ローマ人の物語 (13) 最後の努力 (ローマ人の物語 13)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096221

作品紹介・あらすじ

ローマが「ローマ」でなくなっていく-帝国再建を目指した二人の皇帝、だがその努力が、逆に衰亡へと拍車をかける。塩野七生が描く新たな「衰亡史」、いよいよ核心へ。

感想・レビュー・書評

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  • ローマが「ローマ」でなくなっていく…
    という帯の文章がぴったりな内容だった。
    元老院の地位はいよいよ落ちぶれ、税制は変わり果て、首都も変わり、キリスト教が台頭しはじめる。
    コンスタンティヌスによる帝国の延命は、暗黒の中世を呼び込む。

  • 研究者によっては、この本で描かれた時代でローマ帝国は終焉を迎えたという人もいるそうな。「ローマが『ローマ』でなくなっていく―」と、帯にも書かれているな。国家の最大の責務とは、防衛だ。その防衛が守れなくなってきて、ローマ帝国は危機を迎える。帝国再建のため、ディオクレティアヌスは二頭政、四頭政と帝国を分割して統治することで、なんとか再建しようとする。一時は果たせたものの、その過程でローマはどんどん変質していくんだね。

    「いかに悪い結果につながったとされる事例でも、それがはじめられた当時にまで遡れば、善き意志から発していたのであった。」というユリウス・カエサルの言葉がエピグラフとして巻頭を飾っている。本書を読み進むにつれて、この言葉の含蓄が増していくような気がしたなぁ。

     さらにいえば、どれだけ小なりといっても、組織、チームに責任のある立場としては、問題に対する解決は、あとでどんな結果につながるかは覚悟しておけ、ということを考えさせられる。先の先なんて、そうそう読めないんだけどさ。

     ディオクレティアヌスの後、コンスタンティヌスによってローマはキリスト教の帝国へと変質していく。コンスタンティヌスがなぜそれほどまでにキリスト教に肩入れしたか。その解説は、圧巻ともいえる説得力があったよね。そういう話だったのか。

     もちろん、信仰があったのかもしれないけど、政治家として考えるなら、それだけで行動するとは考えづらい。ローマは元来、世襲ということに身構える民族性をもっていた。そのため、帝国とはいえ、皇帝は必ずしも世襲ではなく、市民によって選出されたという体裁をとる。コンスタンティヌスより前、ディオクレティアヌス以前にさかのぼれば、皇帝といわれたといってもどちらかといえば、元首であった。しかし、元首は市民からの不信が強くなると、市民によってすげかえられてしまう。古代のこと、それは殺害という形をとることが圧倒的に多かったのだ。それがローマ帝国末期の衰退の原因でもあった。

     であれば、簡単に首をすげかえられなくすればいい。つまり皇帝は市民によって権威づけられるのではなく、もっと上の存在、つまり一神教の神をその力の源泉とすればよいのである、と。

     俺自身、ボーン・クリスチャンで子ども頃からキリスト教に接しているけどさぁ。宗教に対して、これまでそういう見方をしたことはなかったなぁ。

     知的に興奮したね。

  • ローマ人のことを素晴らしいと思っていたのだけど、この巻だと、その素晴らしい点がなくなっていくようで残念。

  • 2021/11/4
    統治を委託された存在としての元首政から絶対的な君主政へとローマを変えたディオクレティアヌス。権力を一手に集めて軍を2倍にすることで蛮族の侵入を阻止し、絶対的な存在として人々から隔絶することで身の安全を確保した。軍の主力をリメスから機動隊に移し常に皇帝が率いるようにするとともに、皇宮官僚を整備し地方から徴税権を奪い権力を一手に集めた。軍隊と官僚によって税金は高くなった。また4頭制テトラルキアによって首都ローマに本拠をおかないことでローマと元老院は形骸化し、世襲制によって階層の固定化もすすんだ。ディオクレティアヌス時代にはキリスト教は一定の勢力を持っており、本格的な弾圧を行った。
    4頭制の一翼でしかなかったコンスタンティヌスは、巧妙にミラノ勅令によって信仰の自由を盾にキリスト教を公認し、ライバルとの戦争に勝って唯一人の皇帝となった。その後は、コンスタンティノープルを建設し、キリスト教会に皇帝資産を寄贈したり、聖職者の公務免除を行うことでその勢力拡大を後押しした。さらにニケーア公会議を開き、キリスト教の正統を三位一体のアタナシウス派と決めている。筆者は絶対君主政の根拠となる存在として、キリスト教に目をつけ、司教を買収することで神の意志である絶対性を確保しようとしたと考えている。

  • 図書館長 井上 敏先生 推薦コメント
    『ヨーロッパの歴史を理解するにはまずローマの歴史。独特な書き方だが、ローマの建国から西ローマ帝国滅亡までの通史を知るにはちょうどいい。研究者からの批判もあるが、理解しやすい。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/410904

  • 歴史ドキュメンタリー。

  • 専制君主となったディオクレティアヌスとキリスト教を公認したコンスタンティヌスのお話。このところしょうもない理由で皇帝が殺され続けたので、ハクを付けようと色々努力した…のはいいけれど、元々のローマとはすっかり変わってしまいましたとさ。コンスタンティヌスは遷都までするしな。

  • ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。滅亡への下り坂を一気に転げ落ちてゆくローマ。これを何とかして食い止めようとするヒーロー。だが、この時期のローマは、カエサルをもってしても時期すでに遅し。

  • いよいよローマ帝国も最終章に入ってきた。

    ローマ史の研究者の中でもコンスタンティヌスの時代になって、もはやローマではないと筆を置く人がいると筆者は述べている。
    しかしながら、このシリーズは「ローマ人の物語」であって「ローマ帝国の物語」ではないと筆者の考えを構築しようとするのだが、
    やはり、こころ無しか筆者の文章にも以前のような力強さがなくなっている。

    ローマ皇帝というと、素人の記憶では(学校で習った程度)やはり、ネロ、カエサル(シーザー:皇帝ではないが)、コンスタンティヌス、おまけでアウグストゥス(虫プロの映画から)が浮かぶ。
    この中でコンスタンティヌスについては、ハリウッドの影響でローマ皇帝、ローマ帝国のシンボル的なものと捉えていたが「ローマ人の物語」を読んでまったく反対であることがわかった。

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