世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3579
感想 : 318
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  • Amazon.co.jp ・本 (618ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534174

感想・レビュー・書評

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  • とりあえず、思いのほか博士の話や主人公の物事の考え方が論理的かつしっかりとしていて面白かった☆

    いろいろと回収されていない伏線(僕が理解出来なかっただけ??)もたくさんあったし、登場人物の背景がほとんど説明無いので登場人物自体にも余り共感は出来ないんだけど、逆にそれは読んでいる人が自由に想像してくれれば良いのかな☆しっかり説明してくれて伏線回収してくれる本じゃないとダメな人には余りおススメしませんが、作中に出てくるいろいろな言葉が印象的かつ引っかかるところがあるので、受け身ではなく能動的に読書したい人にはおススメ。

    個人的には、いろいろな事に対して反省はするんだけど、でも後悔はしていないところがすごく良かった♪あと、「公正さは愛情に似ている」「与えようとするものが求められているものと合致しない」ってところも結構良かった☆あと、何と言うか、人肌が恋しくなると言うか、その辺りの描写もすごく良かった♪それと、スカした感じの主人公が途中から自分の人生の些細な日常を愛おしむようになっていくところとかも良かったです。

    村上春樹さんの本はどの本もなかなかのページ数なので気楽に読める感じではありませんが(笑)、またちょくちょく読んでみたいと思います☆

  • 最初は2つの物語の繋がりがわからないまま、何かあるはずだけど一体なんなんだろう…と思いながら、ハードボイルド〜の世界ではスピード感やハラハラドキドキを感じながら、世界の終わりの世界ではゆったりとしたファンタジー世界を味わいながら、読み進めていました。
    博士からの種明かし後、2つの世界が見事にシンクロし始めて興奮しました。
    また百科事典棒はミクロの中の無限な世界に惹き込まれてしばらく思い巡らせてしまいました。
    あと24時間ほどで心を失ってしまう主人公(in ハードボイルド)の、自分の運命についての考え方や受け入れ方、残された時間の行動はとても丁寧で好感が持てました。
    私だったら限られた時間で何をすれば良いのかわからずパニックになると思います。
    "「人間の行動の多くは、自分がこの先もずっと生き続けるという前提から発しているものなのであって、その前提をとり去ってしまうと、あとにはほとんど何も残らないのだ。」"
    と思いつつも、彼は彼なりの無駄のない素晴らしい最後のときを過ごしたと思います。
    また自分を失うことや死を近くに感じると、人間は無意識のうちに、幸せ探しをして些細なことにも感動するのかもしれないなと感じました。
    "「ボブディランって少し聴くとすぐにわかるんです。」
    「ハーモニカがスティービーワンダーより下手だから?」彼女は笑った。…
    「そうじゃなくて声が特別なの。」
    「まるで小さな子が窓に立って雨降りをじっと見つめているような声なんです。」
    「良い表現だ」"

    いよいよ残り時間あとわずかとなったとき、日比谷公園でビールを飲んで芝生の上で過ごして、自然の美しさに触れたとき、初めてこの世界に未練を感じていたのは切なかったです。

    一方で、世界の終わりの僕は、影と一緒に街からの脱出計画を企て、この街から出て本来の自分を取り戻し、正しい世界で生きて死ぬんだと決心します。ただ、彼はこの街に居心地の良さを感じて好きになっており、それに何より愛する彼女と離れなければならないことに苦悩します。
    彼女の心を取り戻すためのキーが、音楽だったこと、手に入れた手風琴で音を探し続けて、探し出したメロディが『ダニー・ボーイ』だったところは素敵だなと思いました。
    "「ここには何もかもがあるし、何もかもがない。そして僕は僕の求めているものをきっとみつけだすことができる」
    「私の心をみつけて」"

