著者 :
  • 新潮社
2.75
  • (0)
  • (16)
  • (29)
  • (20)
  • (7)
本棚登録 : 228
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103181026

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 殴り書きメモ
    他者との関係の中で人間の行動が互いに支配されるという閉鎖的な場を描いた作品。
    秀逸な点は多々ある。まず、主人公の一人である舞の夫、三隅孝のキャラクターの妙。ミスミはガタイはいいが、「男らしくない」「弱い」男、女性に虐げられる男という人物像を過剰に内面化し、またそのように自己演出している。一貫して被害者であることによって舞を支配する。無抵抗な弱者に対する嗜虐、そして舞に強さを強制するミスミの弱さに、舞は蝕まれる。これだけでも面白いのだが、もう一人の主人公、希子の目から見た三隅孝、すなわち孝は狡猾な支配者としての姿を躊躇いなく見せる。このことで、汚さを持ち合わせた三隅孝という人物が立体的になる。しかしながら、希子は希子で、孝の人間像に実態以上の不気味さと軽薄さを見出しているようだ。自分に贈ったのと同じ樹を妻に贈ったと軽蔑の目を向けているが、これはおそらく勘違い。
    このように、舞と希子の二人を語り手として設定することで、関係・パワーバランスによって行動が既定されてしまう人間が効果的に描かれている。
    また、輪郭がぼやけ足場が揺らいでいく感覚を持つ二人の女性が向き合い、アパートの部屋の外で、自分たちの男がそこにいることを表す部屋の灯りから逃れ、朝日に透明に輝く雪に包まれるシーンは美しかった。「透明」はカイガラムシの糞の色とつながるイメージ。透明になる=自分の醜さの浄化・自己の無化というイメージが、新しい始まりとして昇華する場面だ。

    序盤の舞の語りで出される比喩がややくどい、ミスミが舞に固執する動機が(私には)見えづらいなどの読みづらさはあったが、かなり面白く読めた。批評の切り口にも事欠かない作品に思える。現代日本文学のレポートにも向いているだろう。

  • みんな掴みどころがなくてよかった。

  • 読んでいてあまり気分の良い作品ではなかったですが、嫌いではないです。

    自分のDVのせいで、彼に依存してしまっている舞、帰ってこない男を待ち続ける希子、そのふたりを結びつけた男孝。
    正直、それぞれの関係はとても気味が悪いです。
    元凶は孝?

    前半は舞の目線で展開します。その時は希子がとても不気味に感じていましたが、後半の希子目線でのストーリーで、また逆の感想を持つようになり、上手いな~と感心しながら読みました。

    2人は、白い繭から無事出ることが出来たような終わり方でしたが、孝の存在、怖いです。

  • 登場人物が少なく、展開もさしてないままこのページで描くのはちょっと疲れた。うまいとは思うのですが。

  • 三隅舞と孝の夫婦がメインで話が進む.羽村希子は遠藤道郎をパートナーと思っているがすれ違いが多い.舞が一方的に孝の暴力を振るう場面に出くわした希子は戸惑うが,舞と友達関係になり,プールに通ったりし始める,舞は美容室を経営しているが有能な有紗が退職することになり精神的に追い詰められる.舞が失踪したり,道郎と希子が会えなかったり,もどかしい場面が連続して,複雑な読後感を味わった.舞の暴力の原因は何なのか,よくわからない.

  • なかなかへヴィーな作品。評価が低いみたいだけれど私はこの薄気味悪さ案外嫌いじゃないな。登場人物ほとんど性格悪くて全く共感できないけれど。初期の透明感のある文体から少しずつ変わってきている感じがよいですね。

著者プロフィール

二〇〇五年に「窓の灯」で文藝賞を受賞しデビュー。〇七年「ひとり日和」で芥川賞受賞。〇九年「かけら」で川端康成文学賞受賞。著書に『お別れの音』『わたしの彼氏』『あかりの湖畔』『すみれ』『快楽』『めぐり糸』『風』『はぐれんぼう』などがある。

「2023年 『みがわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

青山七恵の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×