第三阿房列車 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101356358

感想・レビュー・書評

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  • 第一、第二と変わらず、なんの用事もないが汽車に乗っていろんなところへおでかけするという内容。旅行っててきぱきするよりはだらだらしたほうが楽しいものなぁ…。今回珍しく百閒先生は旅行中に病を得ている。そこで「なまけるには体力が必要である」という真理に至ったそうな…

  • 底本1956年刊行、初出1954~55年。房総半島、長崎、四国、山陰松江、宮崎経由の八代等の紀行文である。新幹線はもとより電車特急こだますらない時代なので、へえーっということが多かったが、鉄道旅行を叙景的に記すというよりは、著者の内心に目が向けられることが多く、紀行文とはやや異質な趣き。もっとも、長崎行きの寝台急行に26時間ほど揺られたり、食堂車連結が進んだ時代の利用者像、九州の八代に日豊本線経由で向かう際、宮崎に一泊する等、戦後10年くらいの時代感覚が蘇ってくる。

  • 2016.10 本棚整理のため第一阿房列車から第三阿房列車まで再読。

    時代を越えて愛される列車紀行エッセイ。百閒先生の軽妙洒脱な文章からガタンゴトンと線路の楽しいリズムを感じるよう。どうしても続けて3巻読んでしまう形になるので慣れもあってか、第一☆4.5、第二☆3.5、第三☆3くらいの評価。10年に一度は読みたい名作。 (レビューは1~3巻共通)

  • 阿房列車もとうとう最終列車が出た。この後、百けん先生は何度か鉄道旅行をしているらしいのだが、それが阿房列車シリーズにまとめられることはなく、晩年は身体が衰えて列車での長旅ができなくなったため、結果的にこの第三阿房列車が最終列車となってしまった。まさに「なまけるには体力が必要」であったわけだ。しかし、その遺志は阿川弘之、最近では酒井順子に受け継がれ、今日に至るも阿房列車を走らせる輩は後を断たない。

    もともと阿房列車の楽しみは卒意の面白さというか不作意の妙といったところにあった(もっとも、同乗したヒマラヤ山系氏が後に書き記したところによると、当初よりかなりの部分がフィクションだったようだが)のだが、第三阿房列車では「菅田庵の狐」や「列車寝台の猿」などやや "狙った" 作編も含まれている。まあ、それはそれで独特の恐怖感があり、楽しめる。

  • 目的地に用もなく、ただ単に列車に乗るということをくり返す、作者:内田百聞。列車が手段でなく、目的と化している。これは飛行機マイル修行を行っている身としては、十分共感できる。

  • 百閒先生のこの絵に描いたようなへの字口と、いかにも偏屈そうなしかめっ面が好きなんだよなぁ。
    この顔まんまのテンションで、こんなにとぼけた作品を書くとは。

  • 内田百閒先生は旅が好きなのではなくて、列車が好きな人なんだなあとつくづく思う。今でいう鉄道オタクではなく、ただ好きなだけのようだ。旅行に行くのが目的ではなく列車に乗るのが目的のように感じる。しかし、そんな詮索も百間先生からしたら面倒くさいものだろう。一度でいいからこのような旅を私もしてみたい。あてもなくぷらぷらと。

  • シリーズ三作目、別の本を途中で読んだので、少々読了に時間が掛った、この種の本は、どこで止めても、また、そこから読んでも、少ないページでも、OKなのが嬉しい。現在のように全てが(早く)、が一番ではなく、
    ゆっくりと時間が掛っても、自分の心が感じるままに、が羨ましく感じる、
    百間先生相変わらずの巻き、でした。
     (時代は、昭和29年~30年)

  • ご存じ百閒先生の「旅をするための旅」「列車に乗るための旅」も,本巻で終わりを迎えるのである.第一の頃は何しに付いてきているのかサッパリわからなかったヒマラヤ山系さんも段々キャラが立ってきたが,若干マンネリの感もあり.第二が一番良かったかな?

    旅先で出会う予定の古い知り合いについて,「一緒に行ってご案内するなぞと云い出されては,事が複雑になる.旅先でどこかへ出掛けるには,人に黙っているに限る.」あいかわらず,この人は,僕の生まれ変わりではないかと思ってしまう(逆か).

    旅館で飲み過ぎた次の朝,「寝不足と宿酔の為に,体を動かすのも気持ちが悪い.だからじっとしている.何の因果でこんな目を見なければならないのかと思う.用もない旅に出掛けてきて,....(以下略)」 そりゃ,用もないのに旅に出て,夜中3時まで騒ぐからですって! 

    そういえば,東京日記の「長春香」はフィクション風小説だと思い込んでいたが,実話であるらしいことが本書の中で言及されている.

  • 第二阿房列車の解説を高橋義孝先生が書かれておりました。
    初版時の昭和30年の解説です。
    その高橋義孝先生は『随筆内田百閒』の中で、次のように百閒さんを評していると、山口瞳先生は『内田百閒小論』の中に残しています。
    「けだし先生は頭が少しわるかいらである」
    「つまり頭のはたらきが常人より少しのろいのである」
    ここだけを引用すると誤解をまねくかも知れませぬが、正に百閒さん(或いはその著作)を言い得ていると思います。

    芸術院会員に推され、それを辞退するときに「イヤダカラ、イヤダ」と仰ったとされる百閒さん、その偏屈爺ぶりが本作にもいかんなく発揮され、第一、第二に続き楽しく読めました。

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