城 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (630ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102071021

感想・レビュー・書評

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  • ヨーロッパのどこかの国。
    雪深い村にある城に測量士"K"が呼ばれる。
    村に着いたが泊まる場所がない。城から行先の連絡もない。しょうがないので酒場に泊めてもらう。突然、執事の息子に起こされ、ここにいる理由を詰め寄られる。城に確認すると、どうやら測量士が呼ばれたことは確かなことのようだ。しかし酒場では厄介者。おまけに翌朝から正体不明のふたりの男が城から派遣され助手としてつくことに。
    とにかく城に行くため村人たちから情報を聞き出し、城の役人のみが泊まる宿屋・縉紳館まで押しかける。でも誰にも会えない。しかし、なぜか宿の酒場で働く娘・フリーダと同棲することに。この娘は城の役人、労働長官クラムの愛人だったという噂。

    村長を訪ねる。測量士がよばれた経緯の不明確さと役所の書類の行き違いにより村と城との意思疎通がうまくいかず、測量士の立場はあやふやで曖昧なものであることが告げられる。村長はいう。行き場所がないなら学校の小使として雇おう。なぜかKとフリーダと助手達は小学校に住み込むことになる。Kの苦難は続く。助手はフリーダを誘惑しているように思えるし、城に行くためのコネと見込んだ使者・バルナバスは力がないことがわかる。その後も村八分にされたバルナバス家族の身の上話を聞いたり、なぜか縉紳館に呼ばれたり、と堂々巡りは続き、600ページを超える物語は終わる。


    この小説は一体なんだろう?わからないことが多過ぎる。かといってつまらないわけではない。
    そもそもKは仕事があるのか。何のために城に呼ばれたのか。そこに辿り着くために何をすればいいのか。状況を打開するためにどうすればいいのか。全てが謎で分からない。だからKは城と役人に交渉しようと悪戦苦闘する。その過程と回り道が延々と描かれる。それに村人からK含め恐ろしくみな饒舌。

    村人はそれぞれ異なる城の仕組みと村の掟を説明する。それは目に見えぬ慣習があり、明示されない細かな法と過去から積み重ねてきた規律がある。よそ者には不可解にしか映らない規則があり、この規則体系は絶対の服従を要求する。城の掟の体系といってもいい。Kはこの体系を理解しようと試みる。城と交渉し、そのため窓口を探し、手続きを踏み、力がありそうな人を説得し、測量士として召しかかえてもらうために。その過程はまるで仕事そのものがKの存在を村内で保障するだけでなく、彼自身のアイデンティティーであるかのようだ。

    Kが合理的に行動すればするほど、不合理な慣習と掟で動く城から遠ざかる。排除されるといってもいい。いくら努力しても辿り着けない。合理ゆえに排除される。カフカの文学が「不条理」といわれる所以はここにあるだろう。
    仕事という機能から排除された人間は、何を拠り所に生きていけばいいのか。筋道を立てた考えと行動が、自己の存在を脅かすのなら、あとは何を為せばいいのか。
    不条理と実存のカフカ文学は今後も読まれ続けることは間違いない。


  • なにが言いたいんや.....カフカ......回りくどい...どこに到着したんや...
    そんなふうに思うけれど、
    異邦人のKがこの街に到着したのがこの物語の始まりで、到着はおわりじゃなくはじまりなのか。
    自己疎外されたダス・マン、責任をもつ自由をうばわれた職業人間、自己の本来性から落してしまっている、
    ほんまのほんまに生きてるってのんは、どこからくるん

  • 本作「城」は海辺のカフカでも主人公のカフカ少年が挙げていた作品の一つ。カフカは「変身」しか読んだことがなかったので一つ長編にも挑戦してみようと思って読んだのが本作。前回の読書記録からだいぶ時間が経ってしまったのはもちろん怠惰故ではあるがこの作品自体の難解さも少なからず手伝った。
    主人公のKは測量士という身分を与えられて、その職務を全うせんと城に近づく。近づけども近づけどもそこにあるはずの城は遠のくばかり。保険局勤務だったというカフカ自身も所属している官僚組織の無駄な手続きの多さと手続きが自己目的化している実態に嫌気がさしていたのだろう。前半はカフカの毎日の仕事への愚痴を小説という形を通して、聞かされているみたいで面白く読むことができた。
    結局、Kは城の中枢までたどり着くことができず、縉紳館でのやりとりで作品は終わる。未完の大作ということでもしこの続きがあるなら、城の頂点にはどこまで回りくどい人間がいるのか非常に気になるところ。案外、適当な高田純次みたいなやつがトップだったりしてね。

