- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101802312
作品紹介・あらすじ
さよならだけが、人生だ。本の中の世界を破壊する侵蝕者との戦いのため転生した井伏鱒二。原因不明の不調に悩まされる彼は、侵蝕された自著『かるさん屋敷』への潜書に向かうが、物語は井伏の心の傷を抉る世界に変容していた。その中で井伏は、作家として大成することのなかった親友の想いがこの事態を引き起こしたのではないかという悲しい疑念を抱くが……「文豪とアルケミスト」公式ノベライズ第三弾。
感想・レビュー・書評
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今までの文アルノベライズで一番好き!
太宰と井伏先生の関係が非常に尊いです。太宰が飄々としてる、と思いきや切れ味するどくてとても良い味出してました。あと登場した作中キャラも素敵でした。平知章。
井伏先生と言えば『山椒魚』と『黒い雨』しか知らなかった人間ですが、『かるさん屋敷』と『さざなみ軍記』めっちゃ読みたくなったのでこれは文豪コラボ作品として大成功ではないですかね…。
今後劇場版とかドラマCDとかでやって欲しい完成度。
仁木英之は初めて読んだけど文章読みやすいし話の展開も好きだなぁ。『僕僕先生』を積んでるはずなのでちゃんと読みたいと思います。 -
悪くはないのだが、展開としては退屈だなと感じてしまった。井伏先生について基本的な知識を仕入れておかないと話が分かりづらいかも。太宰先生との会話が多めなので、二人が好きな人はもっと楽しめるのでは。
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面白かったし読みやすかったし、回を増す毎にクオリティが上がってる文アルノベライズ第三弾。
前後してゲーム本編では覚醒の指輪の実装があり、舞台化の第五弾があった訳ですが、今までは作品を掘り、作家性を掘り、作家同士の関係性を掘ってたのが、転生したこと自体や侵食者との対峙姿勢みたいなものを掘り出したので、五周年を迎えて新たな局面に入ったんだな……と感慨を覚えています。
今回も前回の小泉八雲と類似して(怪談の各話が次々と現れるのと同じ様に)、井伏鱒二・横光利一・佐藤春夫・太宰治の四人で井伏鱒二の著作(かるさん屋敷を始めとして、さざなみ軍記や厄除け詩集)を辿るうちに井伏鱒二の心の深いところへ降りていくというような構成で、場面の移り変わりが早いので読みやすいんですけど、一方前回ほどアクションが重視されておらず、その分、場所や心理の描写が多いな~という感じでした。
今回、めちゃくちゃ評価したいポイントとしては、太宰治の性格を表す「東北の御曹司らしい強い含羞と謙虚さ」という一文で、か、完璧すぎるな~!?!?!?!!という衝撃を太宰治ファンならずも受けたんですが、他のコラボ(アニメや舞台)では子どもっぽさや自信過剰なところやその癖自信がなく、芥川先生のファンであるところばかりがピックアップされ、それもまた一面ではあり、キャラ付けとしてはわかりやすいものの、あまり頭のよさみたいなのを感じることはなかったんですけど、今回は無邪気ささえも計算された頭のよい繊細で傲慢な育ちのよい文学青年みたいな感じで、良!良!良~!!!!って感じで、本当にこの為だけにも読む価値がある、それほどの太宰治でした。
ただ、一方で、シーンの欠落を感じる部分がちょいちょいあると言うか、もしかしたら途中で削ってるのかも知れないんですけど、前後の文章で違和感を覚えることが多々あり、例えば、前のシーンで横光が戦っていたのに次のシーンで怪我の手当てを受けているのが佐藤だったり、別の人物と話していた太宰が井伏の会話に急に合流してきたりという、ちょっとしたことなんだけど、少しストレスを感じる描写があるので、そこだけはどうして~!?という感想です。 -
ソシャゲ「文アル」のノベライズ第三弾。あの仁木先生が書かれると言うことで発売前から期待しかありませんでしたが、素晴らしいノベライズに仕上げて下さいました。
作家、井伏鱒二への愛がつまった一冊で、井伏の生い立ちの知識を仕入れてから読んだ方がより楽しめるんじゃないかと思います(ざっくりの知識はWikipediaなんかでも仕入れられるのでそこらへん先に読んでみてから…)。
温厚な人物が抱える矜持みたいなものが行間から迸る、味わい深い一冊でした。