1Q84 BOOK 3

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (602ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534259

感想・レビュー・書評

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  • 『ねじまき鳥クロニクル』は旅行へ行くたびに持っていって、表紙が取れるほど読み返した。
    『海辺のカフカ』も好きだったし、いくつかの短編集も、エッセイも、偏愛していた。

    村上さんの長編を読んだには、10年ぶりくらい。
    変わらなさすぎる表現に寒気を覚えてしまった。

    当時のように夢中で世界観を楽しめない。

    くどい性描写や未成年との性交には拒絶感が大きかった。これってオッサンの夢を語ってない!?

  • 何度も読んでます。牛河の存在が大きく、物語にスリルを与えて最後までスルスルと読んでしまう。タマル の言葉の言い回しも、素敵。恐ろしさと知的さ。青豆と天吾、2人は巡り合えるのか…キャラクターの魅力も強い!


    ----------以下メモ----------

    ここはタフな世界だ
    希望のあるところには必ず試練がある。あんたの言うとおりだよ。そいつは確かだ。
    ただし、希望は少なく、おおかた抽象的だが、試練はいやというほどあって、おおかた具象的だ。それも俺が身銭を切って学んだことの一つだ。

    人間は時間を直線として捉える。長いまっすぐな棒に刻み目をつけるみたいにね。でも実際は時間は直線じゃない。もんなかっこうもしていない。それはあはゆる意味においてかたちを持たないものだ。

    どうやら手詰まりみたいだ。変数が多すぎる。いくら元神童でも答えを出すのは無理だ。

    オッカムの剃刀の法則。なるったけシンプルに仮説を積み上げてみよう。

    マクベスの3人の魔女。きれいはきたない。きたないはきれい。親指の疼きが教えるところ
    よこしまなものがこちらにやってくる
    ノックがあれば、誰であれ、錠前よ開け

    余る心温まる話じゃない
    事実にとって大事な要素はその重さと精度だ。温度はその次のことになる。

    何によらず、普通ではないことをすれば必ず誰かは腹を立てる

    いったん自我がこの世界に生まれれば、それは倫理の担い手として生きる以外にない。よく覚えておいた方がいい。ヴィトゲンシュタイン

    人は受け取ったものの代価を支払わなくてはなりません。

    どんな人間にも思考や行動の定形は必ずあるし、定型があればそこに弱点が生まれる。

    針で刺したら血がでてくるところが現実の世界です
    じゃあ、間違いなくここが現実の世界だ

    人が1人死ぬと言宇野は、どんな事情があるにせよ大変なことなんだよ。この世界に穴がひとつぽっかり開いてしまうわけだから。それに対して私たちは正しく敬意を払わなくちゃいけない。そうしないと穴はうまく塞がらなくなってしまう。

    ユング
    冷たくても、冷たくなくても、神はここにいる。

    心という作用が、時間をどれほど相対的なものに変えてしまえるかを、その光のもとで天吾はあらためて痛感する。

  • 『1Q84』完結編。BOOK1、BOOK2と同様の青豆・天吾の視点に加え、敵側の牛河の視点も加わったことでおもしろさが倍増した。それぞれの視点で語られる時間が微妙にずれているのもサスペンスを盛り上げる。とは言うものの、主役の2人はほとんどカン詰め状態で動きはなく、よくこの長さを読ませたなと感心した。SFやファンタジーで使い古された“多元宇宙”“異世界”とは違う不思議な世界観を堪能した。3冊を通して語られたのは結局、青豆・天吾のラヴ・ストーリーだったのだろうか。最後の展開には「!」となったけれど……。やべえ、村上ファンになりそうだ(^_^;)。

  • きれいに終わった。きれいに終わり過ぎたかもしれない。二人は歪んだ世界の理から逃れた。確かにめでたい。
    しかし著者が追求していたのは歪んだ世界からの逃れ方だったのだろうか。物語の主題は、無事に逃げられるか否かという事だっただろうか。
    暴力、性欲、孤独、過激な宗教、といった人間の暗部を取り上げてはいたが、その大風呂敷は、BOOK1の豊かさから期待させたほどの高まりを感じさせないままに閉じてしまった気がしている。孤独、これは唯一きれいに包んでくれた。青豆の孤独も、天吾くんの孤独も、変質しないまま救いを得た、その過程は感動的な読書体験を提供してくれた。
    そのほかのテーマは、確かに二人の個人を主人公にして考察するには大き過ぎるものなのかもしれない。きっともっと大きな主人公が必要なのだろう。マルケスが「100年続いた一家」を主人公に設定したのもそういう意図なのかもしれない。個人にできることはそれらから逃れること、そう考えると、ご都合主義的に思えるこの結末にも必然性があると納得できる。

