東電OL殺人事件 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101316338

感想・レビュー・書評

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  •  最近のDNA鑑定で,冤罪の疑いが濃厚になってきた事件というので,読んでみた。事件ルポってこんなものかな…。著者の推測がかなり入ってる。
     被害者について「ひょっとすると…子どもの頃、泥んこ遊びをしなかったのではなかろうか。というより高学歴の両親は、それを…許さなかったのではなかろうか。…心のどこかで、『汚れたい』という願望をずっともちつづけてきたのではなかったか。」とか。(p.404)
     不可解で,謎が多い事件と言うのは事実だから,ある程度しょうがないかもとは思うけど。でもこんな調子が多くて,ちょっと違和感。結局のところ,被害者はかなり病んでいたよう。適切な治療が必要だったんじゃないかな。気付いていた人もいたようだし,誰かが何とかできなかったんだろうか。

  • 当時センセーションを巻き起こした事件でしたが、
    発売当時は未読で、
    今回文庫化されたのを機会に初めて読んでみました。
    被害者の二面性、
    昼と夜の顔の落差ばかりが取り沙汰されがちでしたが、
    しかし、これってとんでもない冤罪だったワケで。
    被害者と関わり合いがあり、尚且つ、
    殺害現場に出入り出来たからという理由で犯人として捕らえられ、
    本人が「やってない」と100%否認しているにも拘らず
    起訴されて、長い拘留と裁判に突入……
    想像するだけで気が遠くなるほど恐ろしい。
    罪名が強盗殺人なので最高刑は死刑。
    裁判は結局、無罪が言い渡されて結審したけれども、
    もしそうならなかったらと考えると更にゾッとする。
    しかも、その長い間に、
    真犯人は何処かへ逃げ、隠れてしまったことになる。
    警察は早く事件を片付けようと焦るあまり
    (何処かから圧力でも掛かったのか?)
    大きなミスを犯してしまった、と。
    重ね重ね恐ろしい。
    まんまと行方を晦ました真犯人を突き止めなければ、
    被害者は浮かばれないと思うのだが……。

  • 直美ちゃん選

  • 新事実で再審の可能性が出てきた。書籍も平積みになってる。

  • 私たちは、こうした愚直かつ誠実に、そして主観を交えた感傷的に綴られたノンフィクションを前に、屹立と正座することを恥ずかしく思えるようになってしまった堕落を、まず呪うべきである、と思わず書いてしまうような本だった。

    つまり、これはこれでいいのではと思ってしまったということである。


    【ストーリー】
       1997年3月8日深夜、渋谷区円山町で、女性が何者かによって絞殺された。被害者渡辺泰子が、昼間は東電のエリートOL、夜は娼婦という2つの顔を持っていたことがわかると、マスコミは取材に奔走した。逮捕されたのは、ネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ。娼婦としての彼女が、最後に性交渉した「客」であった。
       本書は、事件の発端から一審判決に至るまでの一部始終を追ったものである。その3年もの間、著者は、事件にかかわりのある土地に足繁く通い、さまざまな証言を集めた。事件現場となった円山町は言うにおよばず、ゴビンダの冤罪を晴らすべく、はるかネパールにまで取材に行った。立ちはだかる悪路難路を越えて、彼の家族友人から無罪の証言を得ようとする著者の姿には、執念を感じてしまう。
       ネパール行脚が終わると、裁判の模様が延々と書かれている。ゴビンダを犯人と決めつけている警察の捜査ひとつひとつに、著者はしつこく反論していく。このくだり、読み手は食傷気味になるかもしれない。だがその執念も、ともすればステロタイプにくくられがちな「エリート女性の心の闇」に一歩でも迫りたいという一念からきたのだろう。著者は、確信犯的に堕落していった渡辺泰子に対して、坂口安吾の『堕落論』まで引用して、「聖性」を認めている。その墜ちきった姿に感動している。この本は、彼女への畏敬と鎮魂のメッセージなのである。

  • ノン・フィクション本。
    普通の小説とは違った読み味が新鮮。

    作者の感傷的な部分が多く、演出的な構成、描写はもうちょっと少ないといい。
    裁判部分とかの描写などはかなり細かく書いているので、ギリギリの一線で、「ノン・フィクション」になってるという印象も。

    とはいえ、一つの事件を深く追いかけていく感覚は心地よい。
    なにしろこの事件、まだ続いている。

  • 97年に起きた東電OL殺人事件の裁判の過程をリアルに追ったドキュメント。本書では最初からこの事件を冤罪としてとらえ、事実を丹念に積み重ねながら、検察の主張がいかにずさんなものであるかを炙り出している。事件当時話題となった、昼はOL、夜は売春婦という被害者女性の異常な二重生活については、本書ではあくまでも「謎」として、精神分析医との対話以外で深く掘り下げられていない点が残念。むしろ著者は、坂口安吾を引用しながら彼女を一種の象徴として「文学的」に捉え、殺害現場となった円山町の土地柄を含め、この事件に時代的・社会的な広がりを持たせようとしている。

  • しっかりした取材に基づき、10年経った今でも古びていない内容。
    また、この時点で、アジアのエネルギーの高さと日本の停滞を十分感知しているところもすばらしい。
    ただ、被害者の心についてはやはりわからなかったということでとても薄い内容になっている。

  • 最近ネパール人の再審で話題になって、ふと目にとまったので、借りてみたのだけれど・・・あまりにくだらなくて、最初の1/3ぐらいでギブアップしてしまった。
    (わたし、斜め読み得意なので、わけわからなくてもとりあえず読みきることが多いので、ギブアップは相当です・・・)

    まず、何が言いたいの?主張がよくわからん。どうでも良い事実が多く、筆者の想像だったり、思いだったり・・・。いらん。事件がセンセーショナルだったから、それに便乗して本を売ろうと思ったのかな?

    でも、この本、ジャーナリストとしての名前を下げるだけだったのでは・・・。って最後まで読んでないのに、めちゃめちゃ言っちゃってごめんなさい。でも、斜め読みで最後まで読んだ、父も「最後まで一緒やった」と言ってました・・・。

  • ずっと気になっていたけど、最近新試料が出たとかでニュースになっているので、やっと読んだ。
    事件当時は私は中学生くらいで、あまりこの事件の報道を覚えていないんだけど(神戸の事件の方が衝撃だったし)、今はもちろん概要は知っているし興味深く読んだ。

    ただ、この筆者のスタンスがうけつけなくて、どうも夢中になってむさぼり読むという感じにはなれなかった。「匿名性」に対する違和感とかはたしかに同意できるけれど、でもだからといって、被害者の家族の同意も得ずに両親や家系をたどって公表するようなことが公共の利益にかなうとは思えない。
    「事件に『発情』する」という表現がまず最初に受け付けなかった…。
    これは単に彼と私の日本語に対する感性の違いかもしれないけれど、どうしても下品に映る。まあ、こういうノンフィクションに品性を求めるのが間違っているかもしれないんだけれど。

    道玄坂には頻繁に行くので、いつかヤスコ地蔵にお参りしてみたいとは思った。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者、業界紙勤務を経てノンフィクション作家となる。1997年、民俗学者宮本常一と渋沢敬三の生涯を描いた『旅する巨人』(文藝春秋)で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦乱心の曠野』(新潮社)で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。

「2014年 『津波と原発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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