世界はゴ冗談

著者 :
  • 新潮社
3.07
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103145318

作品紹介・あらすじ

文学の道化にして帝王。この男のおかげで世界は黒い嗤いに満ちてきた――。巨匠、八十歳。なおも最前衛に立ち、小説の沃野を拡げ続けた末の、悪夢のように甘美で刺激的な果実――。老人文学の臨界点「ペニスに命中」、SFと震災の感動的な融合「不在」、二千以上の三字熟語が炸裂する「三字熟語の奇」、最新の文学理論の小説化「メタパラの七・五人」など、異常なまでの傑作短篇集。瞠目せよ、刮目せよ!

感想・レビュー・書評

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  • 2010年から2015年にかけて執筆された作品が収められた短編集。80歳にしてなお尖った小説を書き続けるのはさすが。

    認知症文学の「ペニスに命中」、つねに首に蛇を巻きつけている教授の「教授の戦利品」、三字熟語が敷きつめられた「三字熟語の奇」、フィクションとメタフィクションが交錯する「奔馬菌」「メタパラの七・五人」が特に面白い。

  •  Web 日記「偽文士日碌」を読んで、筒井熱が再燃。近刊を借りて読む。「日碌」がオーディオコメンタリーのように思える。
     登録しようとしたらウラ表紙にバーコードが無い。本書の装幀を手掛けた和田誠が常々「見苦しい」と批判していた。星新一『つぎはぎプラネット』のカバーイラストを断ったのもバーコード嫌いのせいか。
     表1イラストが表題作、表4が「奔馬菌」、右そでが「教授の戦利品」、左そでが「アニメ的リアリズム」なのだろう。
     「メタ・パラの七・五人」、文学的実験をリーダビリティある形に落とし込む手練の離れ業。

  • 『ペニスに命中』4…暴走するボケ老人
    『不在』4…女だけの世界
    『教授の戦利品』3…大蛇を飼う教授
    『アニメ的リアリズム』3…ぐにゃぐにゃするバー
    『小説に関する夢十一夜』3…ショートショート集
    『三字熟語の奇』2…延々と羅列された三字熟語
    『世界はゴ冗談』3…音声ガイドの反乱
    『奔馬菌』5…四時半を征伐に行く
    『メタパラの七・五人』4…2人娘の絵本を書く画家
    『ウクライナ幻想』4…イリヤ・ムウロメツ

    『奔馬菌』は読む前に著者自らの朗読を世田谷文学館のイベントで聴いていた。
    いずれも初出は2010〜2015年。単行本の腰帯にもあるように著者80歳。すごすぎるでしょ…。

  • 最近の短編集。30年前と比べてしまうと面白さがわかりづらくなった。何度か繰り返して読めばわかるのだろうか。

  • ザ・筒井康隆!な短編集。 「奔馬菌」「メタパラの七・五」あたりが好み。話の中に引きずり込まれる感じはたまらない。「不在」と「教授の戦利品」「アニメ的リアリズム」と、って読み返してみるとほぼ好みだったから名作なんじゃないの?!この短編集。読む人選びそうだけど。

  • 短編小説集~「ペニスに命中」:認知症の男性が…。「不在」:大災害後の人びとの不在の中、歳を取らない男性が目覚めた「教授の戦利品」(蛇の権威の先生の役得)「アニメ的リアリズム」(確かに)「小説に関する夢十一屋」(夢に逃げるのは狡い)「三字熟語の奇」(2352語の2078語目の無造作までは普通で、2079語目の怪岸線から態と誤変換:いやはや草臥れる)「世界はゴ冗談」(更に短い話を三つで:あれあれ)「奔馬菌」(昔は自由奔放なことを書いていたが今や自己規制が働いて4時半退治の話が進まない…気を取り直して!)「メタパラの七・五人」(娘二人をモデルにした絵本を描いて当たった挿絵画家が死んだ49日の思い出話に故人も加わる)「附・ウクライナ幻想」(イリヤ・ムローメツを書いた舞台が原発事故とロシアの横槍で壊れていく…)~メタ・フィクションからパラ・フィクションへの提案。齢八十、頑張る

