昭和の特別な一日

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 47
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103319412

作品紹介・あらすじ

開会式の空を飛んだもう一人のパイロット秘話、銀座から都電が消えた日、中野にオープンした「東洋一」のブロードウェイ…他、二度と戻らない日々の忘れられない光景-。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和は遠くなりにけり。東京オリンピックの頃、筆者の記憶に残る特別な日。ノスタルジックに振り返る昭和の東京。

    「上空1万フィートの東京五輪」 昭和39年10月10日(土)
    「さらば、銀座の都電」 昭和42年12月9日(土)
    「日本橋には空がない」 昭和38年4月12日(金)
    「ブロードウェイがやってきた!」 昭和41年10月29日(土)

    昭和27年生まれ、神田神保町に生まれ育った筆者の原風景。オリンピックの前後で東京の街並みは大きく変わる。その象徴的な出来事を4章構成で描いている。オリンピックの開会式のブルーインパルスが描く五輪。都電の廃止、日本橋川への首都高速の建設。ちょっと意外なセレクトが中野ブロードウェイ。当時東洋一のショッピングセンターと謳われたそうだ。

    多くの関係者に取材していることがうかがえる。筆者の得意分野が本書でも活かされている。

    ブルーインパルスの話は他の書籍でも有名だろう。彼らの任務は「聖火台に聖火が点り、鳩と風船がいっせいに放たれて、選手やスタンドの観客が頭上を振り仰いだ午後3時10分20秒、天皇皇后が鎮座するロイヤルボックスら見上げ角70度の高度1万フィートの上空に、五色のスモークで、オリンピックのシンボルである五輪のマークを描きはじめる。」というもの。

    筆者の故郷神保町、再開発で失われた街区の思い出が語られる。都電の廃止、景観より高速道路。効率優先で失われた部分についての筆者の思い入れが滲み出る。

    あまり描かれることの少ない街の沿革や住人の体験談など、特別な一日を特別でない普通の人びとがどのように過ごしたか、貴重な記録である。

  • 東京勤務時代は日本橋の近くに事務所があったので,「日本橋には空がない」が面白かった.魚市場があった昔からの話は,知らないことばかりで楽しく読めた.「ブロードウェイがやってきた」もよく歩いていた中央線の中野や西武新宿線の地名が出てきて,地図を見ながら楽しんだ.

  • 【新刊情報】昭和の特別な一日 210.7/ス http://tinyurl.com/6p3mkxm 東京オリンピックの開会式の空を飛んだもうひとりのパイロット秘話、銀座から都電が消えた日、中野にオープンした東洋一のブロードウェイ…。東京の“特別な一日”を描く。 #安城

  • 平成になってはや四半世紀。昭和よりも平成を生きている時間の長い私にとっては、東京オリンピックや都電の走る風景は、歴史の中のおはなし。
    と、思っていましたが、今につながってるんですねー!すべてが。
    オリンピックがあったから、交通が整備された。その結果、都電に人が乗らなくなって廃止された。
    交通はどんどん便利になって、みんなが郊外に住み始めた。
    そして、いま、私も交通が便利な郊外に住んで仕事をしている。
    そう考えると、オリンピックのおかげで今の自分があるような気がしてくるから不思議。

    でも、ひとつだけ・・。これは「昭和の特別な一日」ではなく「東京の昭和の特別な一日」だと思いました。
    地方出身者としては、「東京だけが大事なの!?」と少し反発を覚えなくもない。

    • 939okimuk939さん
      本を読んでいないのでコメントがずれるかもしれません!古代オリンピックはオリンピックそのものが目的であった、また19世紀頃の万国博覧会も然り。...
      本を読んでいないのでコメントがずれるかもしれません!古代オリンピックはオリンピックそのものが目的であった、また19世紀頃の万国博覧会も然り。江戸時代末期パリ万博に日本が初めて出品した浮世絵・版画などがヨーロッパにジャポニズムを生みだし、絵画においてはゴッホ・マネらへ音楽においてはドビュッシー等へ影響を与えた。20世紀におけるオリンピック・万博は国威の表明・経済効果などに置き換わっている。その効果のおかげもあるが、最近においては「その後」の弊害・後始末が気になるところである。
      江戸の人口はその時代にあっても世界の都市の十指に入ったというので、「江戸の江戸時代の特別な一日」という本が出版されても面白いかもしれません!
      2012/03/04
  • 「兵士に聞け」の杉山隆男さん
    確実な聞き取りの取材と
    確かな「定点」の切り口がお見事
    なんでもない(こともないのですが)
    道が
    橋が
    建物が
    その時代の
    匂い、喧噪、歴史を
    抱えて
    語られていく。

    相変わらず
    地面の上にしっかり
    足をつけて
    語られていく
    「庶民の昭和史」
    が うれしい

  • 流石に東京オリンピックについては実体験としては持たない世代だが、昭和39年10月10日の五輪開幕の日が「体育の日」として現代に受け継がれているのは知っているし、その開会式で国立競技場の上空に自衛隊機がスモークを出して五輪を描いたことはその後の写真や記録映像を通じて知っている。

    難易度の高いアクロバット飛行だが、流石に日本のパイロットはゼロ戦の伝統を引き継いで技術が高いもんだ、と思っていたら其れが大間違い。五輪開幕の2年前に日本の五輪委員会から開会式には自衛隊機で五色のスモークを出して飛んでくれという要請は受けたのだが、それは此れまであちこちの国際大会で各国の空軍機がやっているような真っ直ぐに飛ぶことを想定しての依頼だった。だが当時の空幕長が「五輪の輪を描こう」と言い出して始まった演出だそうだ。

    準備期間が約二年弱、航空自衛隊では必死の訓練を繰り返すものの実は開会式の前日になっても綺麗にその輪を描くことに成功したことが無かった!とは。訓練では百発百中でも本番では失敗することが多々あるのに、訓練では一度も成功していなかったのに本番で成功するとは、まさに驚きの事実だ。

    脚光を浴びた航空自衛隊のパイロットもその後は民間に転出したりで、別々の人生を歩むことになり五輪当時の秘話もなかなか外には出なかったようだが、流石に著者・杉山は自衛隊ルポシリーズ「兵士を・・」で築いた人脈なのか今回の貴重な証言に結びつけている。

    他に「昭和の特別な日」として本書に収められているのは都電銀座線廃止の日、日本橋の上に首都高が架けられた日、中野ブロードウェイの出来た日だ。五輪と違い一般的なインパクトは薄いが、確かにそれらを機に街並みが完全に変わってしまったという意味では今振り返ると貴重な日かも知れない。

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著者プロフィール

1952年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒業後、

読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に

新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興

亡』(文春文庫)で大宅壮一ノンフィクション

賞を受賞。1996年、『兵士に聞け』(小学館文

庫)で新潮学芸賞を受賞。以後、『兵士を見よ』

『兵士を追え』(共に小学館文庫)『兵士は起つ

 自衛隊史上最大の作戦』(扶桑社新書)と続く

「兵士シリーズ」を刊行。7作目『兵士に聞け 

最終章』(新潮文庫)で一旦完結。その後、2019

年より月刊『MAMOR』で、「兵士シリーズ令和

伝 女性自衛官たち」の連載を開始。ほかに小説

『汐留川』『言問橋』(共に文藝春秋)、『デルタ

 陸自「影」の兵士たち』(新潮社)、

『OKI囚われの国』(扶桑社)など著書多数。

「2022年 『私は自衛官 九つの彼女たちの物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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