- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101302713
感想・レビュー・書評
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上橋ワールドにどっぷりハマって読んだ。野火の真っ直ぐな思いが切なく、終盤では泣きそうになった。個人的な恨みというのは見境がないが、諦められない事情があることを真っ直ぐに伝えてくる。その中でどう行動するか、国を治める人の難しさ。上橋さんの物語は政治と人間の裏側に踏み込んで描いているからリアルだ。そして今回も食べ物が美味しそう!
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精霊の守り人シリーズなど和製ファンタジーで有名な上橋菜穂子さんの小説。1巻完結なのに、とても読み応えがあります。
恋愛小説ではないけれど、愛がひとつのテーマになっていて、命をかけても大切な人を守りたいという主人公や妖狐のひたむきな姿に心を打たれました。エンディングは賛否両論あるかもしれないけれど、わたしはこれで良かったかなぁ。
そして、文章を読むだけで昔の日本の美しい風景を思い浮かべることができるのは、やはり上橋菜穂子さんのすごいところ!
梅の木が広がる里山、子ぎつねが駆ける野原、昔ながらのお屋敷…活き活きとした情景が目に浮かびました。
上橋菜穂子さんの本は何巻にもおよぶ長編ファンタジーが多いので、まだ上橋さんの本を読んだことがないという人は、まずは今作から読んでみるのもおすすめ♪ -
物語の終わりに味わえる余韻がいい
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憎しみの連鎖は誰かが復讐を諦めなければ止まらない。
春望がこれからの子たちのことを考え、若狭野を返したところが印象深い。
すれ違いつつも、互いを思いやる小夜、野火、小春丸の関係も良い。そして玉緒の気の利かせよう、立ち回りの上手さ、グッジョブ -
ファンタジーはあまり読まないのですが、この作品は、日本の懐かしい風景のようで、自然に引き込まれて一気読みでした。
人の心が聞こえる小夜。この世と神の世の〈あわい〉に棲む霊狐の野火。
呪者と守護者の戦いの中で、どうなっていくのかハラハラしながら読み進めました。
恨みからは憎しみと悲しみしか生まれない。
どこかで断ち切って、前を向いて光のさす方へ一歩踏み出す…その大切さが胸にしみました。
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夜名の里のはずれに、産婆の綾野ばあさんと二人っきりで暮らしている少女、小夜(さよ)。
夜名ノ森の森陰屋敷に閉じ込められている少年、小春丸。
そして、呪者により使い魔にされた霊孤の野火(のび)。
ある夕、小夜は、すすき野で、犬に追われている一匹の手負いの子狐を救う。
それはこの物語の始まりだった――。
あんまりうまく説明できないと思うので、感情のままに感想を。
とにかく、萌えの一言に尽きる!!
萌えーーーー!!!!!!!笑
ちょっとネタバレしますが(ニュアンスのみで)、私はてっきり小夜と小春丸の物語だと思っていたわけですよ。
そりゃあ最初から野火は出てきますが、なんならタイトルも『狐笛のかなた』ですし、私が読んだ理論社のハードカバーの表紙のイラストも野火ですけど、野火は最初の子狐の印象が強すぎて、というかそもそも狐ですので、小夜と小春丸の物語を彩るアクセントになるんだろうなぁと勝手に思っていました。小夜と小春丸の悲恋を見守る中で犠牲になるのかなー?なんて予想して読み進めていました。
途中から、あれ?これ違うなと思い始め、小春丸そんなに出てこないですし、小夜を取り巻く人間関係を予測しながら読み進め、それでもかなり後半まで、最後にああいう展開になるとは思いもしなかったのです。
そして、小夜の感情がはっきりと描かれた場面で初めて、激しく萌えーーーーーー!!!!!となりました。
ええ、なりましたとも。
そして、野火の扱いにやっと合点がいくのでした。
