マボロシの鳥 (新潮文庫 お 75-2)

著者 :
  • 新潮社
2.77
  • (4)
  • (19)
  • (57)
  • (29)
  • (13)
本棚登録 : 363
感想 : 46
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101383521

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 出版年が前後してしまいましたが、「文明の子」に続き2冊目の太田光さんの本、読了しました。

    紡がれる言葉が、きれいだと思いました。
    9つのお話。争うことの空虚な無意味さのようなものを、全編から感じました。
    「荊の姫」、「タイムカプセル」。静かな物語。痛みを伴いますが、優しさを感じます。
    「人類諸君!」では、転調して一気に落語の語り口調のような文体になり、はっちゃけていますね。笑
    一転、「ネズミ」は暗く、重い雰囲気です。
    そして「魔女」、表題の「マボロシの鳥」、「冬の人形」、「奇跡の雪」と心に沁みる寂しさを感じ、涙が出てきました。
    最後に「地球発……」で静かに、色鮮やかに締めくくられています。

    読了後、現実に戻り、「今晩は何を作ろうかな?」と変わらない日常を穏やかに感じました。

  • お笑いコンビ、爆笑問題の太田光、初の小説集。収録されている作品それぞれに垣間見られる、人間の愚かしさと愛しさを描き、世界の心理に迫っている。太田光が小説を書くと、こうなるのか、と改めて実感した。

  • 文庫再読

  • 読んでいるのに、読み聞かせてもらっているような本。同時に、筆者が本が好きなことが分かる本。

  • 試行錯誤なのか、特に表題作が上滑りしている感があっていまいち。収録短編9本、面白いといまいちが4:5くらい。いちばんいいと思ったのは「ネズミ」で、これだけでこの本一冊買ったようなものかなと。

  • 昔から雑誌で太田さんの連載を読んでいたので、文章は上手いだろうと思ってましたが、小説としての期待はしていませんでした。しかし、ここまで上手いとは。
    内容は単純なのに人間の醜さや皮肉をこれでもかと描き、最後にほんの少しの「救い」をたす。この匙加減が絶妙でした。ストーリーの掲載順も良かったです。
    所々に有名作家の作品が顔を出しますが、私が思い浮かんだ一番近いのは星新一先生の『ボッコちゃん』ですね。

  • 爆笑問題の太田光による9つの短編を集めた初めての小説になります。小説の世界で短編がうまい人は作家として大成するといわれていますが、その片鱗を見せるものでした。

    この本も遅ればせながら読んでみました。しかし、太田光と僕はまったく読書の傾向が違うようで、よくテレビでは太田光が影響を受けた作家が列記されておりますが。僕はそのほとんどを読んでいません。でも、書かれている小説は全て短編小説なので、すんなりと読むことができました。よく小説の世界では短編を書ける作家はうまいといわれていますが、ものすごく将来性のあるデキだと思います。

    特に好きだったのが『奇跡の雪』という短編で、知的障害を持つ女の子に爆弾をくくりつけて自爆テロをさせるというもので、よくこの内容の小説が発表できたもんだなと最初は思いました。でも、遠く離れた世界では、こういうことが現実であるわけで、作者である太田光はあの過酷な芸能の仕事をやりながら、こういうテーマを選んで一編の小説を書いたもんだなと。正直舌を巻きました。

    他にも落語調の小説があったり、宮沢賢治へのオマージュを連想させるものなど、なかなか実験的な作風で、本人が漫才か執筆かで迷うときが来るのかもしれませんが、個人的にはもう少し彼の作品の続きを見てみたいなと思っています。

著者プロフィール

一九六五年埼玉県生まれ。八八年に田中裕二と「爆笑問題」を結成。二〇一〇年初めての小説『マボロシの鳥』を上梓。そのほかの著書に『違和感』『芸人人語』『笑って人類!』などがある。

「2023年 『文明の子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

太田光の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×