  • 難しかった。理解が追い付かない。
    理解しようとするのが間違っているのか。
    まんまと作者の罠にはまったかのよう。

  • 分からない

  • どうした、筒井康隆。
    非常に退屈な作品が多い。文学実験が前面に出ている作品が多いんだけど、実験に重きが置かれすぎてしまって、肝心のリーダビリティがついてきていないように感じる…。策士策に溺れるという印象。今まで結構筒井康隆読んできて、面白いと思ってきたんだけどなあ。それともやはり作中に書かれている通りの自己規制の結果なのか。『モナドの領域』も、なるべく早めに読みたい。

  • 文章が重く感じた。
    せっかくのネタが広がらず、一か所で回っている感じがする。

  •  筒井康隆まだまだ元気。

     「ペニスに命中」。惚け老人の一人称小説らしい。いや、ただの惚け老人ではない。すごい惚け老人である。かつては大学教授だったか警察官だったかよくわからないのだが、漏れ出してくる言葉は教養に溢れかえって意味不明に解体しかかっており、拳銃を手にすると鮮やかに分解し組み立て直してしまう。そして、みながやりたくてもできないあのこと、「あの喋り方の気に食わぬ総理大臣」を殺しにいってくれるらしいという爽快。で、何がペニスに命中?

     「不在」、男が産まれなくなった世界、昏睡したまま年をとらずどこか別世界にいる男の話、マラソン中に消えた女性。これらの話がどう関わっているのかよくわからないが、「不在」ということを変奏しているのだろうか。そしてその「不在」はここにはないがどこかにあるということを示してもいるようだ。

     大蛇を首に巻いている爬虫類・両生類研究の教授が大蛇を楯に無理を通す「教授の戦利品」。蛇が何かの象徴だと考えると寓話になるのだが。

     「アニメ的リアリズム」は酔っ払いの世界。

     この作家は小説に関する夢をいつも見ているのか、「小説に関する夢十一夜」、なぜに十一?

     「三字熟語の奇」は実験的文学とでもいう類か。数字を含む三字熟語から始まって三字熟語の羅列。そのうち政治絡みの熟語、医療関係の熟語と変遷し、最後は同音異字の創作熟語になる。

     「世界はゴ冗談」、これもよくわからん。3つのエピソードが並べられている。太陽黒点の増加で電子機器が一斉に故障した。眠れぬ夜こんな話を考えた、ダニエルは王子である……。電子機器の音声案内の反乱。

     春は化けもの。やうやう白くなりゆく生え際……と始まる「奔馬菌」、甚だ不愉快な午後の四時半を征伐に行こうとしたおれは、子猫を三匹お供に付ける。女性差別、百姓差別、精神異常者差別、老人差別、不具者差別、外国差別、外国人差別、病人差別などブラックな作品を書いてきたおれだが、そういうものを書けなくなった。条例の数が増えるのと比例して良識が作家までをも束縛しはじめたからか。そこへ「政府関係者」がやってくる。弟が帰ってくる。奔馬菌に冒された祖父が二階からどどどどどどと降りてくる。帯によれば「怪物的私小説」らしい。

     「メタパラの七・五人」。絵本作家(死んでいる)、その妻、長女と次女、次女の夫、担当編集者、作者(筒井康隆)、これを読んでいる読者(つまりおれ)、これで七・五人だ。◯・五人相当は作中に登場しそうで登場できない読者のことか。メタはメタフィクションのことで、パラは最近おれがここに書評を書いた『「4分33秒」論』の佐々木敦が提唱するパラフィクションのこと。齢80にしてまだまだ実験しているこの活力をみよ。

     老作家であることをあちこちに記しつつもこの元気にいささかたじたじとなるのだが、エッセイ「附・ウクライナ幻想」では、ウクライナの戦争に思いをはせつつ、『イリヤ・ムーロメツ』とその執筆前に取材に行ったウラジミール公国、すなわちウクライナの回想が情感豊かに語られる。なに、回想は老人の特権だからな。

  • 筒井康隆の新作。9編の短編集。ウクライナに昔行った記録のようなものがおまけでついている。筒井康隆らしい、意味不明なものもたくさん。『ペニスに命中』『三字熟語の奇』とか。80歳でこれを書くのか。『メタパラの七・五人』は面白かった。メタの概念を知ったのは筒井康隆からだったなぁ。ほんと、私は筒井康隆の小説からたくさんのことを学んだのだ。