  • 父親の本棚にあって気になってはいたもののなかなか読めていなかった。大学1年の春休み。隙間時間をフル活用してようやく読了。

    読み進めていくと、徐々に謎が解き明かされ、ひとつのひとつのエピソードが繋がりを持っていた。登場人物の描写が印象的だった。村上春樹の世界に引き込まれた。

    こんなに時間を忘れて本を読んだのは久しぶり。
    作者やジャンルに囚われず、時間がある大学生のうちに沢山の本を読んでいきたいと思う。

  • 逃亡中に天吾との奇跡のような、作為的であるような妊娠を知る青豆。
    父から実子ではないことを示唆されどこか気持ちの整理をつけた天吾が、父不在の病室のベッドで見つけたのは≪空気さなぎ»のなかで眠る10歳の青豆だった。その姿は空気にとけるように消えてしまったが、再び目にしたい一心で昏睡に陥った父を毎日見舞うようになる。
    さきがけの命令でリーダーを殺した青豆を探していた牛河は、天吾と青豆のつながりに気付き天吾の行動を見張る。
    三者の思惑や願いが絡み合い物語は終息へ走り出す。
    ふかえりや老婦人が物語の中心から離れていきその後を知ることができないのは残念だけれど、青豆と天吾の純愛を描いた物語としてはハッピーエンドへ。タマルさんが一番好き。次点は牛河さん。

  • 「1Q84 BOOK3」。村上春樹さん。


    殺し屋とゴーストライターの犯罪物語から始まった長い物語は、
    解釈のはっきりしない謎めいた事象を混合しながら、
    勝負の殺しのサスペンス、出会えない運命の恋人たちのラブストーリーへ。


    そして、「BOOK3」に上陸すると、


    主人公たちに迫る組織の執拗な手との、
    互いに分かっていない追いつ逃げつつのサスペンス。


    そして、奇妙で不可解な世界からの脱出のカタルシス。


    殺しがありだましがあり、親と子の出生の秘密があり純愛があり、
    マリファナと美少女と組織との暗闘があり、
    妊娠と追跡と張込みと大脱走の、てんこ盛りエンターテイメントでした。








    以下、超ネタばれの、自分のための備忘録。










    なにせ読み終えてから日が経ち過ぎたのでかなりうろ覚え...。












    #


    殺し屋でスポーツジムのインストラクターの女性「青豆」。


    ゴーストライターで予備校講師である男性「天悟」。


    この二人の意識を交互に描いて、BOOK2まで経過。


    天悟さんは「ふかえり」という美少女が書いた、幻想的な小説をリライトするゴーストライターの役割をこなして以来、やや身の回りが不穏。
    小説のモデルのような「さきがけ」という新興宗教が原因。


    青豆さんは、悪質なDV加害者の夫を何人か殺している。
    元締めになっているのは、大富豪でセーフハウスを営んでいる老婦人。
    少女をレイプしている、という、「さきがけ」の教祖を殺した。


    そして、青豆と天悟は小学校のときに同級生だった。
    お互いに今、惹かれあっているけれどめぐり合えない。
    時代は1984年なのだけど、奇妙なことが起こり、月が二つある世界。
    青豆はこの世界の事を「1Q84」と呼んでいる。


    「自分が死ぬことで天悟が助かるのでは」
    という思いで、青豆は、自殺しようとしたが…。

    #

    と、いうところからが「BOOK3」。

    青豆は自殺しようとしたけれど、「天悟に会いたい」という思いで踏みとどまる。
    教祖を殺したことで、「さきがけ」の人々が青豆を探して暗躍している。
    高円寺のマンションに隠れ家が準備されて、そこで暮している。
    すぐに次の場所に移る予定だったけれど、偶然天悟をみかけたことで、高円寺に住み続ける。外出せずに、見られないように。

    天悟は、「ふかえり」をアパートに匿いながら、千葉の施設で痴呆になっている父親を見舞いに行く。
    もう危ない、という知らせがあって、また見舞いに行く。
    看護師の若い女性とマリファナを吸って添い寝したりする。
    天悟は昔から、「父は自分を愛していない気がする」
    「母は別の男と浮気していた気がする」
    というぼんやりした想いをもっていた。
    痴呆の(はずの)父とのやりとりで、どうやら、
    「自分は父の実子ではない」
    ということを知って、なんだかスッキリする。

    天悟の父親は、NHKの集金人だった。

    「ふかえり」が潜んでいる天悟のアパート。
    そして青豆が潜んでいるマンション。
    どっちにも、かつての天悟の父親のような、しつこい集金人が現れる。
    なんだけど、問い合わせをしてもNHKにそんな人はいない、という。

