- Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102168318
感想・レビュー・書評
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本書の内容はその名の通り、古代エジプト文字読解の立役者であるフランス人Jean-François Champollionと、古代エジプト文字の歴史についてである。
ヒエログリフ(hieroglyph)とは、ヒエラティック、デモティックの3種類の古代エジプト文字の一つで、神官などの位が高い人間のみ読み書きができた文字であり、時とともに読むことができる人間が少なくなり当時では失われた文字であった。
一般に、未知の言語を読解するためには、その言語(文字)で書かれた(大量の)テキストが必要であるが、その文字のみから文法を読解する場合と、その言語とはほかの言語と比較することによって文法を読解する場合がある。
前者はマヤ文字読解のアプローチに近い方法で、後者がヒエログリフ読解のアプローチである。(前者の方が圧倒的に難易度が高く、読解できるのは非常にまれである。クレタ文明の線文字然り。マヤ文字の場合は文字は失われていたが、読み方の一部は伝わっていたそうな。)
幸運にも、ヒエログリフ、デモティックそしてギリシア文字で記述されている石板がエジプトのロゼッタで1799年に発見された。
そこから読解の歴史が始まる。
当時もギリシア文字は読むことができたからといって、簡単にヒエログリフが読解されたわけではなかった。
それ以外にも大量のテキストを比較参照し、並外れた洞察力といくつもの大胆な仮定をして読解を進めていく必要があった。
(少し考えるとわかるが、英語で書かれた文章と日本語で書かれた文章から日本語の文法を理解することは非常に難しい。とくに、英語にはない概念で日本語には存在する概念およびその逆に相当するものがある場合は、非常にやっかいとなる。例えば、英語で言う完了形や冠詞、助詞等))
Champollionは、子供のころから語学の才能に恵まれており、かつ古代エジプト文字の親戚であるコプト語に堪能であったことが有利に働いた。
しかし、才能と同時に比較する教材が必要であった。当時のフランスはイギリスと敵対しており、エジプトもフランスとイギリスで分割して納めていた。それゆえに、発掘物もその発見された場所によってどちらの国に移送されるのかが決まっていた。
ロゼッタストーンがもしイギリス(現在は大英博物館に展示されている)ではなくフランスであったならばChampollionの読解も少し早まったのではないかと考えられる。
なお、本書でも書かれている通りロゼッタストーンが読解に重要な役割を果たしたことは議論の余地はないが、これが読解に決定的かつ本質的に重要であったという意味ではない。
Champollionは、エジプトで発見された遺物に書かれたヒエログリフを丹念に調べて、文法を再構築していったのだ。
当時、フランスでは革命の嵐の真っ最中でありChampollionがその嵐の中で政治的な軋轢に苦しんだ様子が本書から良く伝わってくる。
それにも負けず、頑固たる決意で読解を進めた彼の情熱と才能には筆舌に尽くしがたいものを感じる。
その悲劇の中で、彼は41歳という若さで夭折するが、彼が成し遂げた業績は今後も色あせることなく歴史が語ってくれるだろう。
ちなみに、彼はフランス人の中でも歴史的な有名人であり、彼にちなむ道路や博物館などがあり観光スポットとして人気らしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
実は、ヒエログリフ(エジプト古代絵文字)が、このように複雑に構成されていることを本書を読むまで知らなかった。
映画ではハリソンフォードあたりが、スラスラと読んでいるしね。
さて、ヒエログリフ解読の熾烈な競争は当時の政権が目まぐるしく変わっていく社会も相俟って複雑混迷を極める。シャンポリオンと彼を支えつづけた兄も解読を巡り繰り広げられた、誹謗中傷、失脚と脚光の渦に巻き込まれていく。
はっきりいってシャンポリオンは天才であるが、努力家でもある。他人の説に流されず邁進することによりゴールを勝ち得ることが出来たのだから・・・。 -
不遇の環境に育った彼の一生が中心です。言語学に精通している人には興味深いと思います。
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エジプトに行きたくなりました。
シャンポリオンが何度も気絶しながらヒエログリフを研究したおかげで、今私たちはエジプトの歴史を知ることができるんです。
しかし昔のすごい人たちも、ライバルに嫉妬したり嫌がらせしたりしてたことが分かってちょっと面白かったです(笑