ほんまにオレはアホやろか (新潮文庫 み 31-1)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101357317

感想・レビュー・書評

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  • R2.12.5 読了。

     小さい頃からテレビや漫画などでみてきた「ゲゲゲの鬼太郎」の作者である水木しげるさんの自伝。
     小さい頃はガキ大将で、昆虫や貝殻や海藻を収集したり、のんのんばあという妖怪や自然の精霊について話してくれるばあさんから話を聞いたりして過ごしていたという。
     本人曰く、学校の勉強はあまりしなかったとのこと。その後、時代は第2次世界大戦へ。水木さんも激戦地のひとつであるラバウルに出兵し、左腕を失う。また、終戦後出兵先の原住民との交流を通してその自然と共存して、ゆったりと仲間と共に生きている姿に感銘を受けられる。
     日本に帰ってきてからは、紙芝居の画家から徐々に漫画家へと転身していく。
     若い頃は食うや食わずの生活も悲壮感は感じさせず、本人曰く必死に生きてきた。その生き様が本書に描かれている。この本は読むほどに水木しげるさんの魅力に引き込まれて、読み終わる頃には人間・水木しげるさんのファンになってしまった。
     もちろん本書は、とても面白かった。

    ・「僕は幼いころから虫に興味を感じていたが、それは、虫そのものをおもしろいと思うとともに、その生き方に共感するような面もあったからだ。
     大地の神々によって生かされているという、僕の漠然とした人生観は、すでに虫によって実践されていると思われたからである。それに虫には自分の生き方がある。蝶の生き方もあれば、蟻の生き方もあれば、オケラの世界もあれば、ミミズの世界もある。いろんな生き方や世界があるのだ。いま、自分が生きている世界だけでなく、別の、もう一つの世界があるというところが面白い。」
    ・「アフリカのピグミーたちは、『急ぐことは、死につながり、ゆるやかに進むことは、生を豊かにする。』と、信じているらしいが、全くその通りだ。自然は人間を、せきたてるようにはつくってはいない。土人たちは、自然のリズムに従って、生活しているから、こんなに楽しいのだ。」
    ・「『わが道をゆく』という言葉があるが、考えてみりゃあ、落第したってくよくよすることはない。わが道を熱心に進めばいつかは、神様が花をもたせてくれる。神様が花をもたせてくれなくても、それはそれなり、また救いがあるものだ。人がどうこうしたからとか、スタートにおくれたからといって、クヨクヨする必要はない。虫の中にいろいろな種類があるように、われわれ人間にも、いろいろな種類があるのだ。トンボにカマキリになれとか、南京虫にみみずになれと、いわれても困る。
    人間はそれぞれ違うのだから、それぞれ変った生き方をしたっていい。」

  • ●水木しげるさんの魅力

    水木しげるさんの人間の魅力を存分に味わえるエッセイ。本当に面白くて、笑いがこみ上げる。

    幼少の頃からのドがつくほどのマイペース人生。激動の戦時中も戦後のジリ貧生活の際も、水木さんの人生観はゆるがない。

    いつも大きな自然の力のなかで、自らは生かされているという価値観を据え、「絵を描き続けること」に対する情熱を失わず、楽天的に生きる姿は今日に生きる私たちにも見習えるところが随所にある。


    ●「ゲゲゲの鬼太郎」が誕生するまで

    上述のとおり、幼い頃から自然の神秘に魅了され続けた水木さんの人生観を土台に、人生における奇異な体験の数々が、長年愛され続けることになるこの作品を生んだんだろう。

    戦時中の生死と背中合わせの体験。激動の時代に生きた奇怪な人々との出会い(現在では考えられないような人種)などが養分となったんだろうな~



    40歳を超えてからの成功まで、開かない扉をたたき続けた。紆余曲折と寄り道をしながらもたどり着いた、不思議な人生。

    本当に憧れる。


    奥様が書かれた「ゲゲゲの女房」とあわせて読みたいところ。

  • ほんまにオレはアホやろか(新潮文庫)
    著作者:水木しげる
    発行者:新潮社
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    facecollabo home Booklog
    https://facecollabo.jimdofree.com/
    これぞ天才の思考回路!

