透明人間の告白 下 (新潮文庫 セ 2-2)

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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102377024

感想・レビュー・書評

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  • 解説にも書かれている通り、冗漫なきらいがある。
    特に序盤は官能小説を読んでいるのかと勘違いしそうになった。
    下巻はテンポがよく話が展開していき楽しめた。それに伴い、登場人物同士が有機的に交差していれば、という惜しさも感じた。

  • 主人公ニック・ハロウェイはエリート証券マンだが、ある日分子物理学博士の小さな会社の新しい発明の発表に参加し、爆発事故に遭遇し、透明人間になってしまう。一人の一般的な生活を送る普通の30代男性がある日突然透明人間になり、生活をすることになる話である。
    もちろん秘密組織から追われたり、それに反抗して逃げたり、危機一髪の場面もあるが、全体的にコメディ要素が満載となっている。
    追う側も逃げる側ももうちょっと方法がありそうなものだがとストレスを感じそうだが、登場人物のキャラでカバーしているのではないかと思う。
    とりあえず透明人間は苦労が多いということが書かれている。
    読んでいると主人公ニックに愛着がわいてくるのが不思議である。

  • 透明人間として生きるということは、誰にもその存在を認めてもらえないということ。
    それは実存在として社会的に認められないということでもあるが、何より「目に見える」存在としての自らのアイデンティティを失ってしまうことでもある。
    誰かに見えないということは、誰かに見られる自分も存在しえないということなのだ。

    主人公のニックは数々のピンチをその機転で乗り越えていくが、誰かに自分の存在を認めて欲しいという衝動にどこまでも悩む。
    ごく普通に誰かとおしゃべりをしたい。電話越しや、真っ暗闇の中ではなく。ただ、お互いに向かい合って、僕という人間と向かいあって、何の不自然な心配をすることもなく・・・。
    不思議なのは、そんなニックが決して絶望しないことだ。彼は透明人間になってしまった自分に、たくさんの失望をする。しかし、決して絶望はしない。透明人間としての生活をサバイバルして、どうにかこうにかやっていこうとし、実際に着々と目的を果たしていく!

    もし、この文庫に登場人物一覧がついていなかったら、私はきっと「ニックはずっと一人で生きていくんだろうな・・・」と疑わなかっただろう。それくらい、透明人間になった彼の生活は孤独であり、それがリアルに伝われば伝わるほど、他者と「ごく普通に」関わることが不可能としか思えないのだ。
    しかしこの文庫には、登場人物一覧がついていた。そしてその中に「アリス・・・透明人間の恋人」とあった。
    一体どうやって彼は恋人を手に入れるのか? また、透明人間の恋人となるアリスとは、一体どんな人物なのか?

    一言で言えば、アリスはとってもハッピーな恋人だった。
    皮肉で言っているのではない。ああそうか、こういうのがありなんだな、と私はほほえましくなったのである。このアリスが登場するのは、上下巻に及ぶこの本の、本当に最後の最後あたりなのだ。
    ずっと孤独に耐えてきたニック。ずっと一人だったニック。そんな彼の常識を軽々と越す女の子――それがアリスだったのだ。
    そう、人生は奇想天外。この本の主人公が透明人間になったことよりも、透明人間に恋人が出来て、その恋人の考え方のほうがよっぽど奇想天外で、私はその奇想天外さをハッピーだと思ったのである。

    濃い部分と薄い部分の差が激しく、ストーリー全体は非常にまだらな印象。面白いかと聞かれればうーんと唸るものの、いい本?と訊かれたらたぶんね、なんて答えるかもしれません。

  • なるほどリアルで面白かった。終わり方も好きだった。上巻より下巻がよかったかな。
    でも、ベスト30の第1位にはならないかも・・・。あとがきにあったように、恋人はもうちょっと早くに出てほしかったな。

H.F.セイントの作品

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