命を揺さぶりはじめるー。

  • 評価は4.

    内容(BOOKデーターベース)
    柴崎令司警部は、今回も綾瀬署を離れることができなかった。その一方で、同世代のキャリア・坂元真紀が署長に着任。現場経験に乏しいコンビが誕生してしまった。職務にまつわる署内の不祥事、保護司による長男殺しの闇。そして、女性店員失踪事案の再捜査が、幾つもの運命を揺さぶりはじめる―。ミステリ×人間ドラマの興奮。日本推理作家協会賞受賞の名手が描く、警察小説集。

    最後はどれもへぇ~と思うくらいのどんでん返しがある。キャリアで女性の署長となると大抵はきびきび動いて隙もなく・・・だがここに出てくる女性キャリアはなんとも中途半端。出来るわけでも無くでも、自我だけは強そうだし・・・余り特徴が無く魅力が今一、そのためか読了まで時間がかかってしまった・・・。

  • シリーズ2冊目。前作では、部下の責任を1人で負わされ、警視庁の花形部署から所轄の警務課に左遷された恨み節を炸裂させていた柴崎だが、今作では新しく赴任してきた女性署長の元、粛々と仕事をこなす日々。前作の緊張感はやや抜けたものの、警察官の不正を暴きながら事件を解決に導く、刑事顔負けの観察眼の鋭さが光っていて全体の印象は地味ながらも、とても面白かった。自身の野望はぐっとこらえ、警務課の仕事に追われる上、署長の無茶振りに忙殺される柴崎の警察官としての姿勢に次作も期待大です!

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著者プロフィール

1956年、静岡県生まれ。明治大学卒。‘94年『死が舞い降りた』で日本推理サスペンス大賞優秀賞を受賞しデビュー。2000年『鬼子母神』でホラーサスペンス大賞特別賞、’10年には「随監」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。緻密な取材が生む警察小説やサスペンス小説で多くのファンを魅了する。本書は朝鮮戦争で計画された原爆投下の機密作戦を巡る謀略を描く渾身の作。著書に『限界捜査』『ソウル行最終便』『彷徨捜査』『伏流捜査』(祥伝社文庫)『撃てない警官』『夜の署長』等。

「2023年 『ブラックバード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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