涙 下巻 新潮文庫 の 9-16

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 99
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  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101425269

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに泣いた本。

    自分の生まれる前の日本の様子に驚きながら、登場人物の心境に頷いたりしながら、結末が早く知りたくてぐいぐいと引き込まれるように読みました。

    萄子が真実を求める気持ちに共感しつつも人はあれほど強く変わっていけるのだろうか、と妙に感心したりもしました。

    事件そのものは、かなり惨いものだったけど最後は本当に切なくて色々なことを考えさせられました。

    それにしても、のぶ子は…。

  • 主人公は刑事である婚約者と東京オリンピック後に式を挙げる予定だったが、オリンピック直前に電話で自分のことは忘れるよう言われ姿をくらましてしまう。混乱する主人公に彼が殺人事件の容疑者であるということも知らされる。しかも被害者は婚約者とコンビを組んでいた老刑事の娘だった。
    主人公は婚約者の潔白を信じながら、彼を自力で探し出すことを決意。細い糸をたどりながら川崎、熱海、焼津、筑豊と彼を追うがすんでのところで会えず仕舞いでいた。
    一方、その後の捜査で彼は嵌められただけということがわかる。しかし黒幕を裁くためには何としても彼の証言が必要。そのことを知った主人公はさらに彼の足取りを辿るが、ある偶然から彼の居場所をつかむ。向かったのはアメリカ占領下の宮古島。そこで彼と再会し事の真相を知るのだが、それはあまりにも理不尽で耐えがたいものだった。

    追っては逃げられ追っては逃げられの追走劇。向かったあちこちで親切な人に出会ったり、たまたま情報を持っている人に出会ったりなど、人探しするのにこんなに簡単にいくかなとは思うものの、婚約者を追う執念は漂ってくる。
    主人公もそうだが、娘を殺された老刑事側から事件に迫っていくのだが、娘の知らなかった一面を目の当たりにした親の心情や情けなさなど風采の上がらない刑事であるが故に迫るものがある。
    そして今までの全ては最後の章に向けての助走のような感じで、それが最後の章に活きてくる。
    この作家さんは痛みや悲しみ、背負ったものによる苦悩を描くのがうまい。

  • 実際起り得ない話だけど、読んでて止まれなかった。

  • R様オススメ本下巻
    まあこんなひどい悪党がいたものだと、今更ながらにひどい事件だったと思わされる。

    まだ沖縄へ行くのにパスポートがいる時代のお話。
    下巻は一気に読ませる内容でした。
    すごく悲しいお話なのに、最後はじんわりときました。

  • うちにあった本を再読。でも内容をすっかり忘れていたので、引き込まれて読みました。上下巻のけっこうなボリュームの長編。
    東京オリンピックの年、結婚を控えていた萄子の前から「もう会えない」という電話一本で突然姿を消した刑事の奥田。
    何があったのか、奥田はどこにいったのか、失意の中で奥田を追う萄子。川崎、熱海、焼津、田川。あちこちであと少しというところで会えない。
    そして最後にたどり着くのが宮古島。驚愕の真実が明かされる。
    萄子の気持ちが丁寧に描かれていて、引き込まれる。
    結末はつらい。どうしようもなかったのか、奥田の正義感が招いたことなのか、萄子も奥田も悪くないのに。刑事の韮山も印象的。萄子も奥田も韮山も被害者で犠牲者だ。やるせない。

  • 陶子と一緒に旅をしてる気持ちで一気に読みました。内容も描写も良かったです。また、他の作品も読んでみたくなりました。

  • 萄子よ、いや勝よ、日本中いろんなとこ行くなあと思いましたが、きっと乃南さんは、この当時の色んな日本を描きたかった、見せたかったのかな。
    まさに萄子と同世代の人なら懐かしさを感じるだろうし、知らない人なら賑わっていた熱海とか、パスポートが必要だった沖縄に旅行するとこんな感じだったんだということがわかるし。
    この当時の沖縄のことが書かれた本とか読みたくなりました。

    勝の話でなぜ姿を消したのかはわかったど、やっぱり誠意がなかったよなあ、という気持ちは拭えません。
    でも別れのシーンは切なくなりました。

    ここに出てくる中で誰の役をやりたいかといえば、断然淳です。性別違うけど。一番おいしい。

  • ある日、突然愛する人と会えなくなる切なさ  恋人・親子 そんな事はあるはずがないと思っているから、唐突な別れに誰もが戸惑うのだろう。だからこそ、今の日常をだいじにせねば、と思う。次回東京オリンピックが騒がれている中、半世紀前の東京オリンピックを背景に事件は進むが、どちらの時代にも思いがある私が感慨深いものがあった

  • ハイスピードで読み終えました。
    辛い辛い毎日。ずーっと辛いばっかりで苦しいストーリーです。
    昔、まだ成人していない頃、好きだった人の住んでいるところにはるばる訪ねていったらすでに婚約者と一緒に暮らしてたという場面を思い出して本格的に息苦しくなりました。
    また、石垣で本格的な台風にあい、1日延泊してコテージに隔離された事、翌朝に軽トラックが仰向けになっていた事など思い出しました。
    この物語は結局、想像できないほど辛くても生きるという事を訴えたいのでしょうか。
    でも最初から最後まで辛いばっかりなんて、それじゃああんまりなので、なんとか楽しくなる様に頑張ろうと思います。

  • 一本筋の通った主人公と婚約者。
    昭和の時代を感じます。
    人生ハプニングがあっても、自分の芯をきちんと持っていれば、ふと気がづいたとき助けてくれる人がそばにいてくれて、それなりに幸せに暮らしていいける。
    切ないけれど、希望も感じるお話でした。
    奥田の最後は悲しかったけど、それまでは幸せだったと思いたい。

著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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