あのひとは蜘蛛を潰せない

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 752
感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103319627

作品紹介・あらすじ

私って「かわいそう」だったの? 「女による女のためのR‐ 18文学賞」受賞第一作! ずっと穏やかに暮らしてきた28歳の梨枝が、勤務先のアルバイト大学生・三葉と恋に落ちた。初めて自分で買ったカーテン、彼と食べるささやかな晩ごはん。なのに思いはすぐに溢れ、一人暮らしの小さな部屋をむしばんでいく。ひとりぼっちを抱えた人々の揺れ動きを繊細に描きだし、ひとすじの光を見せてくれる長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 皆それぞれの「かわいそう」で「みっともない」ところを持っていて、自分でもそれが何なのかはっきりわからないから、誰ともわかりあえない。
    家族でも恋人でも友人でも、わからないものはわからない。
    だけどわかりあいたいと、好かれたいと思って言葉を尽くして相手に伝えることって、生きるのに必要な事なんだよなぁ。

    なんだか色んな人と関わって色んな事を話してみたくなった。

    「同じ年頃で、同じように真夜中に働いてて、きっと、一人暮らしで、辛い時期も知ってて、だから、あなたは、わかってくれると思ったのに」
    「わかりません、ごめんなさい。......わからなくて、ぜんぜん別のことを考えるから、こんな風にお話する意味があるんだと......思います」(p208)

  • 登場人物それぞれが心に重い物を抱えている。
    過保護で過干渉な母親と娘の関係はリアルに描かれていた。良い方向に向かうので良かったと思う。

  • ドラッグストアで働く28歳の女性のお話。
    蜘蛛を潰せない人は冒頭に出てくる。
    自立ってなんだろうね。と思う。
    家族は愛で呪いだから、読んでいるともやもやしたり苛立ったりするんだけどバッサリいけるほど簡単じゃないんだよなぁ・・・とも感じる。
    幸多からんことを、と願う。

  • 自分のトラウマになっていることに気づき何に対して恐れを抱いているのかグルグル考える。
    母親に対する思い、母親が自分に強要してくる感じが『あ、これ、私と一緒だ』と、妙に共感できてしまった。
    蜘蛛の扱いでその人のイメージを理解しようとするのはちょっと…わかるようなわからないような…。
    初めての作家さんだったけど好きな感じだったので他の作品もどんどん読みたい。

  • むぇーーなんだこのおわりかた。
    「気持ち悪い」の意味を勘違いして読んでた。笑
    でも、彼とうまくいってよかった。別れないで〜と思いながら読んだ

  • 子供の頃母親が何のきなしに言った「みっともない」が大人になったのに今でも生生しく再生できる。
    そんなことをまた思い出した。

    弟を亡くした母さんが可哀想だった。つらい時いて欲しい人が居てくれなくて可哀想だった。
    だから自分まで母さんを捨てたりしたら可哀想だと思った。
    可哀想だから。

    かわいそうだから、なんとかしてあげたい。
    かわいそうだから、不憫だ。
    それって本当に身勝手だなと想う。

    かわいそうだけど、生きてかなきゃいけなくて。かわいそうだけど、しないといけないことからは逃れられなくて。
    かわいそうだけど、でも、なんとか生きてる。
    かわいそうって、誰が決めるのか。

    モヤッとしている。その正体はまだわからない。
    でも、かわいそうだと簡単に言うのも思うのも辞めようと思った。

    人は其々、其々の持ち場でなんとかかんとかして生きてる。
    みっともない時もある。情けなくて恥ずかしくて世間様に何と言われるかわからないこともある。
    だけど、生きていく。

    崩れて彷徨って世捨て人みたいになっても、いつかふわりと立ち上がって元に戻れる人もいる。
    その人にとってある時期だけ、手に負えないような危うさの中を生きている。
    そしてまたつぎはぎしながら人生を歩いていく。
    シンプルにただきれいな道を歩けることは稀だ。
    本当は見られたくないものが道のあちこちに落ちているものだ。
    それが自分の人生という道だ。

    この本を読んでいても何度も読めなくなるくらい、気持ちもそぞろだった。危うさは変わらないまでも、なんとか今日読み終えた。
    人様に見せられないこんなのも、ありだな。
    そう思えたから足掻かないことにする。
    人様がどうおもうかなんて関係ない。私の人生に文句はつけさせないと決めた。

  • アラサー店長が高校生のバイトと付き合ってるのが何だかんだ周りに受け入れられている状況が気になる以外良かった。

  • ドラッグストアの店長・梨枝さん、バイトの三葉くん、客のノーシン女ことサキさん、そして梨枝さんの義姉・雪ちゃん。みんな心の奥に重たい物を抱えていて、その心理描写が巧妙なせいか、読んでいて心がざわつく。全般に画のイメージはグレー。そこへたまにさざんかの緋色がこれでもかと迫ってくる。ただ最後には、みんな良い方へ向かう感じなので救われた。

  • 数年先の私を見ている感覚
    私も家を出るべきだろうか

    登場人物の苦悩の描写が生々しくてしんどくなってしまった。彩瀬さんの物語はハッピーエンドだからまだいいけれど、現実はこうはいかないよなぁとどうしても思ってしまう。いつからこんなにひねくれてしまったんだろう。

  • 「本当は」。習慣のように浮かんだ思考に、舌の裏が苦くなる。私は、この世にないものを欲しがってばかりだ。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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