桜の下で待っている (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 833
感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408554020

作品紹介・あらすじ

面倒だけれど愛おしい「ふるさと」をめぐる感動作-郡山、仙台、花巻…桜前線が日本列島を北上する4月、新幹線で北へ向かう男女5人それぞれの行く先で待つものは-。実家との確執、地元への愛着、生をつなぐこと、喪うこと…複雑にからまり揺れる想いと、ふるさとでの出会いをあざやかな筆致で描く。注目の気鋭作家が丁寧に紡いだ、心のひだの奥底まで沁みこんでくる「はじまり」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 今年も桜がちらほら咲いてきた。いよいよ春がきた。満開もきれいだけど、咲き始めのこの感じもけっこう好きだな。

    こちらは、桜前線の北上とともに電車で東北へと向かう、男女5人の物語。
    故郷への複雑な想いを抱きながらも、現実を受け入れ、前に進んでいく。じんわりと優しい読後感。

    子どもの頃、母が故郷を好きになれないと苦しそうに話していたことを思い出した。無理に好きにならなくていいじゃないと思う反面、好きになりたいから苦しいんだよね、とも思って何も言えなかったな。
    でもね、この小説を読むと、自分だけじゃなかったんだって思えるかもしれない。
    それに、故郷は自分の生まれ育った場所だけでなく、大切な人がいる場所だったり、お気に入りの場所だったり、心の拠り所として誰もが持っていいものなのだと思わせてくれる。
    もっと心は自由でいい。故郷という概念に新しい風が入ってきた気がした。

    また、東北の観光名所もたくさん登場する。
    花巻のマルカンソフトは懐かしかったな。倒れないように割り箸で食べるんだよね。
    自分の思い出の場所が出てくるのはやっぱり嬉しかった。

  • 宇都宮で一人暮らしをする祖母の家を訪ねるために、東京駅から新幹線に乗り込む智也。
    三ヶ月前に膝を痛めた祖母の、通院や買い物の運転手をするためである。
    温泉郷にある足湯や、大きな吊橋が架けられた美しい渓谷が映像のように浮かび上がってきて、しばらく帰っていない自分の実家をふと思い出し、私も田舎に帰りたくなってしまった。
    母として、女として生きた祖母のたくましさを知る「モッコウバラのワンピース」
    婚約者の実家のある郡山へ向かう律子。「からたち香る」
    母の七回忌法要のため実家を訪れた武文。「菜の花の家」
    母方の親戚の結婚式に向かう小学4年生の知里。「ハクモクレンが砕けるとき」
    宇都宮、郡山、仙台、花巻と桜前線が北上するように、北へ向かう人たちのふるさとをテーマにした短編集で、それぞれの名所もおさえてくれているので、東北を旅した気分になれます。
    帰る場所、誰かが待つ場所をいつまでも大切にしたいと思う。

  • 郡山、仙台、花巻…桜前線が日本列島を北上する4月、新幹線で北へ向かう男女5人の物語。特に何かが起こるわけでもないが、彩瀬まるさんらしい美しい物語だった。ぜひ春に読んでほしい1冊。

    ブログにて詳しいレビューしています*
    https://happybooks.fun/entry/2021/03/05/170000

  • これが最初 郡山駅に並木に出てきて馴染みがあるのも援護射撃。ここから無条件に彩瀬まる読んでます

  • 4月。東北へ向かう新幹線に乗った男女5人は桜前線と共ににそれぞれのふるさとへ向かう。
    理由は様々。どの登場人物も心に故郷や家族に対する複雑な想いを抱えていたりする。
    家族って近い存在だからこそ難しかったりするし、私も共感できるな〜っていう部分がありました。
    東北という土地の描かれる情景も美しかったし桜も見てみたくなりました。
    連作短編なのだけれど、私はモッコウバラのワンピースの素敵な恋をした祖母と孫のお話とからたち香るの福島の実家へ結婚のあいさつをしに行くふたりのお話が好きです。
    ふるさとって深い。

  • 5作品収録の短編集
    すべてのタイトルに花の名前が入っており
    物語の中でその花がでてきました
    新幹線で移動し、その先で人々のいろいろな話で
    それなりに楽しめました

  • ふるさとをテーマに描かれた短編集、の一冊。

    記憶にある東北の景色を思い出しながら手にした作品は一話目からじんわり。
    「からたち香る」の律子のふと頭をよぎる思いと婚約者家族の思いにドキリとさせられた。
    被災地のためにじゃなく、普通に美味しいものを食べて美しい景色を眺めて、楽しんで帰る、そういう接し方が嬉しい…のくだりに、たしかにそうかも。それでいいんだ、それが一番なのかもと思わされた。

