- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103288213
感想・レビュー・書評
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グーグル日本法人前社長 辻野氏が、ソニーでの22年間とグーグルでの3年間を振りかえった一冊。著者の経験上、ソニーとグーグルの例で語ってはいるが、日米の企業比較論と受け取ることができる。また、自分の身の回りのことに置き換えて考えることもでき、非常に面白いタイトルである。
◆著者が辞める直前に感じたソニーの状況
・競争原理が切り替わっていることに気が付いていない:ネットワークとの連携による付加価値の追求を考える時代に、デバイスを中心に考えている
・ガバナンスの不在:外に向かって闘っているときに内側から背中を撃たれる
・プライドのなさ:プライドでいくら儲かると思ってんだ?と押し問答する上司
著者が辞める直前に感じたソニーの状況には、今の日本を象徴するかのような記述が並ぶ。この視点での「ソニーが教えてくれた」こととは、ソニーを反面教師として捉えており、皮肉交じりの意味がこめられている。しかし、本書にはもう一つのソニーが登場する。古き良き時代のソニーである。
◆著者が感じた古き良き時代のソニー
・人がやらないことをやる、ということを社是として自身に満ち溢れていた
・自由闊達な社風
・海外からの不当な圧力や理不尽なルールに対して、一歩も譲らなかった基本姿勢
・単なる一企業の思惑やルールを遥かに超え、ソニー以外の企業にも大きなビジネスチャンスを生み出した。
・生意気だけが取り柄のような自分を背後で救済してくれる度量の大きさ
・「上司にやめろと言われたくらいでやめるようなら最初からやるな」というカルチャー
この視点からの「ソニーが教えてくれたこと」は、文字通りの意味で使われている。古き良き時代のソニーが、今のグーグルに決して劣らないカルチャーを持っていことを熱く語っており、引いては日本全体を鼓舞するような内容になっている。
著者は「現在価値を守る」仕事にばかりに注力し「将来価値を生み出す」仕事を伴わない企業は衰退していくと主張する。そして、今まさに「現在価値を守る」としか思えない業務に従事されているビジネスマンも多いのではないかと思う。だが、著者の言葉を短絡的に捉え、会社が悪い、環境が悪いと、周囲に問題を押しつけるのはやめた方が良さそうである。著者が取り組んできたことは、目の前の「現在価値を守る仕事」を「将来価値を生み出す仕事」に変革してきたことに、ほかならないからだ。
答えは、意外と自分の身の回り、もしくは我々自身の中にあるのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
グーグルで必要な事は、皆ソニーが教えてくれた。
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図書館で借りた。年末年始用に。
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日本を代表する企業であるソニーでの働き、世界を代表するGoogleの日本法人での立ち上げについて書かれている。
これからのクラウドサービスのあり方についてや、Googleの企業理念と日本人独自の考え方についての捉え方やこれからの日本人としてのあり方についても書かれており、非常に参考になった。
定期的に読み直したい。 -
ソニーは貴重な人材を失った。なぜソニーは、かつてのソニーではなくなってしまったのか。そこは深く書かれていないが、韓国や中国にハングリー精神で負けたのではないかと推測する。いま家電は本当に苦しい。
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かなり良かったです! ソニーファンおよび、ニッポニーズマインドの僕だけに、かなり、しびれました。
やっぱり、本質的に破天荒でチャレンジャブルな生き方をしておられる方は大好きである。
内容としては、ソニーでVAIO,スゴ録などのヒット商品をつぎつぎと生み出した後、先日読んだ「さよなら!僕らのソニー」に書かれていたような社内の迷走があってソニーを退社、そしてグーグルに転職して、日米双方のグローバル企業を経験した、辻野さんの自叙伝。そして、今では、ソニー、グーグルでの経験をいかして、二十一世紀のまったく新しい企業を作ろうとしている。
最後の章である、グローバル時代のビジネスマインドと日本の役割、に記載のある内容から、以下引用します。
「働く人は、自分が現在価値を守る立場で仕事をしているのか、将来価値を生み出す立場で仕事をしているのか、という視点を常に持つべきである。会社全体としては、日々の糧を得る、という観点では「現在価値を守る」ための行動も必要だが、常に成長する会社であり続けようと考えるのであれば「将来価値を生み出す」ための卓越したビジョンや勇気、その上での覚悟と計画に基づいた経営資源の継続投入が不可欠だ。そのようなバランスを欠き、日々の糧を得るための短期的な結果に一喜一憂しつつ、ひたすら現在価値を食い潰すだけの企業に未来はない。 -
ソニーの製品の舞台裏が見えて非常に面白い。ジャーナリストやアナリストの書いたものにありがちな、徹底的な賞賛主義(脚色があるくらいの)でなく、反対にやたら偉そうに批判するものでもなく、ソニーという会社を心から愛している元幹部の書いたものだから、リアリティがあり、一言一言が重い。
自由闊達な(だと思っていた)ソニーでも、2000年前後にすでに内部で足の引っ張り合いなどがあり、マイナスのパワーを使わざるを得ない状況があったというのに軽いショックを受けた。
ネット時代、グローバルなビジネスを成功させようと考えたら、完璧主義を捨てなければならないというのはどの会社も感じていると思うが、積み上げて来たブランドが足枷になる。品質を下げるのには勇気がいる。
「100%を目指す」のは大変なようで、実は基準づくりという意味ではこれほど楽なことはなく「いい塩梅に手を抜く」方が難しい、というのが私の持論だが、その思いをより強くした。そのためにはトップの強いビジョンが必要だろう。
楽天のkoboが叩かれたばかりだが、リリース後の問題には素早く対応している、95%は問題なく使ってもらえている、という三木谷社長の言葉が印象に残っている。気然とした態度に好感を持った。マスコミが叩き過ぎ。それに惑わされたらダメだ。楽天はもはやベンチャー企業と言えないほどの規模になっているし、現時点では決してグローバル企業ではないが、トップはこのような精神を持ち続けなければならないだろう。どのようにするのが社会の利益になるか考えていれば背骨がしっかりする。
日本が弱くなることは本当に悔しい。仕事のモチベーションを上げてくれる、栄養剤的良書。
しかしストリンガーって何なんだ?外国人のくせにソニーの日本企業的悪さをむしろ醸成させた? -
正直まだ、理解できないとこもあり、自分には少し早いかなと思う。
ITスキルと経済のことを理解してからもう1度読もうと思う。
社会のなかでの彼の位置づけ、考えが非常に伝わってきて面白く読むことができた。 -
ソニーという企業の栄枯盛衰とグーグルという新しい企業の姿に感銘を受けた。ソニーに起こっている組織体の構造的な疲労の姿は決して人ごとではないと感じる。
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野中郁次郎『経営は哲学なり』では、ソニーの経営哲学を徹底紹介!!