そして粛清の扉を

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104431014

感想・レビュー・書評

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  • 第1回ホラーサスペンス大賞大賞受賞作。生徒を人質に教室を占拠した女教師の話。

    D組の担任近藤亜矢子は卒業式を明日に控えた生徒たちに笑顔で銃口を向ける。あなたたちは人質だと言われ、最初バカにして笑っていた生徒たちも1人目が何の躊躇もなく亜矢子に殺されると、とりあえずは黙って彼女の指示に従う。
    だが亜矢子は知っていた。彼らが子供の皮をかぶった化け物だということを。そして前代未聞の監禁事件に挑む警視庁捜査1課弦間は、亜矢子の罠によって部下を失いながらも確実に教室へ近づいていく。一体亜矢子の目的は何なのか? タイムリミットの翌日12時が刻々と近づくなか、亜矢子は生徒たちに血の制裁を1人、また1人と下していくのだった――

    生徒たちがどいつもこいつもヤクザ級の不良。これではどっちが悪者かわからないくらい。とはいえ、やはり理由はあれど、亜矢子の行為にはどうしても不快感が伴う。
    よく練ったストーリー展開でラスト二転三転するのは面白かったが、動機がね。あまり説得力がない。
    あとこれは書き方の問題なんだけど、やたら漢字を使いたがるのが気になった。たとえば「残念乍ら」は「残念ながら」でいいじゃん。こんなのはまだまだ序の口で、作品中何度もいらないところで漢字を使ってるので、読むリズムを崩された。

  • どなたかの感想で、無駄に一般的ではない漢字を頻出させる為、読むリズムが崩れるという感想があった。
    確かに「乍ら(ながら)」や「頓に(とみに)」、「眦(まなじり)」「飽く迄も」等、あまり使わない。
    読むリズムは崩れるという感想には共感できた。

    本作は第1回ホラーサスペンス大賞とのこと。
    選考委員の宮部みゆき氏が『本作を一読して「バトル・ロワイヤル」を思い出した。』と記載していたし、自分も『バトル・ロワイヤルに近い内容を読みたい』と思って本作を手に取った。

    ただ、正直、「ぅ〜ん。。。」と言った印象で終わった。展開が広がらないというか、先が無いというかそんな印象を受けた。勿論、「悪の教典」とも異なります。ということで、3.5よりの☆3です。

    あと、「ヘリウム24」って結局、何⁇
    ヘリウムの原子記号は2じゃなかったっけ⁇

  • 「バトロワ」はパロディー。樓主としては残酷描写云々より3年B組金八先生製作サイドがクレームを付けなかったことの方が奇蹟だと思うのだけれど。
    「粛正の扉」は真面目に真面目に研究してオリジナルを作ろうとしたもの。
     この二つを一緒に比べるのは土台無理。エンターテイメントパロディーと現代社会戯画だったのだから。
    「粛正」は可哀想だった。(話というよりその作品の取り上げられ方が)
    「バトロワ」の方が面白いのだ。その後に「粛正」は出てしまった。若い子達が支持するのは圧倒的に「バトロワ」だった。なぜなら、彼らは感情移入しやすい。主役は普通の子供達であったから。

    「粛正」は教師が主役で、殺されても仕方ない生徒達がどんどん殺されていく。だから、読んでいて心が痛まない。むしろいっそ気持ちよいぐらいだ。しかし、そうして気持ちよく人を殺すために、その生徒達の個性は薄く乏しくなってしまい、射的の「的」みたいになってしまったのだ。こちらの物語は大人が支持をする。

     娯楽小説だから、「バトロワ」が面白いのは当たり前だ。「粛正」には、樓主の偏見かも知れないけど『俺は真面目にお堅く、現代社会の縮図を書いてるんだぜ!』という気位の高さがある。ところどころの、別にひらがなでいいじゃないという文字を漢字で表すところなどに、(そしてルビを振らなかったり)、排他的な作者の気持ちをくみ取ったのだけど。
    「粛正」はだから、万人受けを狙わない硬派であった、とも言える。これが超軟派の「バトロワ」と対比されてしまったから、可哀想なのだ。

  • 殺人鬼と化した女教師の目的とは…?
    出版の時期的に、バトル・ロワイアルと比較される事が多かったそうですが
    いま読んだ私の感想は、女教師の暴走という共通点から「告白」を思い出しますね。
    ていうかそっくり…?

  • 2001年の作品なので、リアルタイムで読んでいれば多分違った感想を持ったと思います。もっと興奮していたというか。

    巻末の選者コメント(新人賞受賞作だそうなので)にもあるように、2001年当時なら「バトルロワイヤル」を思い浮かべたかもしれない。でも今なら、「告白」や「悪の教典」と比べずにはいられない。読む順番を間違えたなーと思う。

    設定は似ていても訴えたいことはそれぞれ違っていて、この作品のテーマもハッキリと独自のものであることはよく分かるんだけれど、上で挙げた作品群と比べてしまうと残念ながら弱いと感じる。登場人物の誰にも感情移入できないのはもったいない。だから鬼気迫るはずの殺戮シーンもストーリーを進める上での書割程度にしか思えない。これだけの話をまとめるには、ページ数が足りないんだと思う。賞の応募作だから仕方ないのかな。

    この倍はあってもいいと思うし、それだけ底力のある小説だと思うので、余計に残念に思う。

  • 4時間弱で一気読了(4時間はもはや一気ではない?みなさんどれくらいで読めるのだろう)。
    読ませるが後に残らない幾多の作品とは違うように感じる。
    底流する熱量の差か。
    賞用サイズのせいか、いろいろ描写不十分なところはあった気もする…。

  • このタイトルで、出だしにこう来たら………思ったとおりに早速登場人物が亡くなります。先が気になる展開なのは確かでしたが、基本的に大人視点から話が進んでいたので、生徒側の視点もあると臨場感や、恐怖やら、あるいは心理変化やらが分かってよかったと思った。
    後は主人公の動機が、曖昧になっている。どう考えても、自分の娘の死がきっかけなはずなのだが、その点がほとんど記述されていなかったので、ただ自分の担当する生徒たちへの腹立ちや絶望感から事件を起したような印象を受けた。(悪いやつを成敗する、といった印象)娘への気持ちなどがもうちょっと入れて欲しかった。

  • 人がたくさん死ぬけど、アッサリ殺されるのでサッパリしている。
    映画のように シーンが頭の中に出てきた。
    描写がクドイわけじゃないのに すごくわかりやすい。

    上辺だけを読み進める私でも、
    最後のオチは 途中でわかってしまったので
    ドキドキ感は少なかったけど 続きが出ているなら気になる!

  • 告白やらバトルロワイヤルとどうしても比較してしまう本。
    なぜ主人公がそんな技術や武器等を入手できたのかなと不思議に思ってたが一応説明がついていた。
    どれもこれも動機や理由というのはわかるが、もう少し全ての人間特に理由を説明されている人にはもう少し心理描写があったら社会批判だけでなく小説としても面白かったかなと思う。

  • 「バトルロワイヤル」にヒントを得たと思われる「そして粛清の扉を」にヒントを得たと思われる「告白」。

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