    その後、ハードボイルドの主人公が晴海へ移動し、海の見える人気の少ない場所に車を止めて、ボブディランをリピート再生し、自分の人生に祝福を与えるところ、彼が出会った人々にも祝福を与えようとするところ、目を閉じて最後の瞬間を迎えるところには美しさを感じました。
    "「太陽の光が長い道のりを辿ってこのささやかな惑星に到着し、その力の一端を使って私の瞼をあたためてくれていることを思うと、私は不思議な感動に打たれた。宇宙の摂理は私の瞼ひとつないがしろにしてはいけないのだ。
    私はアリョーシャカラマーゾフの気持ちがほんの少しだけわかるような気がした。おそらく限定された人生には限定された祝福が与えられるのだ。」"

    博士は主人公に、新しい世界には彼が失ったものがあり、それを取り戻すことができると伝えます。
    彼が失ったものとはなんなのか、それは愛だと思いました。
    世界の終わりの主人公は、図書館の彼女に向かって真っ直ぐに、愛していると告白し、彼女が居ない世界で生きる意味はないと感じて、街から出ることを拒否しました。
    愛の力は偉大です。人は愛のある世界で幸せを感じ、愛の中に生きる希望を見出すのだと思います。
    "「君は今、心というものを失うことに怯えておるかもしれん。私だって怯えた。それは何も恥ずかしいことではない」
    「しかしあんたはその世界で、あんたがここで失ったものを取り戻すことができるでしょう。あんたの失ったものや、失いつつあるものを」
    「あんたが失ったもののすべてをです。それはそこにあるのです」"
    "「私はこれで私の失ったものを取り戻すことができるのだ、と思った。それは一度失われたにせよ、決して損なわれてはいけないのだ。私は目を閉じて、その深い眠りに身をまかせた。ボブディランは『激しい雨』を唄いつづけていた。」"

    この作品に限らずですが、村上春樹作品は、ストーリーだけではなくて、表現力と言葉の丁寧さに魅了されます。
    読み終わったあと、良い時間をもらえたなぁと思いました。

  • 村上春樹の長編で一番面白いやつ

    • りまのさん
      雨宮さん
      私も、そう思います。フォローありがとうございました!どうぞよろしくお願いいたします♪りまの
      雨宮さん
      私も、そう思います。フォローありがとうございました!どうぞよろしくお願いいたします♪りまの
      2021/01/31
  • 静かで美しい世界の終わりに
    とどまることを選択したのは
    しょうがないこと

  • とてもおもしろかった。不思議な内容。
    2つの物語の繋がりもよかった。

  • 優秀な計算士である主人公。ある日、地下深くの研究所で博士の依頼を受けたことから運命の歯車が狂い始める。

    村上春樹の初期の作品。架空の世界観が村上春樹らしく、上質なファンタジーだと思う。現実世界と脳内世界(世界の終わり)が少しづつリンクしていく様子が巧妙で、読んでいて飽きない。

  • ストーリー云々以前に、やはり表現の一つ一つがいちいち面白い。
    余りある表現の中から自分の好きな表現をいくつかでも心に留めておけば、それだけで村上春樹の小説を読んだ意味があるんじゃないかと思う。

    個人的には〈世界の終わり〉の僕が心の存在や影の意味を知り始めてからの話や〈ハードボイルドワンダーランド〉の私が自分の生の終わりを意識して最後の1日を過ごすシーンが素敵だった。
    2人の主人公が自分の殻を突き破って世界の美しさをしっかり見つけている様子がよく描かれていて、そうなる前と後で世界は変わっていないのに見え方がこんなにも違うのかと考えさせられた。
    世界が変わらなくても自分の考え1つで捉え方がこんなにも変わる、というのは現実でも案外そうなのかもしれない。

    また、〈ハードボイルドワンダーランド〉の地下で繰り広げられる場面などは、暗闇という他の情報がなく表現が難しいだろう状況をよくもまあここまで文章で伝えることができるなあと感嘆としてしまう。
    どんなに突拍子のないシーンでも表現の多様さでありありとシーンが思い浮かべられる凄さが村上春樹がファンを熱狂させる理由の1つだと思う。

  • 村上春樹の作品としては物語性が分かりやすい印象。
    観念的なのはいつもどおり。

  • 村上春樹はあまり好きじゃなかったけど、これは本当に面白かった。

  • 最初から最後まで文学的な美しさで輝いている。傑作。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

村上春樹の作品

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