自転しながら公転する (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101360638

作品紹介・あらすじ

母の看病のため実家に戻ってきた32歳の都(みやこ)。アウトレットモールのアパレルで契約社員として働きながら、寿司職人の貫一と付き合いはじめるが、彼との結婚は見えない。職場は頼りない店長、上司のセクハラと問題だらけ。母の具合は一進一退。正社員になるべき? 運命の人は他にいる? ぐるぐると思い悩む都がたどりついた答えは――。揺れる心を優しく包み、あたたかな共感で満たす傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 山本文緒さんの作品は『恋愛中毒』以来だと思います。内容は実は覚えていないのですが、自分には合わないと思ってたぶん読まなくなってしまったんだと思います。

    あれから23年もたつのですね。
    山本文緒さんは59歳の若さで亡くなられれてしまったのですね。今まで全然読まなくてごめんなさい。
    惜しいことをしたと思いました。
    ご冥福をお祈りいたします。

    これは、与野都32歳と、羽島貫一30歳の恋愛小説です。
    アウトレットのアパレルの契約社員の都(おみや)は同じアウトレットの回転寿司屋で働く貫一と偶然出会います。貫一は元ヤンキーの中卒で、お父さんの介護施設に毎月6万円の仕送りをしています。
    都は貫一の優しい人柄には惚れていますが、途中で職をも失った貫一と本当に結婚できるのか一生懸命考えます。「この人と結婚してやっていけるのだろうか。子供は産めるのだろうか」etc。
    そしてある決定的な事件で都は貫一と別れてしまいます。

    えーっ、貫一とおみやには(金色夜叉カップルだし)やっぱり幸せになって欲しかったよー、と思いながら読みました。
    プロローグがベトナム人との結婚式のシーンから始まっているので、「えーっ!おみや!ニャン君と結婚するのー?」と思って気が気でなかったです。
    ニャン君というのは貫一の友人でベトナム人ですごくお金持ちで都のことが好きなんです。

    おみやの悩みは他人事じゃなかったです。
    (私はおみやのお母さんで更年期障害に悩む桃枝の方が歳が近いのですが)


    上手くいくかどうかわからない恋愛。
    大変な仕事。
    家族の病気。
    どうやったて人生からひとりきり逃げることはできないのだと思いました。

    貫一とおみやはどうしたらいいか考えました。
    最後はちゃんと考えたのです。
    考えれば、どうにかなるものでもあるのですね。
    よかった。

    • しずくさん
      >プロローグがベトナム人との結婚式のシーンから始まっているので、「えーっ!おみや!ニャン君と結婚するのー?」と思って気が気でなかったです。
      ...
      >プロローグがベトナム人との結婚式のシーンから始まっているので、「えーっ!おみや!ニャン君と結婚するのー?」と思って気が気でなかったです。

      私もそうでした・・・。他の方の感想を読むと、そう思った人が見あたらなかったので私だけ?と少し自信がなくなったのを思い出しました。

      2022/12/17
    • まことさん
      しずくさん♪

      今、しずくさんのレビューを再拝読してきたのですが、やっぱり、プロローグに惑わされたと書かれていらっしゃいますね。
      あれは、皆...
      しずくさん♪

      今、しずくさんのレビューを再拝読してきたのですが、やっぱり、プロローグに惑わされたと書かれていらっしゃいますね。
      あれは、皆さん、そう思いますよね。でも、他の方のレビューで、プロローグとエピローグの仕掛けは途中でわかったと書かれている方もいらして、一体、どうやったらそんなのわかるんだ~!?と思いましたけど。
      2022/12/17
  • 面白かった!!!ので、ラーメン食べて、また食べ終わったら続きを書こうとしていたのに、、、アプリも落としてないのに、、、消えたー(._.)

    その為簡潔に。。ショック。。
    恋愛結婚家族友人災害職場など色んな観点からの物語。共感の感情や、イラつく感情、いろんな感情に。主人公は32歳独身。
    530ページあたりの緊迫、650ページある長編ですが、読みやすいー!ラストも良かった(╹◡╹)
    これは読んで良かった〜文庫本新刊の日に即買いやっと読めた〜作者の初読み★

