フィレンツェ連続殺人

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104011018

感想・レビュー・書評

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  •  スローフードとエクソシストにくわしい(!?)島村菜津さんの本があまりにも印象に強く、「違う作品も!!」と熱望して著作を調べたところ、目に飛びこんできたのが本書☆
     70~80年代にフィレンツェで起きた現実の連続猟奇殺人事件を題材に、著者らしい驚異的な粘り腰による取材を行って実らせた力作です★

     年に一度、月のない夏の夜に恋人たちが殺され、遺体の一部が切り取られる。さまざまな憶測が飛び交うも、真犯人は特定に至らず。謎の殺人犯を、当時のイタリア人は「フィレンツェの怪物」と呼んで震撼したのだとか……!

     島村さんは、過去にこの事件を執拗に追いかけていたイタリア人ジャーナリスト、マリオ・スペッツィ氏に協力を仰ぎ、共著という形式でこの本をまとめ上げました。今度は島村さんが執拗なまでに事件を掘り起こし、すべてを丁寧に再検証していったのです☆
     しかし、スペッツィ氏が一旦この事件から手を引いていたことには、ひそかに理由があったようで……

     おのれが信じる戒律のもとに、容赦なく人を死に追いやる怪物は、どこにいるのでしょうか?

     怪物という呼び方に、「自分とはまったく縁がない、血も涙もないヤツ。人間じゃない」と、途方もない想像がふくらむかもしれません。でもね、怪物は意外に身近にいるかもしれないのです。
     この本を興味深く思うのは、この陰惨な事件について詳細に調べ尽くしているから、だけじゃないのです(それもあるけど。とんでもなく克明!)。作者たちがひたむきに事件を掘り下げていった先で「それにしてもなぜ、あなたは凶悪事件に惹かれるのか?」と問うような色合いを帯びてくるところ。ライターの自問自答でもあるし、読者にも投げかけられていると感じます★

     怪物とは何者なのか!? それは間違いなく人間のなかにいるのです。大げさなようだけど、人間の業のようなものを感じる、すごい一冊に出会いました★

  • 気持ち悪いけど、非常に面白い

  • 羊たちの沈黙のトマス・ハリスもこの事件の裁判を傍聴していた。
    つまりそれほどシリアルキラー好きが心引かれる事件なのだが、
    それを、「エクソシストとの対話」の島村さんが丁寧に取材して
    しかも小難しい議論無しで事件の真相に迫る姿がとてもいい。
    何度もフィレンツェに訪れているけど、こんな事件があったなんて
    全然知りませんでした。
    まさにハンニバル・レクターの原型がここにいたんですね。
    謎解きというより、事件を追った人々の年代記。
    ゾディアック(映画)タイプのイタリア版。
    イタリアを知り尽くした島村さんの文章は本当に読みやすくてハマります。

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著者プロフィール

島村 菜津:ノンフィクション作家。福岡県出身。東京藝術大学芸術学科卒業。十数年にわたって取材したイタリアの食に関する『スローフードな人生!』(新潮文庫)はスローフード運動の先駆けとなった。著書に『フィレンツェ連続殺人』(新潮社、共著)、『エクソシストとの対話』(小学館、21世紀国際ノンフィクション大賞優秀賞)、『スローフードな日本!』(新潮社)他。最新作は『バール、コーヒー、イタリア人~グローバル化もなんのその~』(光文社新書)。

「2017年 『ジョージアのクヴェヴリワインと食文化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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