神の棄てた裸体: イスラームの夜を歩く

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 237
感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103054511

感想・レビュー・書評

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  • ★パワーに感服★強い男とベールをかぶった女。ステレオタイプなイスラム像に不満を感じ、売春宿やスラムを訪れたルポ。わずか半年に10カ国近くを訪れ、案内役を駆使しながら現地にもぐりこんだ行動力が素晴らしい。信じられないくらいの密度だ。常に甘えてくるスラムの子供、売春を余儀なくされるアフガニスタンの男児…。現実が伝わらない下層生活を、自らを主人公に置いて描く迫力には圧倒された。ひとつ疑問をあげるなら、彼らは自らが信じるイスラムとの折り合いをどう付けていたのか。教えに反しても宗教は捨てられないのか。無宗教の日本人には理解しがたいところだけに、より詳しく知りたかった。もうひとつ、「自分で何かをしてあげたい」とも著者は思っていたようだが、ルポのために訪れた短期間でどうにかするのは無理なのは自明。その悩みは分かるが、本に長々と記す必要はなかったのではないか。それは裏でやればよい話だろう。イスラムのより深い知識と立ち位置をはっきりさせればより読み応えが生まれるだろう。

  • 重いテーマ、衝撃的な内容の割には、あっという間に読了できた。内容については、なんともコメントしがたいが、私は手にとってよかったと思う。
    帯には体験的ノンフィクションとあったが、個人的にはドキュメント風旅行記という印象。取材といいつつ、下調べをあまりせず、個人的な興味による行動も多く、どうかなぁと思わないではないところも多く感じる。
    でも、いい意味で詰めの甘さがあるからこそ、このように辺境の下層社会で生きざるをえない人々とも交流でき、このような本ができたのではないだろうか、とも思う。

  • 自分は日本人として一般的な生活をしていて そんな贅沢はしていないと思うんだけど それでも この本なんかを見ると 水洗トイレを使うこととか 毎日お風呂にはいることとか くたびれたTシャツを捨ててしまうこととか お総菜のパックを捨てることとか  そういう 日本人としての日常がとても罪深いことのように思えてしまう。で なければならない が多い世界というのは 息苦しい男らしく生きなければならない世界では同性愛の男は殺されねばならず婚前交渉があった娘は撃ち殺さねばならず子供の産めない女は女として認められない伝統は大切なんだと思うけどでも 伝統とか宗教なんか 

  • どれも印象的だったが第四章の掟と死は衝撃的だった。あまりにも救いがなく、絶望的な話だった。

  • そもそもはイスラム社会におけるSEXとは、どうなっているのだろうか。というある種覗き見的な著者の興味があって、それを知るにつれ、底なしの暗い陰の中を彷徨う感じがよく出ているノンフィクション?だ。なぜ?をつけるのかと言えば、著者の語学力からして、多分、取材対象者の言葉としては、やたらと流暢な感が拭えないからである。ただし、そのことがこの本のよさを損なっているのかといえば、そうでもない。人はどうしてそれでも生き続けなくてはならないのか。考えさせられる一著である。

  • イスラームの規律の裏に「隠されている」性にフォーカスしたノンフィクション作品。著者が旅しながら出会う売春婦や路上生活者に僕らの「常識」を突きつけていく。「なんでそんなことしているの。やめなよ」と。きわめて素朴で、それはそれで正しい「常識」だ。だが、彼らの「常識」は僕らのそれとはまったく異なる。結局そうせざるを得ないんだ、という諦念が読んでいるこちらにも生じてくる。だが、著者は最後にそうした諦念を打ち破ろうとする。結局はうまくはいかないが、そこが普通のルポと違うところかもしれないな。

  • ややフィクションのにおいが感じられる部分もあるが(現地の人の行動・セリフの一部)、久々に面白いノンフィクション。面白さに文句はなし。

    イスラム教というと、どうしても遠く離れた文化のように感じてしまうが、人間が作ったシステムであることには変わりない。
    どうしてその習慣ができたのか、と、理論的に考えることは可能なはずだ。

    そこに純粋に切り込めるのは、無宗教の国で育った筆者の天分なのかもしれない。

    一夫多妻の話は、目からウロコ。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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