ワイルド・ソウル 下 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1998
感想 : 175
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101329741

感想・レビュー・書評

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  • 第二次大戦後、日本政府が行ったブラジル移民政策を絡めた小説です。
    ブラジルの日系社会を語る際に、「大変な苦労をされたブラジル移民の方々」という枕詞を良く聞いていたのですが、この小説を読んでブラジル移民政策についてきちんと知らないといけないかなと思いました。
    この小説はフィクションで、一般国民を何とも思わない官僚たちが立てた計画でブラジルのとんでもない土地に送られた日本人の移民の子が、日本政府に復讐するという話です。
    最近特に結局みんな自分のことしか考えていないのよねって思っているので、外務省の官僚たちが移民政策について、何の反省もなく、何の罪の意識も感じていないのをまあ当然の描き方かなと。
    人物の性格描写も設定もそれなりに楽しめて、割と入り込んで読めたけれど、最後は結局作り物よねという感想になってしまいました。
    丁寧に書かれている前半の方が好きでした。
    感動しすぎて、読んだ後に腑抜けになってしまうような小説が読んでみたいです。

  • 2014/1/21
    めちゃくちゃおもしろかった。
    作者があとがきに「おれはやったぞ」って書いてて思わず「やったねー!」とつぶやいた。
    いや、この作者の本これしか読んだことないんだけどね。
    私の中では絶対に2人が逃げ切らないといけなかったから、先を読むのが怖かった。
    警察側にちょっと魅力的な人たちが出てきたから余計に怖かった。
    それで止まるたびにダラダラと引き延ばして読むのに時間がかかったけど、一気に読める状況にあったら寝ないで最後まで行ったに違いない疾走感。
    そして今の報われた感。
    背表紙のあらすじから受けるお堅い印象と全く違うすがすがしさ。
    人に薦めたいけど「じつは、たまに思もいだしてオナニーもしている」とか書いてる本薦めていいんかね。
    もう大爆笑したわ。ここ。
    リアルでは薦めにくいからここで熱く語るけどめちゃくちゃお薦めだから!!
    ドン・バルガスが最後にちょっとだけ見せた愛情も泣ける。
    ドン・バルガスは立場上松尾を許すことはできないだろうけど、松尾の逃げた可能性にちょっとだけホッとしてくれてればいいな。
    結局、無条件に愛する者を持てなかった自分の人生にむなしさを感じてくれてるといいな。
    そして松尾が新しい人生のどこかでまたケイに会えるといいな。
    ケイはたくましく生きていくに違いないと思えるのがまた幸せ。

  • こんなに面白い作品がまだあったとは。スケールが大きく、サスペンスとしても一級品。読み応え充分。それにしてもブラジル移民の実態について知らなかったことが悔しい。

  • 自動車好きの小生ようなものは、RX7の改造車が、登場する部分は、非常に面白い。リアルで、ロータリーエンジンの魅力は、分かっているし。

  • まあ上巻とはずいぶん趣を異にしますな。

    でも異文化の人と付き合うってだけでそれなりに
    ハードルが高いのに、殺人を含む犯罪にけっこうどっぷり、
    っていう設定のお兄さんと家庭を営むってのは
    今後のほうがハードル高そうです。

  • 戦後、食糧不足の為に政府が行った「移民政策」。その際に謳われた豊かな土壌や家付きの土地、とは間逆の未開のアマゾン奥地での凄惨な実態。
    日本という国から棄てられた「棄民」。その棄民たちの日本政府への復讐を描いた作品。

    以前にこの作者の「君たちに明日はない」を読んだけれど、女の人の描き方が妙にバブリーで一辺倒なところが気持ち悪くて、正直好きな作家さんではなかった。
    しかも長編な上にテーマが「棄民問題」と重々しいので「大丈夫かな」と思いつつ読み始めたのだけど、文章が読みやすいし、とにかく中身が面白くて久々に一気に読んでしまった。

    上巻の重厚さが下巻では少し漫画的展開(特にエピローグ)になっているけど、終始南米ブラジルらしい明るい空気も持ち合わせていて、エンターテイメント作品としてとても楽しく読めた。
    wikipediaの「日系ブラジル人」のページを見ると、この作品の元になった1953年以降のブラジル移民に関しても、「多くの日系人は大学を卒業し、ブラジル一般社会で大きな成功を収めた」と書いてあるし、私も移民政策のことは名前程度の知識しかなくて、実際こんな目にあった方々がいたなんて何も知らなかった。実際のところは自分で調べてみようと思う。

  • 下巻も面白いが上巻と比べるとやや見劣りする。理由は3つ。1つに上巻で色濃く語られていた移民政策への復讐という動機が薄れてしまっている。2つ目にご都合主義が多々見受けられる。最後にケイと貴子との恋愛ストーリー、というか自分探しの物語になってしまっている。上巻にあった社会派部分がなくなり、普通のアクション小説になってしまっているのは、題材が俊逸なだけに残念だ。

    とはいえ日本人特有の陰鬱さを残す松尾と、日系だがブラジリアンそのものであるケイの対比が巧みであった。負の歴史はどこかの世代で断ち切らなければならない、そんな前向きなメッセージが感じ取れた。ラストもスカッとする気持ちの良いハッピーエンド。良質なエンターテイメント作品といえよう。

  • ストーリーはフィクションですが、実際にあった歴史上の出来事にもとづいて書かれているとのことで、今まで南米の日系移民を甘く見ていた自分を恥ずかしく思いました。

    これほどまでに困難と努力を積み重ね、生きようとしていたのか、と衝撃を受けると共に彼らの復讐劇を通して何か虚しい気持ちにもなりました。
    しかし、復讐劇ではあるけれども決して暗いわけではない所が面白く、天井が抜けたような爽快な気持ちにさせられる部分が確かにありました。

  • 日本政府への復讐劇が爽快。

    上下巻2日で完読。
    久々の寝不足。

  • 内容がやや堅過ぎて上巻はなかなか進まなかった。下巻の核心に触れてから最後までのストーリーは目が離せず夢中に一気に読めた。

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著者プロフィール

1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の史上初となる3冠受賞。その後も05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞、16年『室町無頼』で「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』などがある。

「2020年 『信長の原理 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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