中庭の出来事

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103971078

感想・レビュー・書評

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  • わけがわからなくなって
    ぐるんぐるん振り回されるのが好きな人にはいいのでは?
    演技と真実とが絡まっていく
    では、普通の状態が演技じゃないかっていうと皆役割を与えられて演じてるだけなのでは?とか考えながらぐるんぐるんあたまがまわる。

    恩田陸さんの作品は、やや尻窄みになりがちで耐性を持って読み始めたので
    なんとかなった感はある。

  • この中庭で、何が起きているのだろう?

    さあ、この場面に、本物の役者は何人いるでしょう?

    ホント、これの連続だ。
    脚本家の神谷。
    中庭にいる女優の芳子と圭子。
    トンネルの中の昌夫と男。
    舞台の上の女優1,2,3。
    中庭にいる細渕と巴。
    最初はよくある話で、別々の場所のキャラクターからひとつの事件を見て
    最終的にはひとつの線で繋がるようなものだろうと思っていた。
    全力で裏切られた。いや、全力で正解だったのか。
    それを自分で決めていい小説を初めて読んだ。
    舞台に上がる人間が段々と増えていく。同心円状に広がる世界。
    どこまで舞台は広がるのかと思って読み進めてみれば、
    最終的には読んでる自分の目の前までやってきていた。
    私もいつの間にやらオーディエンス。
    椅子がキーだったとは気付かなかった。もう一度意識して読みたいな。


    女優1,2,3:犯人はあの男。悔しいけれど、河野百合子じゃない。
    なぜなら、あの日あの時、あたしは新橋であの子とぶつかったから。

    あなたは嘘をついている。
    あなたは河野百合子をかばっている。
    あなたたちは、共犯ですね?

    女優1,2,3:ええ、このあたしが、あの日、あの人を殺しました。


    楠巴:(後ろを振り返る)あら、あたしたち、今、どの中庭にいるのかしら?
    細渕:さあね。それを決めるのは観客だ。


    全員、深くお辞儀をする。

    暗転。

  • 煙に巻かれるような感覚。
    割と嫌いじゃないです。

    「中庭にて」「中庭の出来事」「旅人たち」の3章が入り組んで物語がすすんでいくが、次第にどれが現実でどれが芝居の世界なのかの判断ができなくなってくる。
    劇を演じている人を見ている人の舞台。
    劇中劇を演じる女優の芝居。
    本を読む読者を観客にした語りかけ。
    読み進むうちに、頭が混乱してくるのが楽しい。

  • 前に読んだ、女優さんが出てくる「チョコレートコスモス」が面白く、この「中庭の出来事」も女優さんが出てくるらしいので手に取りました。

    恩田陸さんは、不思議な世界観を作り出すのにかけてはホントにピカイチだな、と感じました。
    現実にありそうでない、美しく脆く繊細な世界。
    この作品も、そんな不思議な世界観にぐんぐん引き込まれていきました。
    全然関係のない3つの出来事が、まるでそこらじゅうに散らばった霧が混ざるように、少しずつ混ざっていく。またバラバラになったかと思ったら、今度は一瞬の内に混ざりきり、最後は濃くなってしまった霧で何もかも曖昧になってしまう。
    そのコントラストがたまらなく美しく、しばらく本の世界に留まって余韻に浸っていました。

    個人的に演劇をしてる身としては、役作りに関してのことは大変興味深く参考になりました。
    ただシェイクスピアの訳は小田島さんより福田さんの方が、恩田さんの美しい流れるような文章にあっていたかと思います。

  • 話の構造が少し複雑で、一読しただけでは分かりづらい部分も多かったが、その分読み応えもある。
    どの「層」がどういう設定なのかを考えながら読むと理解しやすい。
    オチは分かりやすいので、この複雑さを楽しむ話かもしれない。

  • 超面白いけど難しい

  •  前作『夏の名残りの薔薇』で扱った『去年マリエンバードで』を解体し、再構築したような話。
     『去年~』は1人の主人公の本来は1つではない、いくつもエピソードを編集でつなげ、観客にはさも1つのエピソードであるかのように見せている。なので観客には「あれ? この話おかしいぞ」っていうところがたくさんある。 たとえば廊下で女性が振り返ると衣装が変わる。かと思えば、壁にかかっていなかったはずの絵が同じ場面にも関わらず別のアングルからのショットになると、突然あらわれるなどである。
     これは一つのエピソードだとするとオカルトの類になるが、別のエピソードを編集によって繋げ直すことによって起きるある種のイリュージョンだと言われれば、観客の疑問は単純明快に解決である。
     恩田陸は器用な作家だ。『去年~』の1人の女優と複数によるイリュージョンに対して、本作では3人の女優に1つの話を演じさせるそれに加え、2重の入れ子構造の話だ。明らかに本作は『去年~』にくらべ複雑さで勝っている。恩田陸による複雑さへの挑戦といえる。恩田陸は過去の良作を進化させていく天才だと感じた。
    新しい作品も読みたい。

  • 作中作ならぬ「劇中劇」。
    一度読んだだけでは理解しきれないかも。何度も読んで味が出てくる感じかな~。
    でも終わり方は恩田陸のなかでは好きかも。

  • なかとそとがよくわからなくなる作品.
    読後もちょっと首をひねる感じ.

  • 劇作家が殺された事件と容疑者の3人の女優。
    女優が女優を演じる劇とオーディション。
    場面と場面がつながって、くるくると回り巡る。
    どこからが芝居?どこまでが本当?
    事件は自殺?それとも他殺・・・?

    不思議な作品でした。でもすごく好き。いろいろな場面が切り貼りされて、まるで鏡の中にいるみたいだな、って思いました。遊園地にある鏡の部屋みたいなあれです。あんな感じ。現実と芝居が絡み合って、まさに「迷宮」という言葉がぴったり。奇妙な怖さが恩田さんらしいです。恩田ワールドに引き込まれました。

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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