    • 土瓶さん
      わかります。
      せっかく書いたのがなぜか消えることありますよね~。
      自分も書いておいたのをコピペしようとしたら間違えて消してしまい……。
      わかります。
      せっかく書いたのがなぜか消えることありますよね~。
      自分も書いておいたのをコピペしようとしたら間違えて消してしまい……。
      2022/12/17
    • なんなんさん
      土瓶さん、そーなんですよ(u_u)
      ネットの問題なのかなんなのか、、
      悲しみでした( ; ; )
      作品は最高でした!
      土瓶さん、そーなんですよ(u_u)
      ネットの問題なのかなんなのか、、
      悲しみでした( ; ; )
      作品は最高でした!
      2022/12/17
  • 共感度100%。
    キュンキュン度100%
    「恋愛関係だけが男女の関係じゃないだろ」
    今ここでこのセリフを書くと何のこっちゃ分からないが、「エピローグ」での主人公の父親のこの言葉までがストンと落ちる。
    何故だか一緒にいてしまう人と出会った人は幸せだな。
    もちろん、学歴、収入、仕事、色んなスペックを見て、条件に合った人を探し、結婚するというのも一つの幸せだが、それらが無くても尊敬出来るものを持っているところに何故か惹かれて、ギュッと一緒になれる力ってすごいよな。うんうん、それがあれば「自転しながら公転する」このスパイラル運動にも振り落とされずに生きてゆけそう。
    この小説では主人公自身が語っている部分とその母、その娘の目から見た主人公を語っている部分にも共感出来た。仲の良い母と娘でも、恋愛感や結婚感が異なっていたり、「友達と温泉行ってくる」という娘の言葉を「友達とじゃねーだろ」と分かっていながら、気づかないフリをしている母親だったり。ふふふ、スリルがあって面白い。
    ちなみに私の母は私の娘には父からのラブレターを自慢気に読ませたらしい。私は絶対見たくない。

  • そんなに幸せになろうとしなくていい。
    幸せにならなきゃって思いつめると、ちょっとの不幸が許せなくなる。
    主人公が最後に娘に伝えた言葉。
    「星々の舟」の幸福とは呼べない幸せ、よりも、納得できる重みがありました。

    将来に期待と不安が混じり合う、それなりの年齢の女性達。若さや経験不足から、間違い、遣り損ない、行き違う。
    友人達の家庭や仕事や恋人への 嫉妬や羨望。
    年々、役割が増してくる、仕事や家族。
    自転しているだけでは済まされない。

    主人公の女性が、彼が体験した被災地ボランティアに参加する。そして、そこで自分の弱さや未熟さを再認識する事になる。彼女には、必要な再生だったのだけれど、美談だけにされないところは、さすがだなと思いました。

    三十代から、何か押し寄せてくるけど、何を重点において生きるか、何を求めていくかを認め合えると楽になるだろうなと思いました。

  • 「自転しながら公転する」というタイトルが、この作品にとても合っていると思いました。
    ぐるぐる迷う都の気持ちも分かるし、そよかや絵里の言う結婚観にもなるほどなーと考えさせられました。
    エピローグの衝撃がすごい!
    読後感も良いし、お気に入りの一冊になりました。


  • 八方美人ではっきりせず他人任せで自分のことしか考えられない主人公。うーん、まるで自分を客観的に見ているようだ、、
    恋愛も仕事もうまくいかない30代のリアルな彼女にイライラしながらも、まあ分からんでもないと自分と重ねて黙々と読めた。

    誰かと比べちゃうし重ねちゃうよね、、
    価値観も幸せの在り方も人それぞれなんだしヨソはヨソ!ウチはウチ!の精神で貫いてかないと生きづらくてたまんない。

    長く一緒にいれば行き詰まるけど、いろんな人と会って経験して、変化があれば突破口は見つかるんだって強くたくましく成長していく都が力強くてすきだ!

    人生の「不安」に振り回されてながら幸せを求めながら、周りの目でなく自分の目で見極めて最終的に居心地良い相手と幸せに生きていける道を選べた都。
    人生の教訓をたくさん知れたよ。
    ありがとう都!
    正解も無いし失敗も無い!

    山本文緒さん、人間臭くて30代の私にぶっ刺さって好きな作家さんだ!
    、、だけどもう亡くなられてるって知って、新作が読めないのはとても悲しい。
    過去作もゆっくり探して山本さんの頭の中をたくさん読んでみようと思う。

  • まるで、ノンフィクションのような物語だと思いました。それくらいリアルで、リアルな分迫真に迫るものがあるなと。
    主人公都はアパレルの契約社員で32歳。実家暮らしで母は重度の更年期障害を患っている。ひょんなことから寿司屋でアルバイトをしていた貫一と出会い関係性を深めてゆくも、色々と踏み切るにも踏み切れず。それだけではなく、家庭職場様々な場面での都の日々が2年間綴られている。
    都や友人に対し、おいちょっと傲慢だなと思うところもある。目につくところも時間とともに変わる。でも、自分が都の立場だったらどうだろう。きっと、同じように考えてしまう。なんなら考えたことある。
    劇的ではない。だからこそ胸に残るものがある。全く新しい読書体験でした。

