- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101307022
作品紹介・あらすじ
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛し合いながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る-。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
感想・レビュー・書評
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美しい。
静かに
決して穏やかではない内容の手紙のやり取りが
静かに続いていく。
暗い中に光はあった。
しかしどうも好きになれない男たち。
人の世 人の心は美しいものばかりではないと
分かっている。
でもここまで包み隠さず
それも美しい日本語で書かれると
感情の整理が追いつかなくなる。
それでも最後まで引き込まれた。
おもしろいおもしろくないじゃなく
ぶっ飛んでる本の記憶に仲間入り。
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過去が今を作り、今でさえ未来の何かを担っている
宇宙のカラクリ
人の業とは?を考えた。
どの主人公の顔も姿も街並みもリアルに感じ取ることができる一気読み系の作品だった。
哀しい出来事、進む時間、
自分の気持ちと向き合うにも時間が必要だなとも思わされた -
開成中高の国語教諭が中学生時に同校国語教諭から勧められた、という話から手に取ったもの。
あらすじを見て期待出来ないと思っていたが、やられた。昭和の小説らしい文章の美しさに。言葉選びのセンスと両者の奥ゆかしさが、か弱く心に響く。
宮本輝氏の舞台はいつも自分に身近なところであり、風景が重なっていく中で、錦繍の映える秋が決めてになる。
他方、昭和の作品にいつも感じる男達の身勝手さ。それを受け入れて振り回される健気な女性という偶像化が、男の身勝手さを倍増させる。この時代が今を作ってきた。未だに変われていないところも多々ある。大いなる反省が男達には必要だ。 -
素晴らしかった。有名な往復書簡の小説。
かつての夫と、蔵王のゴンドラの中で偶然再会をし、長文の手紙のやり取りが始まる。
10年前になぜ離婚しなければならなかったか?
納得しないまま別れることになったある事件。
その真相と、10年間の空白を手紙が埋めていく。
お互いに過去を見つめ直し、呼び起こし、伝え合う。辛いことも怒りも悔恨も。
そして「今」に至り、お互いに生きる理由と糧を見出していく。
蔵王のゴンドラからの錦繍と、締めくくりの錦繍が2人の背中を押している。
人の業とは何なのだろうか。
粋な遊び心?亜紀と靖明…秋。 -
究極の恋愛もの、というふれこみをどこかで見たので楽しみに読み始めたら前半は不穏な空気で、ちょっと思ってたのと違う?と思ったけれども…
亜紀は有馬と別れたくなかったのに。瀬尾由加子との関係はなんだったの?なぜ私の子どもは障害を持つ子なの?私は何も悪いことをしていないのに?ずっと理不尽さを燻らせていて、その気持ちを押し殺して、それでも清高を立派に育て上げようと努力していた時に有馬と再会してしまった。
瀬尾由加子との経緯を知り、憎んだ相手も苦悩していたことがわかった。有馬は確かに自分のことを愛していた、不倫はしたが彼も別れたくなかったのだ、ということもわかった。ようやく過去に折り合いをつけることができた。そして、それぞれの未来に向けてエールを送ることができた。あぁ、大人の恋愛だな、と思った。
時代的に仕方がないのかもしれないが、障害や人種差別的な表現があるところが気になった。
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一度別れた夫婦が偶然再会。
過去に起きたある事件を中心に書簡形式で話が進んでいく。
終始男に振り回されっぱなしな女たちには理解できずいらついたけど、古典的な男女の手紙のやり取りは可愛くはあった。 -
古典的な物語は強い。audible に最適な作品。太平洋戦争の指導者について祖母が語る場面は説得力があった。
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はじめて書簡体小説を読んだ。現代では随分と廃れてしまった手紙のやりとりは、生まれた時から携帯電話のある20代半ばの私にとって、まどろっこしくて、愉快で、粋だった。わたしは誰かのために綴った文章が好きだと改めて感じさせられた一冊でした。何ヶ月にもわたって何枚にも及ぶ想いを綴ることを、その返事をまた長い時間をかけて待つことを、もう私は二度と経験することができないんだろうなと思う。恋愛のあれやこれやに纏わる小説はいくつも読んできたけれど、一度結婚して、離別した男女が再会を果たすところからはじまる物語は新鮮だった。次々と明らかになっていくお互いの過去のこと、会わなかった日々のこと。それを徐々に追い越していく「現在」のこと。もう2度と会えなくなったとしても、互いの存在を思いあってまた別の道を歩んでいくことは彼等なりの愛だったと思う。