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- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103516095
感想・レビュー・書評
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かつて大輪の花のようなダンサーと恋に落ち、夢に破れた退役軍人の父親は、食べていくために社交ダンスの教室を開いている。十八歳の娘は、そんな彼の翳りのある眼差しに同情しつつも口の上手い、プレイボーイ風の生徒に惹かれる。恋愛のつかのまの輝きと、その後に押し寄せる哀しみ……。
ベトナム人作家による表題作からは、音楽ばかりか風音や息づかいまでもが聞こえてくる。だが、かの国で恋愛小説というジャンルが花開いたのは八〇年代後半のこと。戦中や戦後の文学は、国家や民族の大義に奉仕することが求められたという。
本書にはほかにもタイ、インド、モンゴル、インドネシアなど十の国・地域のベテラン作家たちによる短篇が収まる。倦怠感のまつわる作品の多いなか、異彩を放つのは、台湾の離島に住むタオ族の物語。呑んだくれの男が娘のためにシャコ貝を採ろうと海の底まで潜っていく。華やかで美しい。
(週刊朝日 2011/4/8 西條博子)詳細をみるコメント0件をすべて表示