    「明日死んでも悔いがないように、百歳まで生きても大丈夫なように、どっちも頑張らないといけないんだよ!」
    「そんなこと言うけど難しいって。明日死ぬかもしれないと思ったら、ウニだの大トロだのもっと食べちゃえって気になるけど、百歳まで生きちゃうかもしれないなら、そんな値段もコレステロール値も高いもん食べてる場合じゃないって思うわ」
    「その矛盾を受け入れてこその大人だ!」
    「でかい声で言えばいいってもんじゃないってば」

    後半に出てきたこのフレーズ。この言葉こそが答えかなと私は思いました。

  • 重い更年期障害で通院中の母の看護をするために、東京から地元茨城に戻ってきた32歳の都。
    実家近くのアウトレットモールで働いている都は、ヤンキー風寿司職人の2歳年下の貫一と知り合います。

    この本を読む前に恋愛小説と認識していなかったのですが、女性として共感できることが多く、エピローグで書かれていたことと、都と貫一との恋の行方が気になって、どんどん読み進むことができました。

    何がやりたいのか実のところわからず、思いを巡らせ悩む都。
    都だけでなく、母桃枝の目線で書かれている場面もあり、都の高校時代の友人絵里と後輩のさやかが結婚について真剣に議論を交わすところは、最大の山場だったのではないかと思います。
    女性の結婚観なんて三者三様で、恋愛・結婚・夫婦どれもこれも基本形なんてないのだと気づかされ、エピローグを読んでも、そのことを痛感しました。

    こだわりが人を狭くするという言葉が心に突き刺さります。
    すべての人を平等に優しく包んでくれるような傑作長編小説です。

  • 共感することが多く、楽しい作品でした。
    主人公が自身と同年代ということもあってか、感情移入して「ああ…」「そうなんだよね」と思うことばかりです。
    私は主人公のパートナー側の視点ですが…何かもどかしい、普段あまり意識していない言動を自身もやっていただろうなと。
    作品に出てくる言葉も、とても心を掴まれました。

    若い方にはまだ共感しにくいかもですが、性別問わずに楽しめる作品です。
    また読み直したいです。

  • 山本文緒さんは初読みの作家さんだった。
    『自転しながら公転する』

    主人公の与野都は東京のアパレルブランドに正社員勤務していたが、母の桃枝が重度の更年期障害を患い茨城県牛久市の実家に戻る。そこでアウトレットモールの契約社員として働き始め、寿司職人の羽島貫一と付き合い始める。
    32歳で結婚を意識する年頃だが、職場は問題続き、親の介護問題もある。おまけに貫一は中卒でアルバイトで介護施設に入る父親の負担まであると言う。
    将来が見えない・・・

    物語は主に都目線で進むが、特に二、三十代の女性が共感しそうな結婚適齢期特有の傲慢さや自己嫌悪、妬みに僻みがありのままに描かれていた。都が貫一の人物としての魅力を理解しながらも、打算的に脳が思考を繰り返す様は正に「自転しながら公転する」だなぁと思った。

    私は、貫一のように無骨だけど心根の温かい人がどうにも憎めない。
    ボランティアで行った広島で、都を病院まで送ってくれた鳶の青年も同じにおいがする。
    このタイプ特有の不器用さや危なかしさは、過去に付き合った恋人と重なる部分もあったりで、妙に感情移入してしまった。

    また、都の友人の絵里とそよかが、都の将来を真剣に考えて議論するシーンも印象的だった。同調が美徳のような女性同士の会話に、こんな風に熱くなれる友人関係ってそれだけで微笑ましくて羨ましい。

    更に、プロローグとエピローグが本作を愉しむために出来ているのがミソ。

    エピローグでのひとコマ・・・
    「恋愛関係だけが男女の関係じゃないだろ」
    「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ」
    うん。長い歳月を経て、人って変わるもんだ。

    小綺麗に纏めるのではなく、剥き出しの感情をそのまま綴られた作風は何とも潔くて、読後はホッとして爽やかな気持ちになった。
    結婚に限らず、将来に悩んでもやもやと自転している時にこそ手にして欲しい一冊。

    最後に・・・
    藤田香織さんの解説が心に響いた。
    ご逝去された山本美緒さんの小説と彼女が書き残した日記も、読んでいきたいと思う。

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著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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