奪われる日本の森: 外資が水資源を狙っている (新潮文庫 ひ 35-1)
- 新潮社 (2012年7月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101365619
感想・レビュー・書評
-
近年外国人による日本の土地買収が活発化しているとのこと。
かつては日本人が海外の不動産や美術品を大量に買い漁る、というバブリーな時代もあったが、本書に書かれている内容によると、それとはチョット事情が違うらしい。
「土地=水資源」という事なのだ。
日本は海外に比べ土地の所有権が強いらしい。よく高速道路などの用地買収で国と住民が揉めるという話を聞くが、土地の最終処分権が所有者にあるという法律が理由とのこと。ちなみに海外では国が強制的に収容できる法律となっているようだ。
また日本では、地下水脈の所有権に関する法律も海外とは異なっているらしい。基本的には土地の所有者が、自由に地下水を汲み上げる事が出来るとのこと。
それらの理由から、世界的にも評価の良い日本の軟水が、外資系企業に買い占められる危険性があるという事なのだ。
さらに本書の後半では、日本と海外の文明や宗教観の違いなど、幅広い視野において考察が行われている。
いずれにしても先月の水道料金の請求書が、聞いたこともない外国の企業から届くという事態にならないよう、注意深く見守って行きたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何ヶ月か前に購入したもの。生活が落ち着いてきたので一気に読み切りました。
二部構成で、二人の著者がそれぞれ別の観点から現在の日本における森林買収などの問題を、特に水資源に焦点を当てつつ自説を述べています。
個人的な印象だと、前半が主に経済寄りの国土安全保障、後半は歴史的・地理学的日本の姿と反市場原理の視点であるように感じました。
感想としては、前半の平野さんが書かれた章が興味深く感じました。
日本における「土地を所有すること」の重みと、法整備や関連制度の不備が繰り返し指摘されています。
公共性と私権の対立など調整の難しい問題を抱合していることも再確認できました。
ただし、実態が不透明なせいもあり、憶測が含まれていることもまた真実だと思います。
自分の中では、備えあれば憂いなし、の体現だと捉えました。
後半の安田さんが記した章は、未来の日本の姿としては非常に魅力的な側面ですが現実からは乖離しているあくまで理想であると思います。
なんとなく日本の姿が美化され過ぎ感が否めない感じがしました。
全体通して勉強になりました。他の本も読みながら知識を深めていきたいです。