王国〈その2〉痛み、失われたものの影、そして魔法 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (151ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359359

感想・レビュー・書評

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  • 雫石とおばあちゃん、雫石と楓、雫石と片岡さん、雫石と真一郎くん、その全ての関係が美しくて読んでいて幸せな気持ちになる。
    雫石がそれぞれのことを、それぞれに愛しているのが分かる。
    一つとして同じ関係も同じ愛情もない。
    人との関係って本当に代わりのないものなんだ。
    そのことが本当には解ってなかったなと反省。

    そして雫石がテレビを見て発見したこと。
    「あんなよどみを、あんなくささを飲み込んでもびくともしないなんて、そしてあの人たちが夜に光るコケ類のようにちゃんとそれぞれの美しさを持って生きることを許されているなんて、世界とはなんと包容力があって、すごい浄化作用を持っているのだろう。」
    「私はただここで小さく輝いて、消えていくだけ。小さな小さな物語を作って。それでいい。」
    この発見に私も許された気がした。
    ここで生きていることを。
    私のことも飲み込んでいるこの世界に。
    そしてその世界で一緒に生きている人(雫石のような)に。

  • あー分かってる方
    繋がってる方なんだなぁ、
    吉本ばななさん(*^^*)

    人生の普遍が物語を通してかかれてます
    深いな〜

  • みんながもっている魔法。
    大切なひとのために、よいことのために
    使いたいな。

  • やっぱりよしもとばななの小説の良さは人と人とが関わる様なのかもしれない
    雫石とその周りの人たちの関係性がとても丁寧で、みんなそれぞれに違う形でお互いを思い合っていて、素敵だった

    TVのくだりがとても印象に残っている
    私も丁寧に物に触れようと思った、すぐに忘れてしまうのかもしれないけど

  • あったかいな。私もそういう繋がりをいろいろな人との間に築きたい。忙しかったり、他人の評価が気になったりと、上の空になっていると、ついつい雑にものごとに接してしまう。ていねいに、ていねいに生きてゆきたいものです。

    あと、商店街の描写がなんか懐かしいかんじがして好き。ちくわぶ食べたい。

  • 出会った占い師・楓と片岡さんは、フィレンツェに行ってしまうし…。おばあちゃんはマルタ島。
    都会で流れるような時間に慣れると共に、大事な何かを忘れて行く…。

    つくずく丁寧さを忘れている自分に気付かされます。雫石みたいな力があるわけじゃないけど、「感」が鈍る感じ、すごくわかります。

    最後のおばあちゃんからの手紙にうるっときました。

  • 夢の中では自分の精神だけが自分だ。
    だから感情は大きくなったら遠慮なく器からあふれ出してしまう。あふれて、いろいろな気持ちが100倍くらいに増幅されている。そして遠い旅をしてきたように、ただただ心が痛くなってくる。人々のストレスを感じ取らなくてはならない位置にあるのも大変だ。ストレスのある人間が発しているのは本当に毒なんだな、と思った。目に見えないからと言ってあなどってはいけないのだ。そして人はみんな、自分がストレスを抱えて歩いているだけで回りの人を害しているという事実を神経質にでなくって、素直に感じられた方がいい。
    人は人に慰められ、力を得ることができる。人間同士だから、誰だって痛いのはつらいから。
    大きな本当の目で見れば自分のしたことは絶対に消せないし、今までしてきた仕事や生活の型は必ず体のまわりに残ってしまうのだから、やり直すということは厳密にとっても難しい。だからできれば何事も慎重にやるべきなのだ。
    人は永遠に生きるけれど、何も感じない。感じないまま、なんとなくさみしい漢字がして、なんとなくものたりなくて退屈で、そして死んだらそのことはなかったことにしてまた術の中に戻っていって永遠に目はさめない、そう思えた。
    人は大変なものや来栖うものや輝いていないもの、うらぶれているもの、生々しいものを見るのを好まないのだ。本当は見たいのだが、みるといろいろと考えてしまうからできれば避けていたいのだ。
    人間がどれほど弱いものかは、私も身にしみて知っているし、誰でも一度くらいはおかしなタイミングのせいで何かそういうふうに楽しみます。
    この光こそが人間なんだ。人間の本当の姿なんだ。どうしてそんなふうに角新できたのかよくわからなかった。きっと心の目で見れば人間の世界はいつだってこんな風だった。真っ暗な宇宙空間にものすごい数の人間の光がただよい、つながりあい、光っている。ここは生死の区別もなく、大地も空もない。時間というものも存在しない。でも光はある。そのくらいに人間の光は強いものなのだ。

  • ・大切なものを離さないよあにぎゅっとつかむのではなくて、お互いが気持ちいいと思えるくらいの力加減
    ・今しかないから出し惜しみなく生きていく
    この2つのようなことが書かれている部分に深く共感し、胸が熱くなりました。
    そして、植物を愛でたくなり、家にある観葉植物に話しかけるようになりました。
    優しい言葉で温かい物語なのに、なぜか言葉が心にくる、、。王国シリーズは私のお気に入りになりました。

  • p35
    大きな、ほんとうの目で見れば自分のしたことは絶対に消せないし、今までしてきた仕事や生活の型は必ず体のまわりに残ってしまうものだから、やりなおすときうことは厳密にはとってもむつかしい。だからでしればなにごとも慎重にやるべきなのだ。自分のまわりにはこれまでしてきたことや失敗したことやごまかしてきたことが、ぼんやりと層を作ってその人の輪郭をぼやけさせたりする。
    (略)
    もちろん過去を消すというのはできないことはないが、それはやってきたときのちょうど百倍くらいの力を使わないと、さらに自分に毎日魔法をかけて自分自身を説得しないとできない。つまり普通の人にはほとんど不可能だということで、できないと言っても過言ではない。

    p51
    「今が今しかないことを感じさせてくれるのが恋愛なんだ」と、そんなあたりまえのことを、私は彼を通じてはじめて知った。

    p73
    もともとはお金がきっかけでそういう体質になり、お金の色がとれなくなってどんどん不思議な植物のように育っていく。(略)
    あんな人たちがたくさんいるのに、どうしてこの世は終わらない?
    そのことにこそ、私は大感動してしまった。(略)
    世界とはなんと包容力があって、すごい浄化作用を持っているのだろう。信頼するに足るではないか、と思ったのだ。

    p87
    なんだっていいんだ、魔法は、何にでも存在する。(略)そこに人との思い出がちゃんと作られていれば、どんなものでも魔法の装置に変わっていくのだ。

    p95
    私のためだけに生きるのなら、私はすごく小さい。でも、私を必要としている人がいるから、私はひとまわり大きな力が出せるし、出したいと思うのだろう。

    p151
    「また来ます。」
    と私は、ついこの間まで知らなかった人たちに挨拶をする。その人たちは笑顔を見せる。そうやって、私という波紋を、宇宙の記録の中にどんどん刻みつけていく。
    さらに漕ぎ出していけ、私よ。新しい日常の中に、この小さな光をもって。

  • ◯好きな人の、生の声にはすごい力があるんだ...と私は愕然としていた。私が思っていたよりもずっと、人の、生の反応だとか、手の感触だとか、表情だとか、声の響きに直接触れることは、すごい力を持っているんだ。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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