こうばしい日々 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339122

感想・レビュー・書評

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  • ウィルミントンの町に秋がきて、僕は11歳になった。映画も野球も好きだけど、一番気になるのはガールフレンドのジルのこと。アメリカ育ちの大介の日常を鮮やかに綴った表題作「こうばしい日々」。結婚した姉のかつてのボーイフレンドに恋するみのりの、甘く切ない恋物語「綿菓子」。大人が失くしたピュアな心を教えてくれる、素敵なボーイズ&ガールズを描く中編二編。

    「綿菓子」の最終章『きんのしずく』にはドキドキした。ピュアで甘やかな時間がスローモーションで再生されて、ドキドキしながら読んだ。苦いコーヒーだって、恋の前にはきんのしずくになり得るのだ。

  • いまごろという感じで遅れて読んだのだが、タイミングがあったというのだろうか。

    長崎の事件に関連して、あの頃を思い出してしまった。
    5~6年生ころ。こどもなんだけどわかっている年頃。

    「こうばしい日々」が男の子「ダイ」の気持ち。
    「綿菓子」が女の子「みのり」の気持ち

    江國さんの文章、文脈は魅力的である。
    本当は雑多で無味乾燥な日々のことどもを幻想的とさえいえる、しっとりした雰囲気をかもして書いている。技だろう。

    家族がいて、愛があってもひとりでに歩き出してしまう自分いる。
    こわれそうで傷つきやすいものの、硬質なこころが溶けなくて。
    でも、知って欲しいような、認められたいような!

    それをやさしく包むようにいとおしんで描き分けて下さる。
    そうして江國さんの世界は理解してくれる人がそばに居ることがわかってハッピーになる。

    江國さんの小説はまわりに江國さんの分身が居るからいいのだ。
    現実はなかなかそんなひとがいないこと、そうでないことだ。

    ところで、江國さんの本は2冊めだけど、脇役(つまり江國さんの分身)にすごーく魅力的な人が多い。

    とり上げると切りが無いくらい。登場人物全部になってしまう。

    「こうばしい日々」の日本びいきのウィル。パパの同僚の島田さん。給食のおばあさんパーネルさん。
    「綿菓子」のおばあちゃん。引っ越していった同級生のみほ。

    そんなひとたちが主人公をつつむ。
    だから和めるのだけど。

  • かわいい

  • 短編が2話「こうばしい日々」と「綿菓子」。

    「こうばしい日々」
    父親の転勤でアメリカで生まれ育った11歳の男の子が主人公。
    表現が11歳の男の子にしては少し違和感のあるところもあるけれど、さほど気にならない。
    ガールフレンドとの絡みも可愛らしい。
    嫌な感じの人がほとんど出てこないのもいい。
    ちょっと意地悪な同級生の男の子が出てくるけど大人になる過程で
    素敵な青年になっていくかもしれないしね。
    なにも終わらない話だなと思った、継続してるような。
    希望につながるようなそんな感じ。
    誰かがいなくなるとか別れるとかそういうのはなく。
    大袈裟な出来事があるわけではなく日常的。
    よくある小さなケンカにちょっとしたレジャー。
    そうして日々は流れていく、未来につながる。
    可愛らしい話だった。

    「綿菓子」
    小学6年生の女の子が主人公。
    1話目は年の離れたお姉ちゃんが3年付き合っていた恋人と別れてお見合い結婚をしてしまう、というところから始まる。まぁ、普通。子供が主人公の話はスムーズに読めるのかなと思ってた。
    2話目、おばあちゃんのお友達が急死してしまう。そのお友達はおじいちゃんの恋人だったという...あれ?れれれ??
    3話目、お父さんとお母さんの小さな約束の話。ほほえましい感じ。
    4話目、お姉ちゃん夫婦と昔の恋人とは顔見知りになっていた。彼のバイト先のスポーツ用品店に夫婦で買い物に行くという。彼はサービスしてくれるという。う~ん、理解できない。
    5話目、両親が離婚して引っ越してしまった小学校の同級生だった女の子からの手紙の返事。
    1話が返事のみで主人公の女の子の視点は一切なし。アクセントとして面白い。
    最終話、主人公の女の子とお姉ちゃんの元恋人との恋の芽生え(?)の話。まったく理解できない。おそらくお姉ちゃんに未練があるのであろう元恋人が主人公の女の子の中にお姉ちゃんの面影を見つけてということだろうけど。おいおいおい!って思ってしまった。
    年齢も何もかもが様々な男女の話が描かれていてそういう意味では面白い。

    江國香織の小説はファンタジーだと思って江國ワールドを楽しむことにしている。
    彼女の文章が織り成す空気感は心地よいから。
    リアルに持ち込もうとすると気になる点が様々ありすぎるのだけれど、著者は意図的にそれをやっているのだろうなぁと思ってしまう。
    女性の感性で書かれた話なので男性が読むとどういう感想なのだろうとも思う。

  • 『こうばしい日々』『綿菓子』の二篇からなる。まだ幼い大介とみのり、それぞれの恋を描く。江國香織の文章が瑞々しい。幼さ故の「真実の愛」を求める真っ直ぐさ、思春期故の複雑さ。
    私は『綿菓子』の方が昔の自分への愛しさも募ってすき。

  • 元々、『こうばしい日々』、『綿菓子』と別々に発表されていたものを、文庫化の際に一冊にまとめたものです。

    『こうばしい日々』では男の子、『綿菓子』では女の子、それぞれの視点を通して語られる十代前半の日常と、それらにまつわる様々な想いが瑞々しい感性で描かれています。

    個別に読んでいた時は気づかずにいたけれど、一冊にまとめられると意外に相似点が多いものですね。
    似通った設定だけに、少年と少女の感覚の相違が、より強調されているような気がしました。

    他作品にも見られますが、食事やお菓子の描写が多く、それらが両作品に彩りを添えています。

  • 喧嘩をした時「もうこのまま絶縁かも」と思える子供心を忘れてしまった事に、寂しさを感じる。
    どこかに置いてきたものを、思い出させてくるのが江國香織さんだ。

    水曜日が特別になる。
    私も特別な曜日をつくろう。
    ご褒美ではなく、決まりごとの方がいいね。

    女は哀しいけれど、恋をした人はもれなく全員哀しい。

  • 抽象的だなあ

  • ピンクハウス

  • 『こうばしい日々』と『綿菓子』という中編2作が入っている。
    綿菓子のp123におばあちゃんがお姉ちゃんのお見合い結婚を反対するみのりちゃんに、「お姉ちゃんは幸せを選んだのよ。」というシーンがあって、みのりちゃんはお姉ちゃんのことが好きだからお姉ちゃんの幸せも願いたいけど、それと同じくらい次郎くんのことも好きで次郎くんの幸せも願いたい。お姉ちゃんの幸せが叶ったら、それは次郎くんの幸せが叶わないことになるし、次郎くんの幸せが叶ったらそれはみのりちゃんの幸せが叶わなくなる(みのりちゃんは次郎くんが好き)ことになるから、恋は全然うまく行きっこないことと私は思って、終わらないループになっちゃうから結婚してる人たちはすごいと改めて思った。途中でみのりちゃんが「女は哀しいね。」というところが二回あって、最後の最後には「男も哀しい。」という結論に落ち着くのだけど、そこの感じがいまいち入り込めなくてわからなかったからもう一度タイミング変えて読み直してみようと思った。また読むタイミングを変えたら違う風に響くかも!

著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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