龍神の雨

著者 :
  • 新潮社
3.58
  • (107)
  • (388)
  • (341)
  • (60)
  • (10)
本棚登録 : 1852
感想 : 339
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003335

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 道尾 秀介は同年代ということもあり、気になっていたのだが、今まで読む機会がなかった。非常に引き込まれるストーリー。ライフセーバーが一瞬出てくる。

  • 台風により大雨が降りしきる中、二組の家族に訪れたのは悪意に満ちた転機だった。
    あるきっかけで彼等の運命は交わり出す…。
    悪人だと思っていた人物の本来の姿に、ホッとしたり残酷だと思ったり。
    雨雲さながら、どんよりした空気が漂っていましたが、小学生の弟のひたむきさに救われました。

  • 以前、骸の爪を読んでとても面白かったので、読んでみた作品。
    龍神と名のある通りに、台風と雨を通じて二組の家族が巻き込まれていく悲劇が描かれた作品。

    あらすじは省く。
    一組目は継母と暮らす兄弟。兄・辰也は継母に反抗的で、弟・圭介はそれを不安げに見守る日々。継母である里江は血縁者ではない引け目からか、辰也に手を焼いている。辰也はまるで試すように素行不良な態度を繰り返し里江に迷惑をかけて嫌がらせをしている。圭介はそれを怯えながら傍観している。
    二組目は継父と暮らす兄妹。兄・蓮と妹・楓は母の再婚相手と暮らしていたのだが、母を亡くした後暴力を振るわれて不信感を募らせていた。その時、楓が継父に性的嫌がらせを受けているのを見つけた蓮が、殺意を抱くようになってしまう。

    ミステリのいろははとんと知識がないのだが、軽くすらすらと読み進めることができた。最後のどんでん返しのところでは「えっお前かよ」と意表を突かれる。

    お互いの家族において他人が突如入り込むことに抵抗があるのはどの家庭でも同じだろう。けれども、共同体としてそれが成り立っていくには時間がかかるのも確かだ。
    血縁者とはいえ、脳の異なる他人同士。けれどもこの二組の家族においては、その「血のつながり」がないことが、龍を呼び出してしまうことにつながる。

    龍神と名がついている通り、もっと陰湿な民俗学的な解釈があるのかと思いきや、台風に現れる荒れ狂う風とすべてを呑み込んでしまいそうな濁流の雨といった舞台設定ゆえに引き出されたものらしい。触れる程度にスサノオノミコトや藤姫の伝説が語られ、それがミスリードや誤った方向へと連れ去ってしまうのは、興味深かった。

    罪がどうであれ、罰がどうであれ、些細な行き違いで取り返しのつかないことが起きてしまう。それは身の内に巣食う龍が成せることなのか、それとも怖ろしげに機会を狙っている龍に襲われた故なのか、さだかではないだろうし、本書の内容には関係ないかもしれない。
    それでも、水は心理学的において無意識や深層心理を表すように、秘められた感情のエネルギーを表しているように邪推する。龍は誰に巣食っているのか、それをしとしとと降り注がれる雨のような断片から、かいつまんで推測していく。
    龍はとめどない洪水のように人を容易く飲み込んで、思いも寄らない場所は連れ去ってしまうものだろう。
    結局誰が継父を殺してしまったのか、その肝心な真実は、どことなくはぐらかされているように感じる。それでも、溝田兄弟は龍に呑まれることなく、須佐兄妹の望まぬ方向へ行きついてしまったのは、龍に連れ去られた結果かもしれない。

  • 読了日2010/01
    血の繋がらない親と暮らす2組の兄弟・兄妹の誤解、思い込み、嘘そして雨が悲しい殺人を引き起こす。
    相変わらず、伏線の張り方、回収の仕方、後半のどんでん返しがすごい。
    初めから最後まで、ずっと雨が降りっぱなしで、背景がとても寒く暗い感じがする上に、題材が、両親の死、性的暴行、ストーカーとかなり重たい・・・
    それなのに、全体的に軽い感じとなってて読みやすい。
    龍は本の題にもなってるのに、意味不明で終わってる所は消化不良。

  • 2017.10.16

  • とても面白かった。物語全体を通して雨空の陰鬱な印象は拭えないけれど、その設定を貫き通した重くて悲しい物語なのかな。確かに最後若干の救いがあったようにも思うが、それらは気休めであって、メインの2組の兄弟のお互いの関係、親子関係に根深く残る疑い、嫉妬、同情などなどそういった感情の機微に触れられる作品かなと思う。全体を通してかなり面白かったと思う。

  • 母を亡くした兄と弟、父を亡くした兄と妹
    どちらも再婚した継父母に複雑な思いを持つ。
    ちょっとしたきっかけを境に、憎み始める子どもたち
    それが正当な憎しみかどうかは後でわかる
    やりきれない読後
    誤解ってこわい
    雨さえ降らなかったら……

    あと妹、お前さ…

  • 2.5 途中で犯人は解かったかな。

  • なんとも切ない話。大切な人を守るためであったり、誤解が大きな問題に発展したり。あの時ああしていればとか思わずにいられない。
    妹を思う兄。兄を思う妹。2人の兄弟と暮らす継父との不安定な関係。
    両親を亡くした兄弟と暮らす継母とのギクシャクとした関係。
    家族は血が繋がっていなくても、絶対に信じないといけない。この言葉が胸を打つ。この2つの家族の将来が素晴らしいものであってほしい。

  • 安定の内容でした。犯人はまさかの。

全339件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

道尾秀介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×