流転の海 第6部 慈雨の音

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103325154

感想・レビュー・書評

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  • 流転の海シリーズの6部です。
    このシリーズの本は数年に一冊ペースでしか出版されないので、いつも読み始めは前の話がどうだったか忘れてます。
    だから読んでいる内に以前の話を思い出しながら読むという形になりますが、前回の5部は珍しくはっきりとストーリーを覚えてました。

    5部で主人公の熊吾は駐車場の管理人という職を得て、妻の房江は小料理屋で働く。
    それで魔窟の如き「蘭月ビル」に住む熊吾の妹に一人息子の伸二を預ける。
    何故ちゃんと覚えていたかというと、前作のラストが印象的だったからです。
    その「蘭月ビル」に住む、いかにも癖のありそうな美少女が最後に出てきて、その少女の佇まいに海千山千の熊吾ですらゾクッとなる。
    というその場面が強烈に記憶に残っていて、多分次はその少女が熊吾一家に大きく関わると思ったからです。
    でも想像は全く外れてしまいました。
    名前がちょこっと出てくるだけで実際に登場しない。
    肩透かしにあった気分でした。

    毎回、熊吾一家は何かと事件に巻き込まれますが、今回は特に大きな出来事もなく静かな印象を受けました。
    だけどそれは嵐の前の静けさのような気もします。
    今回からまた熊吾は中古車のブローカーという新しい事業を始めます。
    それに伴う新しい事件や人間関係が生まれそうだし、多分例の美少女も後々登場しそうな予感がします。
    とにかく、今回はタイトルの慈雨の如く静かに淡々と流れるお話でした。

    前回は房江さんは我慢強くて賢い人だと思いましたが、それに加えて今回は優しく思いやりのある人だと思いました。
    彼女の唯一の欠点は生家が貧しく教育を受けられなかったという猛烈な劣等感があることですが、長所に比べたらそんなもの、短所とも思えない程度のものだと思います。

著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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