  • ひどく長く感じる長編小説だった。主人公Kの不遇さに精神を削られながら最後まで読むが、終わりはもちろん未完であるのですっきりすることなく物語は終わる。しかしそれがこの物語のいい点だ。カフカは世の不条理を書くのがとても上手いと思う。本文中もなんどもげんなりさせられた。この物語が未完であることもカフカは意図していなかっただろうが、人生が完結するものではないものということが表現されているようでいい終わり方だと思った。

  • 城の役人から呼ばれ、よその町からやってきた測量師。
    なかなか城に入れず、勝手が違う村で珍道中やってたら終わった。。。
    未完の作品だったとは、、、結末が知りたい!!

  • 測量士として伯爵に召致されたKの視点で物語が描かれる。雪深いその村は中心地に城が建っており伯爵が統治している。測量士として到着を知らせて仕事を始めたいKだが、一向に仕事がもらえないどころか召致自体もミスだという。文化も思想も違う社会の中で孤立する虚しさを感じた。自分の言うこと成すことに眼くじらを立てられ不満を募らせる気持ちが分かる。郷に入れば郷に従えとは言うが、お互いへの興味や理解が乏しく歩み寄りのないことが最大の問題だ。味方も少なく、思い通りに事が運ばないKは最終的に希望も気力も失う。未完に終わっている(没後の出版)ため続きが気になるところだが、カフカの小説なのだからハッピーエンドはないだろう。翌日到着予定の部下がまったく到着しないまま物語が終了してしまったことが少し気になる。また故郷の妻子をおいて出稼ぎにきて、簡単に現地妻を作る点がすごい。

  • あらかじめ認識はあったけれど、それにしても長い。改行もしないで一章全編を通じて一人の人物が思い思いの主義主張や思いの丈を語り尽くす、みたいなのが作品全体にわたって繰り返されているので、いい加減集中力が切れる。その人物にとっていかにも大切な主張なんだろうけれど、受け手の方にとってみれば、「悪いけれど、かいつまんでお願い」、って言いたくなる。それぞれの役割を通じて、さして重要でもないのに狭い了見に囚われている人物たちを皮肉っているんだろうけれど、ただ根性で読破した私も皮肉られている気がしてならない。

  • 私には難しい。でも職業に縛られた人間が、どう生きなければならないのかを色んな登場人物から窺い知ることかでき、興味深く面白かった。
    助手たちのあの変わり身の早さが、身分のもつ力を顕著に示している。

  • カフカ未完の長編小説。
    寒村に派遣された測量士Kを取り巻く、村人・城の人々のごたごた。平坦な話が延々と続き、出てくる人物の言い分(それは会話とは言えない)は全てがまわりくどいうえ、情報が曖昧で掴み所の無い話。そうこうしている間に物語はふつりと終わる。
    とある社会に属する事は、極端な言い方をしてしまうとその社会に服従する事を意味する。この物語で部外者とされるKは、いち個人としての存在を許されない。
    Kが村から立ち去らない訳もここに関係する。
    城の組織内でも、個人としての良心の介入さえ許されない。
    無意識のうちの隷属。個人としての存在への渇望。
    その先に見えるものは何か....。
    非常にしんどい(後書き含)630頁であった。

  • 率直な感想を言わせてもらいますと、謎ばかりで何一つ解決しない物語だと感じました。
    主人公Kは測量士のはずなのに測量士としての仕事をしません。また、村人達の話は皆矛盾しています。この本は読者の数だけ解釈の仕方があると思います。
    また「理不尽」によってこの本は成り立っているとも思いました。主人公Kは異邦人というだけで、差別を受け、理不尽な目に多くあわされます。
    何度も読み返してより深く理解したいです。また、この物語の続きがあったら是非読みたいな、と思いました。

著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

フランツ・カフカの作品

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