- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103519911
作品紹介・あらすじ
戦わない「軍隊」は何を目指す? 勤続20年、捨て身の自伝で国防の現場を明かす! 魂の抜け殻だった防衛大生、平時にしか通用しないリーダーを育てる幹部候補生学校、007から戦術を学べという司令官。そして創設から携わって8年、未完のまま去らねばならなかった自衛隊初の特殊部隊――。イージス艦「みょうこう」航海長として北朝鮮の拉致工作船と対峙した著者が、摩訶不思議な組織のすべてを語り尽くす。
感想・レビュー・書評
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自衛隊の特殊部隊創設に携わった伊藤さんの半生の記録。自衛官として生きていくための矜持はなにかを常に考え、悩み、常にその時の最適な行動を選択してきた人物の自伝。国を守り、国民を守るために訓練を重ねる。自衛隊の存在を否定する人々含めて国民すべてを守ることや、軍隊ではない組織の指揮命令系統、法律に従いつつ有事の際はどう行動するべきか等、自衛隊という枠組みだからこそのコンフリクトが山のようにある。自衛官がどんなことに思い悩んでいるのかを垣間見ることができる。
伊藤さんは物語の語り手としても一流だと思う。
経験談からにじみ出る、人物や組織の雰囲気が肌感覚として伝わってくる。
『邦人奪還』では小説という形で、自衛隊特殊部隊を描いている。
次回作もきっと創作中だと信じて、待ち続けたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
借りたもの。
前著『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』( https://booklog.jp/item/1/4166610694 )であまりページを割かれなかった、著者の自衛隊に所属していた頃の回想録。
そこで見えてくるのは、“自衛隊とは戦争ができる組織ではない”ということだった。
それが併読していた池上彰『知らないではすまされない自衛隊の本当の実力 』( https://booklog.jp/item/1/4797395273 )を読んでいて感じた、温度差のようなものの正体だった。
正面装備が最新であっても、それを使うことをどこまで想定しているのだろう……
平時での規律だった動きの訓練はできるけど、有事での動きを全く想定していない。
自衛隊が軍というより公務員の気質であることが伝わってくる。国内法に乗っ取って運用されている。
自衛隊に入り幹部候補生となり、その後、防衛大生の教育にも携わった著者を通して、教育制度が尊法精神学ぶ教育システムであることからも伺える。著者はそれにも疑問を呈する。
もちろん、それは大事なことなのだが……
有事、非常事態の時にそれが通用するのか?そのジレンマともどかしさが散見される。
有事でで必要になってくる価値観――「国のために死ねるか?」という死生観――については、前著で言及されていた。この本ではその根底に流れるものについて言及している。
先の大戦時を生き抜いた祖母や父の影響を強く受けていることを語る。それは環境要因なのか、生前からの特質なのかは何とも言えないが……
「戦後反省」という理由で全否定できない価値観がある。同時に、有事のこの価値観は、平時の際に忌み嫌われるものでるが。
著者のその後の人生を大きく変えた不審船事件について、著者の感情も併せて書いている部分が、非常に興味深かった。
今まさに日本人を拉致しているかもしれない船を前に、攻勢も何もできず逃がしてしまったこと。乗り込む事を想定した際、防弾チョッキ代わりに少年マガジンをガムテープで身体に巻き付けたという装備(といえるのか?)を送りこもうとした事など。結果的には乗り込めなかった訳だが……
自身の命がかかっているのに装備も満足でない状態でその命を受けた隊員は、「死」を覚悟していた。しかし任務の“目的”が何で、どのように確実に遂行するのかを考えているのか、著者は懐疑的だった。
命令を妄信的?に遵守するのは日本人の性なのだろうか?