  • 最早やりたいことをやり尽くしてスタイルの残響と化したような良くも悪くも「御大未だ健在」と確認するのみの短編集だが、一点、『メタパラの七・五人』には(脳内で)あっと言わされた。批評に積極的に耳を傾け貪欲に新しいスタイルを試していく筒井御大からはまだまだ目が離せない。

  • 皮肉なお話が多かったです。痴呆の老人による命知らずの奇行、蛇使いの大学教授、女しか生まれてこない次の世代、自邸や所持する車の音声ナビに乗っ取られる男性…まったくの架空のお話とも思えず本当に起こりそうな筋書きであって恐いと思いつつも面白いです。

  • 筒井ワールドの詰まった短編集。

    ・ペニスに命中
    ・不在
    ・教授の戦利品
    ・アニメ的リアリズム
    ・小説に関する夢十一夜
    ・三字熟語の奇
    ・世界はゴ冗談
    ・奔馬菌
    ・メタパラの七・五人
    ・附・ウクライナ幻想
    の10編収録。
    筒井独特のメタ世界観が満載でした。
    切れ味は一寸弱い感じもしますが、まだまだ元気そうです。
    小説とは言えない「三字熟語の奇」は最後の2ページ分が描きたかったと思われ、「現代語裏辞典」を思い出しました。

  • この書評はどうなんですかね。~「筒井康隆80歳、文学の道化にして帝王、巨匠にして再前衛。老人文学の臨界点「ペニスに命中」、SFと震災の融合「不在」、爆笑の表題作などを収録した、驚異の傑作短編集。~
    現代文学(あるいは未来文学?)を学問として論じられる一部界隈の知識階級を除き、この書評が的確だとおもうひといるのかな。爆笑できるならそのひとも天才なんだろうきっと。私はもうやっぱ、虚構船団あたりから筒井作品の読者として資格はないっていう読後感にしかならない。ひらたくいえば、「わからない」。中学高校で図書館の筒井棚はぜんぶ読んだくらいにはファンだったのだけれど、この作品の試みに関してさすが!とわかったようなことを言えるほど、かの巨匠の意図することを汲み取れない。場の切り替わり方とか読者の受け止め方とかをさくさくと裏切っていくかんじは、ホラきたよ!って くらいつこうと思うんだけど。(表題作の冒頭の、肩書の呼びかけとともに場面が変わってるんだなっていうのも気づいても脳内で整理できない)こうあるべきという常識はこの方にはないんだな、フィクションというものの境界線がないことを証明するための、論文なのかな。三字熟語の奇 とか、どう読めばいいんだろう。徐々にめちゃくちゃな熟語が織り込まれていくさまを楽しめばいいのか。どれが正しいのかを判別するにはこちらの知識も問われるので、むしろ自分の知性を疑いはじめて不安に陥ってくる。 。。。←ハッ もしやそれが狙い??

    自分にわからない高度な企みを孕んだ戦いが繰り広げられるのを指を加えてただ文字を追うことしか できなかった。
    敬意を込めて、この方ほんとどうしようもなく天才的にひねくれてんだなー
    って。
    凡人の私にはもうそのくらいしか掬いとれない。

  • 2015年4月刊。月刊誌発表の11編の短編集。80歳なんだそうです。スザマシイと言える筒井文学の成果です。これだけ揃うと破壊的で、頭が爆発しました。雰囲気ば残りました。

  • うーん、過去への追憶、認知症、死、ブラックユーモアで描いていてもそこに漂うのは老いなのだな、人間は年を取って死に至るのは自然の摂理ではあるのだが。。。

  • 昔よく読んでいたが久しぶりに読んでみました筒井康隆。どっぷり筒井ワールドです。というよりしっちゃかめっちゃかです。こういう作品がかけるのって筒井康隆だけなんだろうなあ。ちょっと読み疲れました(笑)

  • 若いときは辛くなかったけど、年取って筒井さんの訳わからん話は頭がついてゆかん。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

筒井康隆の作品

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