  • 【本の内容】
    子供の頃はガキ大将で妖怪研究に夢中。

    その結果、入学試験は失敗、学校は落第、就職しても寝坊でクビ。

    そのうち戦争が激しくなり、兵隊として南方の最前線に送られ、片腕を失いながら九死に一生を得る。

    終戦後、南の島で見つけた「楽園」に魅せられながら、赤貧時代を経て「ゲゲゲの鬼太郎」を生むまでを、激動の現代史に重ね合わせつつ描く、なんだか元気が出てくる自伝的作品。

    [ 目次 ]
    「こいつあ、アホとちゃうか」
    へんな美術学校
    落ちたのは一人
    男らしい仕事?
    靴をはかずに新聞配達
    ドロボウと流行歌手
    夜なら頭がサエると、夜間中学に
    支那通信
    ぼくは落第兵
    エプペとなら〔ほか〕

    [ POP ]
    あとがきに「大地はもっと自由だ。

    いろいろな形で生きていける」と書いてあったのを見て、「購入しよう!」と思ったのが本書。

    『ゲゲゲの鬼太郎』で成功するまでの激動の人生が、温かみと面白みある文章で綴られています。

    水木しげるはマンガだけでなく文章も面白い!と読み進めていくうちに、ゲラゲラ笑ったり、ほろりとしたり。

    本の薄さのわりに濃い中身です。

    「ゲゲゲの女房」を見た人も見てない人も是非手にとって頂きたい一冊です。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • タイトルに惹かれました。
    私も「自分は本当に馬鹿なんやろか」と常々自問するので、この本には大いに励まされました。「大自然の摂理に従っていれば、なんとかなる」、と水木先生は語っておられますが、私は先生ご自身が生きるために必死で絵を描いたからこそではないかと思うのです。
    戦中戦後の絶え間なく襲いかかる困難によく立ち向かえることができたなぁと敬服。

  • 水木先生本人が書く自分のこと、周りのこと
    本人が周りがおかしいと思うところは納得、自分がおかしいと思うところが少ないところがやっぱり!
    幼少期から仕事が一段落して、休みがとれた頃までをさらっとなぞる位のエピソード量なので物足りないから違う本も読んでみなきゃ
    呉 智英が書いた巻末エッセイ「じっと待てない男」がものすごく面白いように周りからみた水木先生のエピソードもよんでみたい

  •  読んだのはもう2ヶ月くらい前
     僕は将来のことを考えて凹んでいて、何か元気が出るような本はないかと探していた
     そんなとき、中崎町にある「本は人生のおやつです!」の店主に勧められた本がこれである
     店主曰く、こんな「人生もアリなのかと元気づけてくれる本」だそうで、その勧め方に納得したので購入したのだ


    ***

    男としての理想的な男

     本書は、著者である水木しげるの自伝である
     まず、冒頭でこうである
     
     「健康でのものすごくよく寝る子どもだった。そこへもってきて、人のいうことをきかない上、舌が厚くてしゃべればない」
     「しゃべれないくせに、自分の思いどおりにくらす、といった子どもだった」

     本書は最初から最後までこの通りの性格である著者の自伝なのだ


     水木しげるファンの呉智英による「あとがき」にはこう書いてある

     「水木しげるの中に、男としての理想の男、こうありたい男を見ているのだろう」

     「男としての理想の男」というフレーズ
     要注意である
     あとがきから本を読まれる人がいるようだが、そんな人がこの「男としての理想の男」というフレーズを「男らしい男」と考えるとその期待は見事に裏切られる
     そこにあるのは天真爛漫で好きなようにしか生きられない不器用な人間の姿だからだ
     「男らしく」仕事に就き、「男らしく」家族を養い、「男らしく」みんなを引っ張るような姿をここにはない
     また、夢を追い続けたカッコイイ男の姿もここにはない
     あるのは夢ではなくそれしかできない人間の姿だ

     しかし、それでも水木しげるを「男としての理想の男」と言えるのならば、それはその「シンプルさ」にあると思う
     「シンプル」というか「一途」というか彼は自分の世界でしか生きていないのだ

     その彼の世界とは自然の世界である
     山とか森とか花とか虫とか獣とか蛇とかそういったものである
     自然の世界が第一であるものだから競争とか戦争とかそういった考えがどうにも馴染めないし、理解できない
     理解できないものだから、競争のための勉強とか労働とかそういうものに全く興味を示さない
     だから、学校の勉強なんてするはずもないし、戦時の雰囲気の中でも変わらずにいて上官に嫌われて最前線の中でも最前線に送られる