隊員が装備が不十分であることに反論しないことにも問題を感じ、そうした装備がないことも然りだった。
読んでいて私は、兵士が死を覚悟しているのは前提で、その生存率をあげるための装備や環境をなぜ整えてあげられないのか?というもどかしさがあった。
後半は駆け足で進む。
特殊部隊創設の準備期間の少なさ、創設に関わる人員の少なさに防衛省の本気度を懐疑的に思いつつ、自身も学び、人を育てる。しかし突然の異動命令、そして退職。
本全体にたくさんのジレンマがあった。
『自衛隊失格』とは著者がだったのか、自衛隊が、なのか、考えさせられる一冊。 -
自伝。幼少期から体育大学、教育隊、候補生学校、防大教官、中級学生、みょうこう、不審船事案、特別警備隊の立ち上げ、転勤の辞令と退職。これを読むと邦人奪還の藤井が彼のことだというのがわかる。まぁ当たり前か。
強い覚悟を持って本気で生きていくことが自衛隊という組織でできなくなってしまった。では退職後、フィリピンに渡ってから、何に向かって本気で生きているのか。今の彼の想いが聞きたい。 -
伊藤君は自衛隊での私の後輩筋にあたる
前著もそうだが、伊藤君はどうしてこうも自己顕示欲が強いのか?
確かに伊藤君のやってきたことは認める
が、勘違いも多い
自衛隊特殊部隊のそのレベルは米軍他と比して残念ながらまだ低い
伊藤君はアメリカ海軍シールズを見下しているらしい
私の友人はシールズ、グリンベレー、海兵隊リーコンその他様々な部隊で活躍してきたししている
自分自身自衛隊出身でこんなことを書きたくはないが、自衛隊は銃弾飛び交う戦闘は経験していない
それは幸せであると同時に誤解を招くことを承知でかけば残念なのだ
訓練はとても大切どが、実戦の感覚はやはり実戦でしか育たない
アマゾンのレビューに伊藤君の前著に対して真に的を射た物があった
残念ながらその方のレビューは現在削除されてしまっているが礼賛ばかりのレビューに対して珍しく厳しいものだった
それは私の言いたいことと全くと言ってよいほど同じだった
不遜
伊藤君は悪いが不遜である
そのレビューにはジムファイターの戯言、と書かれていた
その方のご友人も某国の特殊部隊員だそうでそのご友人の言とのこと
さもありなん だ
どなたかのレビューで話を盛りすぎとの指摘があったがその通り
俺はすごいだろ?こんなヤバイこともしてる!
本物ならばそのような事はしないのだ
言うものは知らず
知る者は言わず だ
自衛隊後輩の諸君
君達の日々の訓練、活躍は素晴らしい
だからこと、伊藤君の不遜を半面教師とし
諸君の身の安全、そして、国の安全安寧の為に最大限の注意を払って戴きたい
愛する自衛隊と日本を想って
古き元自衛官より -
タイトルから、自衛隊がダメなのか、著者が自衛隊に失格なのか、はたまた、それ以外の意味か、そんな関心から読み始めました。伊藤祐靖「自衛隊失格」、2018.6発行。著者は、1964年生まれ、日体大から海自に入隊、20年勤務し、42歳、2等海佐で退官とのこと。軍国ばばあと不良少年、幹部になるまでの学び、防衛大学校の亡霊たち、未完の特殊部隊の4部構成。出だしから何だか鼻につく、斜に構え、ひねくれた感じが。素直さが欠けている。さらっと一読。完全燃焼したくて入隊とのこと。そして、自分の信念だけで行動したいと。動機や考え方が組織で仕事をするには向いてないですね。むしろ、20年よく勤務されたと思います!
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生き方がすごい。
筋はシンプル、だがそれが難しい。
こういう生き方に憧れはするが、こういう強さはない。
日常と非常にあっては、守るべきものは当然異なる。
いかに、捨てることができるかで大事なことが決まってくる。
うーん。
自衛隊も、所詮は官僚組織。
帝国陸海軍が崩壊した、悪しき伝統の萌芽を、きっちりと内包している。 -
内容(「BOOK」データベースより)
不良気取りか「お口半開き」かミリオタしかいない二等海士時代、平時にしか通用しないリーダーを育てる幹部候補生学校を経て、魂の抜け殻の防衛大生を教え、世界を股に掛ける軍艦乗りに。イージス艦「みょうこう」航海長として北朝鮮の工作船と対峙したことで、立場は一変し、自衛隊初の特殊部隊創設へ―。しかし、司令官は「『007』から戦術を学べ」という相変わらずの「お花畑」…。それでも、「特殊部隊」では本気だった。これが自衛隊員のリアルか!?勤続20年、捨て身の自伝で「非戦」の「軍隊」の現場を明かす。 -
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