水の翼 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101440187

感想・レビュー・書評

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  • 私の能力では最後の部分、少し理解しかねるところがありました。

  • 主人公の紗江は、親子ほど年の違う天才版画家、柚木の若妻である。二人は仙台のはずれに居を構え、世間の喧噪と隔たれた生活を送っていた。 ある時、柚木のファンという東吾という美青年が訪れる。柚木は天才的芸術家らしく気難しい。当然、この青年の訪問も喜んで受け入れない。しかし、東吾は弟子入りを乞い、ついには柚木から承諾を得る。東吾は内弟子ではないため夕方には自宅に帰るものの、昼間3人の生活が始まった。 その生活の中で、紗江は夫を愛しながらも、若い東吾に心惹かれていく自分に気づく。どこか近寄りがたい雰囲気をもつ東吾との距離を縮めようとする自分の情動に葛藤を覚え、悩み苦しむ。 そのような生活の中、柚木に大仕事が舞い込む。東吾は柚木の傍らにいて、彼の技に心奪われ、この芸術にのめりこむ。この大仕事は、柚木の命を削り取り、ついには完成はるか前にして彼の命は尽きる。師匠の志を受け継いだ東吾は、柚木の生前以上にこの仕事に入り込み、埋没していく。と同時に紗江との二人の生活が始まった。これから先は、本書を読んでほしい。 小説が、判る、判らないというような判断をする類の文書でないことは理解している。しかし、ここまでわからない文書も珍しい。ただただ、困惑と混乱が残る小説だった。

  • うーん。
    共感は全くできなかった。

    美を愛し、才能を愛するっていう男女関係もあるのかなっと。

    1970年代にまだ生まれていなかったのもあって、学生運動などについてピントこない点もあた。

    ただ、結末はびっくりしました。
    驚きました。。。

  • 純文学作品であり、そこにオリジナルの詩や独特の政治概念を詰め込んだ作品。
    堅苦しさをあまり感じさせず、展開も申し分ないほど自然的で読みやすい作品でした。
    ただ、まさかあのような結末になるとは思ってもいませんでした。あえてここでは書きません。是非、読んで味わって頂きたいですね。

  • 東吾の匂い
     木版の匂い
     インクの匂い
     本の匂い
     煙草の匂い
    匂いの中で何故これほど惹かれ自尊心すら見失って
    やみくもに身を投げ出してしまいそうになるのか。
    底に渦巻くのは生と死、愛と芸術がとりまく。
    小池小説の最高峰といってもいいかもしれない。

    《文中より》
    ふと、紗江は自分今の自分が柚木の側ではない、明らか
    に東吾の側に東吾の世界にいると感じた。
    紗江は柚木に「いとおしかった。いとおしくてならず、
    立ち止まった石段の途中で紗江は胸の熱さに抗しきれな
    くなって、思わず涙ぐんでしまうことすらあった。」
    紗江は柚木と死以外の形で別れることはなかっただろう
    断じてそれ以外の別れ方は考えられない。

  • 文学作品として,ここまで手が込んでいるものを見たことがない。
    三島由紀夫の死になぞらえて,
    一人の芸術家が死ぬ。

    その過程に,詩人 壬生幸作 の詩がある。
    「水には翼があるのだ,ときみは言ふ
     青い地平の遥か彼方で
     空の青
     海の青
     月の青とが解け合ひ
     混ざり合ひ,滲み合ふためにこそ
     水は今こそ翼を持ち,羽ばたいてゆかねばならぬのだ,と
     在るものを壊し
     無と共に受け入れ
     まことの美が誕生する瞬間を静かに待つ
     。。。。


    文学作品の中に,文学作品を入れる手法はいろいろある。

    木口木版画の作家とその弟子が登場する。

    いろいろな脇役を配置している。
    誰が,最後に亡くなるのか。

    全く予断を許さない展開。

    芸術家が隠れた意図を持っていることは読めたが,
    一世一代の嘘に騙され,最後の展開を読めなかった。

    推理小説としてすごい。

  • 仙台の静かな家で創作の世界に浸る木口木版画家の柚木宗一郎と紗江。紗江は年の離れた柚木の、美を生み出す神の手を愛し、23歳で彼の妻となったのだ。そこへある日から柚木を崇拝する美しく寡黙な青年、東吾が弟子として加わった・・・。
    舞台は1970年代、学園闘争、仙台、という作者の得意の設定。話の展開自体は面白かったのだが、東吾が話す“美”論はワケが分からなかったし、そこに絡んだ結末はまったく納得できず。東吾に共感できなければ最後の最後で余韻も何もなくなる気がする。

  • 版画家の柚木に弟子入りした東吾に柚木の妻・紗江は強く惹かれていき・・・
    この人には、こうであって欲しいなってトコに、居てくれるのが心地良い。
    出来上がった版画はもちろん、桜や藤などの四季折々の自然の描写も美しく、印象的だった。

  • 主人公に共感でき、世界に引き込まれる物語だった。
    恋、芸術、時代がうまく調和していて、この物語こそハッピーエンドで終わってほしいと思ったし、美しい少年を強くイメージした。

    その後の続きがあるなら是非読みたい。

    途中から読み始める時、どこまで読んだっけって前後を読み返す事が多いがなぜかこの本はどこまで読んだかが明確で少し時間が空いても展開を覚えている、脳みそにストーリーが直結して記憶している感じ、そのくらいインパクトがあった。

  • すごい、すごい本。それしか言えない。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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