     ホント良く生き残ったものである

     その最前線ラバウルで土人と仲良くなったり(感性が似ているのだろう)するのだが、それは読んでのお楽しみ

     そんな感じでずっと自分のやりたいようにしかやって来なかった人なのだ

     だから男からしたらそれはやはり「理想的な男」である
     自分のやりたいようにやりたいが、そうはできない男たちがどれほどいるだろうか
     僕もそんな一般的な男の一人として水木しげるは「理想的な男」として尊敬できる凄い人だと思った

    ***

    著者の世界観

     ちなみに、著者の世界観が垣間見れる文章に以下の様なものがある
     
     「なにしろつきあっているものが、虫の世界とか、自然といったものだから」
     「ぼくの「自習」は山の中のものにむけられていた」
     「人間だけが時計なんかをつくって、自分で自分の首をしめているんだ」
     「人間は元来、鳥、けもの、虫けらと、おなじものなのだ」
     
     アニミズム的な精神と言うのだろうか
     人間を相対的に眺めるこの姿勢は凄いものである

    ***

    近現代の様子を知る

     本書は近現代の様子を知るのにも使える本である
     
     戦前の暮らしぶりや仕事の様子(松下電器の工場や新聞配達の仕事)、戦中の暮らしと軍隊の様子(軍隊のいじめ)、ラバウルの土人、戦後の混沌(なぜか魚屋やったり大家さんをやったり、そこから紙芝居の原作やって、その後やっとマンガの世界に)
     特に戦後の話が面白かった
     昨日まであった会社がないとか、給料をくれないとかは日常茶飯事で、食べていくのに必死だったこと
     
     それでも、著者は山の世界があるから大丈夫となぜか楽観的だったところがやっぱり凄いところである
     生きている世界が本当に違うのだ

     水木しげるは近現代の生き証人でもあるのだ

    ***

    最後に

     そんなこんなで全248ページを2日ほどですぐに読み切ってしまったのであるが、さすがは本屋の店主の推薦である
     見事に元気が出た

     「自分のやりたいようにやる」と言えば聞こえは良いが、これってつまりは現実適応力がないということでもある
     それでも、何とか生き延びることができた
     特に戦中なんて生きていたことが不思議なくらいだ

     そして、戦後の混沌の中でも、唯一できた絵で食べていくという選択
     ホントに良く生きてこれたものである

     もちろん彼の様に生きた者は他にもいたのだろう
     死んでしまった者も多くいるはずだ
     だが、彼は生きている
     生きてあの奇抜な家で今も楽しそうにしているのだ

     なるようになるさ

     だって、水木しげるが生きた時代に比べれば今は相当裕福で楽な時代であることは間違いないのだから
    (当時とは違ったややこしさ。閉塞感はあるけれど)

     そう思うことができる本だった

  • 水木しげるさんの自叙伝。
    戦時中に体験したインドネシアでの経験を通して幸せとはという問いにはとても賛同できる。

  • 水木しげるの自叙伝。内容や文章の言い回しがとても面白い。すごい生命力というか心が強い人だなと思った。この人の苦労からしたら自分なんてまだまだ甘いなって思える。明日のこない明日はない的な前向きになれる本。

  • 水木しげるさんの自伝。
    多くの苦労も淡々と書き綴られていておもしろかった。
    シンプルに生きるということがどういうことか
    考えさせられる一冊。

著者プロフィール

1922年(大正11年)生まれ、鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、ラバウル戦線で左腕を失う。復員後、紙芝居画家を経て貸本漫画を描き始め、1957年『ロケットマン』でデビュー。以後、戦記もの、妖怪ものなど数多くの作品を発表。1965年『テレビくん』で第6回講談社児童漫画賞を受賞。1989年『昭和史』で第13回講談社漫画賞を受賞。1991年紫綬褒章受章、2003年旭日小綬章受章。主な作品に『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』『総員玉砕せよ!』『のんのんばあとオレ』など。2015年11月死去。

「2022年 『水木しげるの大人の塗り絵 あの世紀行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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