思えば野火はかなりクールに描かれていますよね。
獣なりの(?)本能ベースの一途さや、霊孤であることで生じているのであろう諦観、そして本性である真っ直ぐでフラットな感覚など、好感を持てるところがたくさんあって、それらが絡まり合って、とても不思議で魅力的な存在になっているなぁと思いました。
物語を最後まで読み終えて振り返ると、物語の初めで、小夜と小春丸の逢瀬を木陰から野火がそっと眺めている姿など、切ない気持ちになります。
というわけで、「萌え」に関する記述が一番始めに来てしまったわけですが、そもそも上橋菜穂子さんの文章や人物描写や展開が好きすぎて、「やっぱり上橋さん、好きー!!!」と何度も思いながら読んだお話でした。
読書が苦手で普段あまり読まなかったりするのですが、このお話は読んでいる間中、読書の素晴らしさや心地よさ、魅力を感じられて、すこぶる幸福な時間でした。
相性なのだと思いますが、上橋さんの文章が好きなんだと思います。
夕風吹くすすき野、市場の雑踏、梅が枝屋敷。それぞれの場面で、風の匂いや建物の様子、空気を感じながら想像することができ、それを読書の醍醐味としてとても幸せに感じました。
物語は、〈聞き耳〉の才がある小夜の出自や能力を巡る小夜の物語と、小夜が住んでいる春名ノ国と、隣国の湯来ノ国の、若桜野という土地を巡る争いと怨恨から織りなす物語の二層になっています。
そういったところは、エリンと王獣の物語である『獣の奏者』ともよく似ていると思いましたし、最初に命を救うという出会いは『精霊の守り人』にも似ていますね。ただ一個人の物語で終わらずに、国の存亡に関わる物語に仕立ててしまうところに、上橋さんの物語の奥深さや力を感じます。
春名ノ国の領主・有路ノ春望や、有路ノ一族・湯来ノ一族の人々の所業に関しては色々思うところもありますが、私のこの物語の感想は、最終萌えに収束してしまったので、そこらへんはもういいかな。
憎しみでは何も救えない、ということでしょうか。
小夜の出生についてなど、もし自分が思春期にこのお話を読んでいたらとても引っかかりそう。もういい歳なので、そういうこともあるやろうなーとふわっと思うくらいですが。
人物としては、大朗や鈴も良いですが(途中からの大朗にはもどかしく思いますが)、私は玉緒がいいなぁと思いました。姐さん、素敵すぎん?妖狐の知り合いはいませんが、妖狐ってこんな感じなんやろうなぁというスパイスが詰まった設定になっていて素敵。
木縄坊の存在は面白く(主人公で一本書けそう)、久那の存在にはなんとも哀しくなりました。
上橋さんのお話には、そういったヒリヒリと焼け付く切なさのようなものが、いつも表現されているような気がします。それは実際に生きている中で、私たちが否応なく感じる不条理であり、そのようなものを織りなして歴史が出来ているのだろうとも思えます。
人間て哀しいなとも思えるし、そういった中で、小さな幸せを見つけ出して生きていく姿が描かれているようにも思います。
めちゃくちゃ良かったのでもう一回読み返してきちんと感想を書きたいと思ったのですが、その「もう一回読み返す」が結局出来なかったの悲しい。 -
1番好きな本。
もう何度読み返したかな。
呪い、憎悪、妬み。
そんな負の面がある一方で
淡くて、優しくて、美しくて。
とてもほのかに温かい。
違う、知らない世界へと。
一瞬の魔法で連れ去ってくれる一冊。
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初めての上橋菜穂子サン。
入門として狐笛のかなたを薦めてる人が多かったので、最初は絶対に本作からと決めてました。
結果、大正解!
上橋サンの和風ファンタジーに惹き込まれ、野火の思いがせつなくて、胸が何度も苦しくなったけど、とても読みやすくイッキ読みでした。
もっと悲しいラストを想像してたけど、このラストで良かった!
これから獣の奏者を読もうと思います。 -
優しい物語だったなぁー。
野火と小夜の関係、そして小春丸。
大切だからこそ憎み、利用し、守る。けれど大切だからこそ、捨てることも必要で。
わかっててもなかなかできないよね。