ねむり

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534266

感想・レビュー・書評

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  • 眠れなくなってから17日目の女の話。
    歯医者の夫も小学生の息子も女が寝ていないことに気づいていない。夜がふけると女は長編小説を読み、アルコールをたしなむ。それでも眠気は訪れない。日中もチョコレートを齧りながら読書に励む。睡魔はやってこない。
    誰もいない夜の港に車を停め、物思いにふける女。その車を揺らす二人の男。彼らはいったい何なのか。なぜ女は眠れないのか。答えは教えてくれない。(たぶん答えなんか最初からない)

    ------------------------------

    読みやすいかわりに、わかりやすい答えを用意してくれない村上春樹の短編。
    ふんふん言いながら簡単にページをめくっているが、理解できているかどうかはわからない。夜、寝ているが本当に寝ているかはわからないし、本当に日中起きているかだってわからない。読み終えた後、そういうことを考えた。自分が何を考えているのかわからないし、頭を使って考えているかもわからない。

  • 不眠症(?)、とにかく眠れなくなってしまった女性の話です。
    最後女性は殺されてしまったのか、レイプされて生き残ったのか、それとも車をガタガタ揺らす男たち自体夢だったのか…気になります。

  • これ好き。
    私自身今寝つきが悪くて、睡眠によく悩まされる。
    眠れないし本でも読むか、でこれを読んで、一気に読めた。久しぶりに本に没頭した。
    図書館で借りて読んだけど買おうと思う。
    そんで、また眠れない時に読もうと思う。

  • 村上作品ぽくないところが新鮮。一気に読めた。ねむり、今睡眠で少し悩んでいることもありタイトルに惹かれ読み始めた。
    覚醒しつづけるということ、眠りがない生活。想像がつかないが、ねむりによって色んなことをリセットしてるから悩みから解き離れて、生きていられるんだと思う。積み重なってしまうとしたら、、想像するだけでつらい。

  • はじめて手にとった村上春樹の短編小説
    感情が昂り、楽しめた。何度でも読み返したい

  • 村上春樹の作品の中ではダントツで自分的に共感できる作品。眠れなくなったという些細な出来事から今の平凡な生活に嫌悪感を感じる所がリアルでこの作品を引き立てていると感じた。
    最終的に眠れない現実が夢なのか、眠れない現実がリアルなのか、解らない所がまた良かった。

  • ≪県立図書館≫

    覚醒の物語だ。
    泣くことしかできない。
    その一言が強く響く。
    一番明るいところを選んだはずなのに、
    得体の知れない黒い影は彼女を強く揺さぶる。

    素晴らしい作品だと感じた。

  • 『図書館奇譚』につづくアートブックシリーズ。図書館に1冊あったので借りてみた。このシリーズ、やたら高いので買いたくはないけど、1時間以内に読める気軽さがいいのかも。セレクトセンスもよい感じ。

    で、『ねむり』はねむれなくなった女性の話。でも、不眠症ではないのです。この設定からしておもしろくて、ぐいぐい入り込んでしまいました。
    女性はねむれなくなったことにより、かつて自分が本当に楽しんでいたこと(そして、現在の生活に苦しんでいたこと?)に気づくんです。

    例によってあとがきから読んじゃったんですが、この作品は1989年、小説を書きたいきもちになれなかった時期に書いたのだそう(村上春樹40歳)。『ノルウェイの森』や『ダンス・ダンス・ダンス』が成功を収めた直後。このあとがきを読んでたので、なんとなく当時の春樹氏の感じなんだなぁ〜なんて感じ取りながら読めました。そうじゃないと、ちょっとわかりづらいのかも? でも、若干の隠喩はあるものの、書いているとおりそのままって感じもしました。(たとえば、ねむれなくなる前の記憶が遠のいて、その変化が自分にしかわからないことへの恐怖など。)

    なので、意味がわからない人は、あとがきから読むといいかも!と思います。

    ーー
    追記
    この女性が不眠中に読むトルストイの『アンナ・カレーニナ』が作為的だったので、DVDで観たところ、なるほど…と思いました。『アンナ・カレーニナ』も幸福そうでいて幸福でない(愛が足りない)ことに気づくんですよね。。

  • 眠ることができなくなった主婦の話。睡眠から死へ哲学が展開されていくのがさすがと思える流れだった。

  • 「眠り」が「ねむり」に改題。
    主人公は30歳。歯医者の妻で小学生の母。
    「毎日がほとんど同じことの繰り返し」だが、車(ホンダシティのブルーとか懐かしすぎる)で買い物に行き、スポーツクラブで水泳をし、毎日何一つ不自由ない暮らし。そんな中、金縛りにあったあと、眠れなくなる。普通の不眠というものではなく、何日眠らなくてもまるで平気で、夜じゅう「アンナ・カレーニナ」を読みお菓子を食べ酒を飲む。なのにむしろ健康になり力も漲り若返っている。

    最初は、有閑マダムの優雅な日々? とか思ったが。
    家族関係は良好で、それでも少しずつなにか苛々することもあって、義理の母とも多少の摩擦はあって、普通に面倒で普通に幸せ。いつのまにか本を読まない生活に慣れていた。主婦あるある。

    読みたい、と思ったからだろうか。それとも、食べたい? 飲みたい?
    結局眠れない理由はよくわからない。バッドエンドというほどでもないけど意味不明な終わりかた。

    これは全部夢オチと見るか、所詮人生こんなものという例え(箱の中でなすすべもなく揺さぶられているような)と見るか。

    全体に英文の翻訳みたいな文章だと思ったが、作者あとがきによると、翻訳の仕事もしてたからか。「ニューヨーカー」誌に翻訳掲載されたそうだし。
    国籍不明だけど舞台が日本というのはわかる。
    不思議な絵が国籍不明を増しているのかも。この絵が変わればまた違った印象で読めるかもしれない。

著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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