呪いの時代

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103300113

感想・レビュー・書評

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  • 数ある(著者の)著作の中でも、わりに好きな主題(「呪詛」と「贈与」)であったため、面白く読めた。ものすごく大雑把になるが、他者や外部に対する敬意がそこに底流しているからこそ、なかなか気持ちよく読めるのだと思う。最近普通に生活をしていて、どのように他者に対して敬意を払えるかということが、自分の中で自覚的になっている。敬意を払うというのは、何も相手の言うことを何でも尊重するとか、争いごとを避けるためのマナーとして(だけ)の行為の話ではない。お互いの”知的パフォーマンスを活性化"させたいがために、敬意を払いたいのだと思う。それは最終的に「正解」を求めたいからとか言うよりも、単純にお互いのパフォーマンスを上げることが気持ち良いから。但し(ビジネスにおける)「正解」を求める姿勢も決して過小評価してはならないため、そこの折り合いをどう付けるかがサラリーマンとして、あるいは集団生活を営む上で大事なことなのだと思う。これからも悩んでいきたい。

  • 良かった。
    やっぱり、内田樹、いい思考です。

  • 現代の思想というか、傾向というか。

  •  いやぁ、面白かった。内田樹の面目躍如の文章だった。贈与論に対してまとまった考えが述べられていて、今までの知識が整理されてよかった。知的のんびり状態を満喫できた。

  • 「呪詛」と「贈与」を主題にした『新潮45』での不定期連載の内容と、 東日本大震災で露呈したグローバル資本主義と日本的システムの問題点に対する考察をまとめた一冊。
    以下、印象に残ったところ。

    ◇子供たちに「身の程を知らせる」という学校教育の重要機能
    一方で本の後半では、有事に対応出来る"フツーじゃない"人材を育てる重要性を 説いている。
    あれ?矛盾してね?と思った瞬間、ハッとした。「身の程を知る」事と、「フツーの人間になる」事を混同していた・・ 。
    「身の程を知る」とは「出来る事と出来ない事を認識する事」であって、別に
    「出来る事を抑制してフツーになる事」ではない。
    だから「無限の可能性を説く事」と「身の程を知らせる事」は矛盾しない。
    教育は子供たちに、 「君たちは何でも(any)出来る。けど何でも(every)出来る訳ではない」 と説く必要があるんだな。

    ◇「国誉め」
    詳細に書けば書くほど実物の美しさを描ききれず、記述すればするほど固定化や定義化は遠のき、"リアル"の無限性と、自分の記号化能力の限界を感じる、と言う話。

    ◇大人になるとは、「人間が複雑になる」こと
    真の共生とは「感情移入」ではなく、自分の構成ユニットを増やすことで「この他者は部分的に私と同じだ=私自身だ」と認める事、と言う話。

    ◇「街づくり」に霊性を取り入れる
    勿論、神威によって街が蘇生するのではなく、「神の威徳というのは、そのようなものが存在し、活発に機能していると信じる人間が作り出す」んだけれども、と言う話。

    他。
    ・「過記号化」が持つ危険性
    ・レヴィナスが守った神への信仰
    ・原子力は「荒ぶる神」
    ・存在しないものを存在するかのように擬制することの効力

    様々なトピックについて書かれているのですが、通底しているのは、下記2点かと。
    -「ほんとうの私」を受け容れ、自責を引き受けなければ、物事はうまく行かない
    -存在しないものを存在するかのように信じる事に効力がある

    いやー、面白かったです。

  • 要は緩く生きろよってことなのか。
    時間があるときに再読するかな。

  • 古本屋にて見つけ購入。「呪詛」と「贈与」について。

    著者は「骨の髄まで合理的なリアリスト」といつも自称するけど、
    読んでいると感じるのは温かさな気がする。

    「抑制がきかない」というのは「身体による限界づけ」が
    機能していないということ、という一節になるほどと。

  • いつもの語り口いつも言っていることでそういえば以前に読んだ内容と思いつつも結局通読してしまうのは結局著書の考え方に同意していてかつ誰かにその内容を伝えようとしてもまだ消化しきれてないことが原因なんだろうと思う。この人の周辺についても埋めていかないとと思う。

  • 批判や自説を説くことに終始し、破壊をめざす「呪いの時代」をどう生きるか。その問いに対して、筆者は、呪いを解除するには、あまりぱっとしない「正味の自分」を、真の自分として受け入れ、けなげに生きる自分を祝福することと説く。自分を愛するということを考えさせられた。

  • ネット上での言論が面白かったので手に取ってみる。
    ネット上で所謂アンチ行動を取る心理、というのテーマとして扱っているようだったので。
    そういう意味で、「呪い」や「祝福」についての内容は大変面白かった。胸のつかえがとれたようだ。

    連載を集めた単行本であるため、話はもっと色々な方向へ広がる。
    政治や原子力、それら作者が「本質」を語ることができない(畑ちがいであるため)内容について同列に触れることは、なんか本文で言うところの「呪い」に近いものがあるんじゃないかと考えるのは私だけでしょうか…

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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