    「ハクモクレンが砕けるとき」の幻想的な雰囲気、宮沢賢治に絡めた美しさも印象に残った。

    今、誰かが待っていてくれる場所で、思い出はもちろん、新しい気づきを心のお土産にもらい、それを心の糧にして、明日もがんばる気持ちになる…きっとそんな場所がその人にとってのふるさとなんだろうなぁ…そんな想いが読後にこみ上げてきた。

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      311に合わせて読んだのかな?
      くるたんはいい評価ね✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      私、期待しすぎたのか、ちょ...
      こんばんは(^-^)/

      311に合わせて読んだのかな?
      くるたんはいい評価ね✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      私、期待しすぎたのか、ちょっと物足りなかったわ。
      でも、また彩瀬まるさん読んでみようかな。
      2019/03/11
    • くるたんさん
      けいたん♪
      こんばんは(*^^*)♪共読だね(⸝⸝˃̶͈ ૢ ૢ˂̶͈⸝⸝)
      たしかにソフトクリームが一番印象的かも。

      まだ2冊目だからよ...
      けいたん♪
      こんばんは(*^^*)♪共読だね(⸝⸝˃̶͈ ૢ ૢ˂̶͈⸝⸝)
      たしかにソフトクリームが一番印象的かも。

      まだ2冊目だからよくわからないけどまあまあかな。
      眠れない夜はからだを脱いでを今度読んでみようかなぁって思ってるよん(*^^*)♪
      2019/03/11
  • 彩瀬まる『桜の下で待っている』実業之日本社文庫。

    初読みの作家。珍しいサイン本ということで興味惹かれて購入。

    東北を舞台にした懐かしさを感じる優しい物語ばかりを集めた短編集。『モッコウバラのワンピース』『からたち香る』『菜の花の家』『ハクモクレンが砕けるとき』『桜の下で待っている』の5編を収録。

    心が風邪をひいた時に読んで欲しい短編集。

  •  東北新幹線を北上しながら、春の花に彩られたそれぞれのふるさとの物語が詰まった短編集。婚約者の実家に帰省する『からたち香る』、祖母の手伝いに帰る『モッコウバラのワンピース』と車内販売のお姉さんが主人公の表題作がお気に入り。『ハクモクレンが砕けるとき』の生々しい描写は心が抉られるよう。実家は同じ市内にあるので、新幹線に乗っての帰省には少し憧れる。初恋の人と久しぶりに会って握手するっていいなぁ。

  • 彩瀬まるさんの本、ここ数年とっても好き。
    なんといっても、(個人的に)ハズレがない。
    温かいなかにも、尖っていたり痛々しかったり、ちょっと怖いお話も結構あるけれど、この小説はタイトルや表紙からして優しげな感じがして、受けた雰囲気は間違っていなかった。

    故郷、家族、旅にまつわる5つの短編集。
    舞台は主に東北地方。青森が残念ながらなかったのは恐らく、東日本大震災の影響を強く受けた土地を選んだからだと思う。
    彩瀬まるさんは関東の方だけど、震災当日に東北を旅行していて被災したらしく、その関連の本も出されている。震災をモチーフに描かれた「やがて海へと届く」という小説は私も以前に読んだ。

    福島にある彼氏の実家へ、彼女である主人公が一緒に帰る「からたち香る」は、放射能のことを気にしながらもそれを口にしていいのか迷う様子がリアルだった。
    その土地に住む人にとってそこは愛する場所だけれども、よその土地の人にとっては少しの脅威を感じる場所になる。震災の影響で、いろんなかたちで傷ついた人がたくさんいるのだという事実を感じた。
    他の短編にもタイトルや話中に必ず花や植物が登場する。
    「ハクモクレンが砕けるとき」はほんの少しのホラー要素も混ざっているような幻想的なお話で(基本は温かいのだけど)、表題作は一番最後に据えられているのだけど、最後に配されたことに大きな意味がある。

    故郷は楽しいばかりの場所ではないし、家族というものは面倒くさい面もある。「菜の花の家」はとくにそういう側面が表れている。
    だけど、故郷や家族はなくならない。亡くなっても、なくなるものではない。
    帰る場所とは思えなくても、それは確かに存在している。
    その少しの鬱陶しさや、心強さを、感じられる物語群だった。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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