本格小説(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.82
  • (87)
  • (69)
  • (101)
  • (12)
  • (4)
本棚登録 : 1090
感想 : 87
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (605ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101338132

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2002年

    上・下巻の感想をまとめて。

    前半は著者の独白?の様なスタイルで始まり それがとにかく長い。
    ここの部分は「ふーん」と言う感じでかなりチンタラ読んでいたが
    上巻の後半から下巻の終わりまでは凄いスピードで読んでしまった。

    比較的出てくる地域になじみがあったと言うのも大きいけれど
    何より久しぶりに「新鮮な小説」を読んだ気分になった。
    他と何が違うとは上手く言えないけれど 見た事無いタイプの小説。

    裕福だからと言って全ての人が幸せになれるとは限らない
    成り上がって全てを手に入れたからと言って幸せだとは限らない。


    あとなんとなく水村さんが書く文章は色っぽいな と思った。

  • おもしろくて一気に読んでしまった。嵐が丘がベースになっているけれど、それだけではありません。終わった後また読み直したくなりました。恋愛小説、ニューヨークでの日本人の生活、軽井沢、戦前戦後のお金持ちの優雅な暮らしなどに興味がある人は読んでみてください。上下間ともウィリアム・モリスのパターンが表紙でそれもいい。

  • 89点。自分が小説をあまり読まないのは物語に対する興味がないからだ。さらに物語に対する読解力も理解力もない。しかしこの『本格小説』は物語で東太郎という男の半生を描いた小説だ。なのに面白かった。
    とか言って下巻も読まずに上巻の感想を書くのも如何なものかとは思うが、実は上巻の半分くらいは著者自身による「本格小説の始まる前の長い長い話」という前書きなのだ。この未だ小説が始まってない前書きこそが非常に重要で、特に文庫版ではP225〜P232の部分は熟読されたい。
    まとめちゃうと私的な体験(事実)を盛り込んだ小説が私小説である一方、本格小説とは「作り話を指すもの」である。さらに著者は日本語で書かれた私小説というものの持つ真実の力に注目する。
    じゃあミックスしちゃおうじゃないの、と。ミックスした理由は私小説を書こうとしていた著者の実存的な理由に他ならないわけだが。
    日本でもっとも質の高い私小説が量産されていたのは近代だ。そこで題名は『日本近代文学 本格小説』やってやるぞ感がかっこいい。
    先の前書き部分では私的な内容を語りながらも物語の主人公である東太郎が登場する。
    著者は人から聞いた「小説のような話」を小説化(作り話)しながらもこの前書きを配置することで私小説的が持つ真実の力も両立させようとしたのだ。
    つまり、日本語の「私」は西洋の「I」のような、個々の人間を超越した抽象的な「主体」という意味をもちえなかったと語る著者は、小説内でメタフィクションの構造をとることで本来日本語においては埋没しがちな主体を、著者が物語を語る主体として小説に「翻訳」することで『本格小説』化を試みたのだ。
    客観的に日本の文学と日本語を眺めてきた海外暮らしが長い著者だからこその感受性だし、真摯な挑戦的態度が好きだな。
    下巻が楽しみだ。

  • エミリー・ブロンテの「嵐が丘」をモデルとした「本格小説」。
    作者の一人称による「本格小説の始まる前の長い長い話」と「本格小説」の二部構成。
    この一部と所々に挿まれる写真が全体としての奥行きを与える。

    太郎、よう子、雅之、そして女中の私。
    その生い立ち故のプライドと敵対心が不思議な関係を築く。
    それぞれの「一回切りしかない人生」は「至福と煉獄の間」をさまよう。

    愛する人の幸せを願いながら、実際に幸せになってしまうのを恐れる。
    たわいないようだが、それが却って生々しい。

    霧に包まれたような湿り気を伴う、日本的な情感にあふれた「本格小説」である。

  • 去年初めて読みその時面白くてすぐ読み終わったのに、全く話を忘れていたのでもう一回読み直した。
    最後ちょっとびっくりする話をそういえば思いだした。

    嵐が丘の日本版ということらしいけど、スケールは違いすぎる。

  • ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちになった伝説の男の数十年にも及ぶ悲恋の物語。
    愛するということに切なくてやりきれない気持ちになります。

    読後も余韻の残る物語でした。所々に差し挟まれた写真が想像力を一層広げてくれます。

  • 軽井沢に行きたくなりますね

  • 軽井沢などを舞台とした作品です。

  • この物語は完全なるフィクションなのか。

  • * 2008年01月04日 04:32記載:

    友人に薦められて読んだ本。

    ちゃんとした長編小説を読んだのはおそらく
    初めてじゃないかって感じで、自分の読書スピード
    が相当遅いことに辟易しながらも後半は一気に
    最後まで読みました。

    これからは読書家と言われるようにがんばりたいです。

    ちなみに著者はかの著名な経済学の権威、岩井克人
    の妻でもあります。




    何人かの登場人物が背負う運命はあまりに悲しく
    不幸であり、読み終わってから一途な愛情を
    美徳とすることに対して抵抗を覚えるような
    苦々しさが胸に残りました。


    ある女性が言います。
    「愛されないっていうのはとても不幸なことだと思う」と。
    しかし愛する人に愛されないことはは往々にして
    あるのが世の常であり、ほとんどの人が直面するで
    あろう不幸であると思います。そんな運命も甘んじて
    受け入れていかなければ前には進めないのだと
    改めて実感してちょっと悲しくなったり。


    また、小説の終盤に男が日本人を批判的に表して
    言った、
    「軽薄を通り越して希薄ですね」
    という台詞が何となく自分あてはまっている
    気がしてはっとする思いでした。



    いろいろ考えさせられました。

    余韻に浸りたいときにいかがでしょうか。

全87件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

水村美苗(みずむら・みなえ)
東京生まれ。12歳で渡米。イェール大学卒、仏文専攻。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』を刊行し芸術選奨新人賞、95年に『私小説from left to right』で野間文芸新人賞、2002年『本格小説』で読売文学賞、08年『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』で小林秀雄賞、12年『母の遺産―新聞小説』で大佛次郎賞を受賞。

「2022年 『日本語で書くということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

水村美苗の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
伊坂 幸太郎
三島由紀夫
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×