    「BOOK3」になって、「牛河さん」も、1/3の語り部になる。
    かつて弁護士だった中年男。
    子供のころから容貌が醜悪で、苦労してきた。
    弁護士になって成功して、妻子と家をもって成功した。
    なんだけど、何かしら失敗を演じて免許を失い、妻子は去った。
    今は「さきがけ」に雇われて、胡散臭い仕事を担っている。

    牛河は、「さきがけ」から青豆を探せ、と言われる。
    執拗なプロを情報収集で、仮説として「老夫人との絆」まで突き止める。
    そして、「天悟と同級生だった」ということも。
    天悟もゴーストライターとして「さきがけ」に絡んでいる。
    「青豆は天悟に会いに来るのでは」という野性の勘で、天悟のアパートに張り込む。

    「BOOK3」のわくわく感は、
    「青豆の天悟への純愛の思い」
    「天悟の、親をめぐる解決されないミステリー」
    そして、
    「牛河が徐々に真相に、青豆と天悟の幸福を破壊する分岐点に迫って来る」
    というサスペンス。

    三者の意識を交互に行き来する語り口。
    それも、多少の時差があるので、
    「青豆、牛河に見つかったか?」みたいなドキドキ感。

    そしてなんと青豆さんは妊娠します。
    セックスしてないのだけど、
    「教祖を殺した夜に受胎したようだ。相手は、何十年も会っていないけれど、天悟である」

    えっ?...

    そして、「青豆は天悟と巡り合えるのか?」

    #

    牛河の意識の中で、天悟の両親の秘密が語られる。

    天悟の母親は、天悟が幼いころに若い男性と駆け落ち?した。
    そして、どうやらその男が、温泉場で母親を殺した。

    父親は、それを天悟から隠しぬいて生きてきていた。

    #

    ところが、牛河は、「天悟と青豆のいる世界」に深入りしてしまったせいか、

    「あれ?月が二つある?」

    ということに気づく。

    それに気を取られている間に、青豆に「逆尾行」される。

    そして、青豆から連絡を受けた、「老婦人のボディガード」である「タマル」さんが動き出す。

    ※この「タマル」さんが、フィリップ・マーロウばりの粋なセリフと知性に溢れた男。
    同時に、老婦人と青豆の段取りを全て付ける、プロフェッショナル。
    どうやら自衛隊とか軍隊の経験者の、孤児。
    殺しも平然とできて銃器も扱える。そして、ゲイである。

    「タマル」さんが、牛河を襲い、拷問して尋問して、殺してしまう。

    これで現実的な危機はとりあえず回避される。

    「タマル」が段取りをつけて、とうとう天悟と青豆は出会う。

    そして、「1Q84」が始まった、首都高速3号線の非常階段に行く。

    #

    牛河の遺体は「さきがけ」が処理する。

    その遺体からは「リトル・ピープル」が現れて、「空気さなぎ」を作り始める。
    (と、いうことは、「教祖」を失った、という危機は、新しいさなぎから孵化する人が後継者になるから大丈夫なのか?という推測もなりたつ)

    #

    3号線に登りきったら、都合良くタクシーが来て乗れる。

    そのままホテルに入って愛し合うのだけど、空をみたら月が一つになっていた。

    だからまあ、「BOOK1」冒頭の非常階段を、上ったことによって、
    「月がふたつある奇妙なことばかりおこる、1Q84の世界は、無事に終わって、普通の1984年の世界に戻ったのかな」とも推測される。


    というところで終わります。
    めでたしめでたし?なのかな?

  • 今回はタマルと牛河の登場により、物語においてキーとなるなど、活躍が光っていた印象。BOOK1からの長い物語が新たなキーとなった人物が活躍を見せ、完結した世界を作り出していたと感じる。終始、牛河のイヤミさ加減が現れていた感じ。「空気さなぎ」にまつわる謎が明らかとなり、青豆のこと、集金人と天吾との接点、事件の動機、全容解明はまだまだ未知な部分もあるが、1984年と1Q84の世界の不思議な交錯を抜けた新たな世界観を感じられる。ラストは1Q84に生きる人物はどうなるのかと思ったが、意外にもハッピーな感じだった。

  • 凄く面白いストーリー。長編苦手だけど、3までくると続きが気になってさらりと読める。惹き込まれる。

  • ふかえりとか、リトルピープルとか、謎はいっぱい残ってはいるけれど、あとは個人の想像でなんとかなるし、とにかく青豆と天吾が巡り合って1984年に戻ってこれて良かった。
    BOOK4はあるのかな?
    蛇足かもしれないけれど、読んでみたいなとも思う。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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