- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102007112
感想・レビュー・書評
-
私たちは「あの出来事」を、どう思い出すべきなのか。
無機質を気取って、他者の過ちだと斬って捨てるのか、理解しようと努め、苦しみ続けるのか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
よい
-
私にとって素晴らしい作品とは「分からない/判断がつかない部分がある」点で共通していると思う。
登場人物の発言や行動にうまくは飲み込みきれない何かがある。だから二回、三回と読み返し、演劇や映画といった別の手法による表現に触れて、あらためて考える。
そういった「繰り返し」に耐える力のある物語が、時の審判の中で古典になっていくのだと思う。
きっと、この作品も古典になるのだろう。普遍性のある物語である。
一方で、ある世代の生々しさや戸惑いが含まれていることが私にも伝わってくる。発刊当初はもっとリアルな感覚として共有されていたのだろう、後ろめたさのようなもの。
「朗読者」は、確か高校生の時に途中で読むのを止めてしまったのだった。その時の気持ちはもう思い出せないが、読めて良かった。 -
2016.08.29読了。
今年5冊目。
岩田書店一万円選書で選んでいただいたもの。
主人公とハンナの恋愛からはじまった話。
別れから何年後思わぬ形でハンナと再会する。
強制収容所について収容されていた者ではなく、監視していた者の立場を描いている。
戦犯としてハンナは裁かれることになるが、それは本当に正しい裁きだったのか。
ハンナもまた犠牲者であったのではないかと思う。
2人のその後の関係は朗読を通して穏やかで良好なように思えたけど、彼は最後までハンナのことを理解できていなかったし、何とも切ないストーリーのように思った。
しばらくしたらもう一度読みたいと思う。 -
母親ほど年の離れた女性との恋。
数年後に知らされた彼女の過去
そして償いきれない罪
時代に翻弄された人びと
必要以上の罪を認めてまで彼女が
守りたかった秘密。
繊細で力強く包み込むようにあたたかい作品。 -
戦後70年の年にこの本を読んで良かった。ずいぶん前に手に入れていたが、なんとなく勇気が出ず。でもきっと今がその時だったのだと思う。
二人の恋路についてはある程度予想通りだったし、心理描写もわかりやすく、青春小説といった感じ。
でも戦争小説として読むと景色がガラッと変わる。
青年になった主人公の取った行動や悲しい結末も、引き返せなくなった戦争と未だ尾をひく様々な犠牲に重なる。
答えの出ない問題を抱えたままで、読み終わってずいぶん経つのにまだすっきりしない。 -
強く印象に残る数々の場面の行間に、静かに途切れることなく考え続けた、主人公の人生への誠実さに感動した
-
昔読んでとても気に入っている本です。
-
でもわたしは大人たちに対しても、他人がよいと思うことを自分自身がよいと思うことより上位に置くべき理由は全く認めないね
-
なんと感想を書いていいのか、まったく途方にくれる本に出会った。
母親ほどの年齢の女性と恋に落ちた少年。ある日女性は少年の前から姿を消す。数年後、法学生になった少年は法廷で戦犯の被告人となった女性と再会する。そこで彼女が姿を消した理由を知り、本の朗読を吹き込んだカセットテープを刑務所に送り続ける。十数年後、出所前日に少年は初めて彼女に会いにゆく。年老いた彼女は・・・。
複数のテーマがあり、読む人によって解釈が違うようだ。少年の父(哲学者)の言葉が少年を導く。ラストはショッキングで切ない。