- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104752034
感想・レビュー・書評
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「自民党総務局長の職務は、世間一般にはあまり知られていないが、選挙における党の公認を決定し、選挙費用を分配、その他、自民党に敵対する政治家の信用失墜のための裏工作を計画、実行するなどの汚れ仕事を含む広範囲に及ぶ。」(p13 第一話 鈴木宗男の悲しみ)
のっけからおっかないことがサラリと書いてあるが、佐藤優氏の著作は、成熟した大人のための読み物という言い方がふさわしい。
現実の社会を深く経験してきた人しかわからない苦さと、そして愛情に満ちている。
「(イスラム原理主義、マルクス主義同様、)私が信じるキリスト教思想も、基本的には「人殺し」を正当化する論理を含んでいる。だから思想を扱うこと殺人は隣り合わせにある。このことを自覚していない思想家は無責任だと思う。」(あとがき p319-320)
「戦争を意識しないような思想は、偽物とはいえないとしても「思想の抜け殻」にすぎないのだと私は考えている」(あとがき p320)
こういうことを遠慮なく表明する著者の本が面白くないわけがない。
内容に必ずしも賛同するわけではないが。
あまりに軽々しく発せられるネット上の言葉の切れっ端にいつも曝されているので、こういう腰の重たい文章に出会うとホッとするわけである。 -
「<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163685804/ichiromarin09-22/ref=nosim" target="_blank">交渉術</a>」で紹介した佐藤優氏の著作。仕事を通して知り合った歴代総理や、代議士、ロシアの政治家や、歴史的人物などについて彼独特の視点で論じる。「交渉術」とかぶっている議論も多いが、それでも「客観的とはこういうことである」といいたくなるような冷徹な論述は非常に面白い。
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実に面白い。鈴木宗男の話、小渕恵三の招き猫、マフィアの技法etc。
『週16回』の処で、頭がクラクラして参りました。
日本人もこのくらいやらないと露西亜人や支那人にやられっぱなしになるなと
妙に納得した次第である。
筆者佐藤優氏の処世論はどれを読んでも氏の体験に裏打ちされて勉強になる。
「技法」「文法」と言ふ言葉使ひも新鮮な響きを持ち、面白い。 -
図書館
この人の本を読むと賢くなった気がしてよい
そして面白い
でも神学の話はわからないなぁ -
インテリジェンスに携わっていた者から見た人間論。
まず鈴木宗男の哀しみを説く。絶頂期に鈴木に従った人間が、騒動を期に手を返したように離れていく。それでも、選挙で返り咲き、信念に従い戦っている。著者は哀しみの部分にポイントを絞って書いている。
橋本龍太郎についても書いている。記録力がいい。エリツィンから頭のいい奴と言われている。そのエリツィンとの首脳会談前の打ち合わせ等、交渉の裏面を面白くよむ。ただ、米原万里氏は、仕事にかこつけて迫ってきた橋本を人間として信頼できないと佐藤に話している。橋本のキャラクターは、剣道に通じている。親しいと思ったら親しくない。友達ををあえて作らない感覚であったという。橋本がやっていた剣道と何らかの関係があるのかもしれない。
インテリジェンス能力で佐藤が高く評価しているのが小渕恵三。自分が納得するまで質問し理解するという基本を実践している。また、「情勢に変化がないというのも立派な情報だ」と情報感覚に優れていた。小渕の叔父が陸軍中野学校出身と言うからうなずける。彼が首相を続けていたら、日本の進路も少し変わっていたかも知れない。
森喜朗についても書いている。あまり良いイメージを持たれていないが、外交に関しては、国益を優先する政治家として当然の姿勢を貫いている。加藤紘一の妨害を恨みとせず、佐藤に協力を依頼する森野良心が印象的だ。
プーチンについても書かれている。もともとKGB出身ということもあり、自分の感情を表面に出さない。ただ、かれは、一官僚に過ぎなかった自分がロシアの大統領になったことで、神霊的なものを感じているのだという。そして、プーチン20年帝国を気づき、新たなロシアイデオロギーを立ち上げようとしているのだという。ただ、そうした彼にも人間的な部分があることを、佐藤の回想によって知った。
蓑田胸喜という思想家についても触れられている。戦前戦中に活躍した、国家主義思想家。次々と的を論破したが、敗戦とともに自死した。国家機関説を排撃し、大川周明も攻撃している。極端な主義思想の持ち主。
ラスプーチンについても書かれている。巨大ないちもつを持つとかについても、真実を書いている。
スパイゾルゲについても書いている。スパイとして、真実を誰にも打ち明けられない孤独を知った。愛人に対してその心情を吐露し、甘える、そうした心境を知った。
金日成の食通ぶりにも興味がある。かれは、部下に対して外貨を得るために食事をしっかりしなければならないとして、細かな指示を与える。そうしたところを読み解き、北朝鮮へのシグナルとして活用すべきだととく。息子の金正日はそんなに食事にこだわらないらしく、食事よりも話に夢中になるという。
陸軍軍人で情報のプロ有末精三についても書かれている。GHQを迎え入れるときの数々の対応ぶりに驚く。少しでも米軍の心証を良くしようとしたり、日本にまだ余力があるように見せかけ、あまり乱暴な軍政を行うとテロが起こるよとさりげなく脅すテクニックは興味深い。きわめて現実的な対応ができる軍人がいたのかと感慨深い。
トルクメニスタンについても書かれている。衛生中立国となっているが、資源があるのに人工が少なく、周辺の大国の影響を受けやすい国で、如何に生き延びていくのかの政治が書かれている。
ポロニウムで殺害されたリトビネンコ事件に関しての著者の推理。ロシアにより暗殺を否定している。
神学を学んできた著者として、イエスキリストについても書かれている。ユダについては、裏切り者というイメージしかないが、それを覆す文書が出てきたという。それが反映され、キリスト教に変化を及ぼすのは時間が掛かるとのこと。
神学の話は正直難しい。再読が必要だ。