- Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102076118
作品紹介・あらすじ
最初にぼくらが寝たのは、チャーリー・パーカーを聴いたシスコの暑い夜だった。ぼくは美しい黒人マードゥに夢中だ。それから二カ月、ぼくらは毎晩、酒やドラッグやセックスに酩酊していた。終りなき祝祭のように。やがて、ぼくらは疲弊し、傷つけあい、別れることだろう。何もやり遂げないうちに。だから、ぼくはタイプを叩き始めた。この小説のために。ビートニクの痙攣的な愛を描く長編。
感想・レビュー・書評
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1950年代のサンフランシスコを舞台にしたビートニク小説。マリファナと酒とセックス漬けの日々といった物語だ。作者のケルアックはビートジェネレーションを代表する一人だが、小説は作者自身とおぼしき主人公の1人称語りで展開してゆく。作中には御大アレン・ギンズバーグらしき人物も登場するし、セロニアス・モンクもライヴだ。そんな彼らには、そもそも基本的に私有の観念は希薄なようであり、したがってセックスは時にオージーの様相を呈するし、特定の相手を占有するという発想からは遠い。なお、翻訳の文体はややスピード感に欠けるか。
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1958年刊。ニューヨークを舞台にしたビートの若者達の恋愛物語で、主人公レオ・パースパイドはケルアック自身、その愛人マードゥ・フォックスは彼の恋人アイリーン・メイをモデルとしています。この小説に登場するビートたちに「subterraneans (地下の人々、又は秘密の人々)」と名付けたのはアレン・ギンズバーグとされています。精神を病む黒人女性マードゥに、抗いようなくひかれていくレオ。しかしレオはありきたりの愛し方でマードゥを愛することができず、 グリニッジ・ヴィレッジのバーを連れ歩いて、彼女を消耗させ、辟易させる。さらに「近親相姦的」と作中表現される錯綜したビート連中の人間関係・肉体関係のなかで、ユーリ(彼はグレゴリー・コーソがモデルとされています。)がマードゥと深い仲なのではないかと考え、嫉妬に苦しめられます。レオは母親メメールの影から逃れられずに (彼曰く「魂まで所有され」ています。)その一方マードゥにかぎりなく執着します。しかし、レオの行動は酔っぱらうこと、ドラッグに耽ること、騒動を起こすことに終始します。その結果マードゥはレオを拒絶し、別離を迎えることになるのですが、最後に「そして私は彼女の愛を失ったぼくは家に帰る。そしてこの小説を書く」と結びます。この作品が発表された後、現実のケルアックは5年ぶりにマードゥのモデルとなったアイリーンとよりを戻しに、彼女の自宅に行きますがその先で泥酔してしまい、アイリーンに軽くあしらわれるという結末を迎えます。作家の大願を追い続けたケルアックとは異なり、アイリーンは既に赤ん坊と二人、現実の厳しい生活を生きていたのです。作中、未完成の自身の小説が完成した暁にはマードゥが過去の文豪達に向けた尊敬を自身に抱いてくれることを夢見ていたレオ。ケルアックもまた自身の思いをこの小説に込めて、それは見事に彼の期待を裏切ることとなったのです。発表当時この作品は、『On the road』で既に一躍時の人となっていたこともあり、読者の好評を得ましたが、一方で批評家の批判、酷評の嵐にさらされました。ケルアックは深く傷つきますが、それはある面で『On the road』そして他人文化そのものに対して保守的な批評家達の反撃であったのかもしれません。
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意味不明、理解不能。
ドラッグをキメながら書いているので支離滅裂。
ジャズ(ビバップ)の即興のようにスピード感をもって読み進めればそれなりの雰囲気も味わえるが、話の筋がすぐに脇道に逸れるので(しかも長い)、ストーリーはかなり把握しづらい。
筆者にとっては上記の手法こそが重要だったのだろうが、読み手側からすれば作品としての体をなしていない。 -
途中読むのが多少辛かったが(訳者が言うところのジェームズ・ジョイスの「意識の流れ」の手法と、バップのアドリブに倣ったフレージングやブリージングの語法がよくわからなかったからか)、マードゥと別れる前のレオの心情はよく描かれていたと思う。
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すごい本。
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ビートニクってなんやの?と調べてみた。よ、よくわからんばい。こないだのプログレ談義もそうだが、あの時代だからギリギリ格好付いた、と言うものの一つなんではあるめいか。
そいで1999年に「ビートニク」つう映画が作られて、ケルアック→ジョニデ、バロウス→デニス・ホッパー、ギンズバーグ→ジョン・タトゥーロとか言う記事見つけて鼻息荒くしたが、各自の詩を読むだけの、時代を振り替えるような作品らしい。
あ、この本は全然おもしくないね。知らないもんは知らないし、おもしくないのはおもしくない。 -
「芸術は短く、人生は長い」
「この世界はぼくではなく、もっと快活でもっと堅実な、気紛れという汚れの少ない生き物のためにあるような気がした」 -
若さと自由に満ち溢れた地下街の人びと。
ドラッグ、アルコール、音楽にセックス
ヒップでインテリな奴らばかり。
無意識の中に引きずり込まれたかの様なリズム感のある文体。
10代や20代前半に読むべきであった。
自分が読むには遅すぎた。
塀の上に長くいればいるほど、
下りて決心するだけのパワーが少なくなっていく。 -
新書文庫
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「オン・ザ・ロード」と少し雰囲気が違う。散文調で筋があるようでないのは同じだが、本書では「オン・ザロート」にあったドライブ感が抑えられているように感じた。そもそも作品の内容の違いなのか、訳者の違いなのかわからないがおそらく前者ではないかと思う。こちらは心理描写的な表現が増えているように感じる。「路上」から「地下街」への移行がまさにアングラな世界への移行を意味するのではないかと思った次第だ。