あの川のほとりで 下

  • 新潮社
4.19
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本棚登録 : 219
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105191146

作品紹介・あらすじ

追っ手を逃れてニューハンプシャーからボストンへ、そしてヴァーモントへ移り住んだ料理人とその息子。成人した息子は作家として成功し、父親となるが、やがて愛する者たちを次々に失ってしまう。運命に導かれるように、気づけば彼は故郷の町の川のほとりに辿り着き、かつて自分を守ってくれた樵の物語を書き始める-。ハートフルで壮大、待望の最新長篇。

感想・レビュー・書評

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  • アーヴィングの小説は、とりあえず長い。読み始めると他の作品が手に取れず、困る。
    「少年が熊と間違えて殴り殺したのは父親の愛人だった!」上巻の帯に書かれた煽り言葉に辿り着くまでで、まるまる1章129ページ。
    ここから始まる逃避行の描き方が独特。
    10年や20年時間をワープして、その地点に至るまでの出来事を回想し、また次の時代へ跳ぶのが繰り返されていく。
    逃避行と避け難い悲劇の予感に対するスリルとテンションを保ちながらも、感傷とユーモアたっぷりの膨大なエピソードで“事故の起きがちな世の中”で失ったものを悼むという巧みな構成は、ラストに過去が現在に追いついてフィナーレを迎える。そのとき長じて作家となった主人公ダニエルが回想するのは、少年だったツイスティッド・リヴァー最期の夜-ピタリと原題の通り-なんて見事なエンディングだろう。

    大切な人をふと懐かしく想い出すときに浮かぶのは、ちょっとしたつまらないエピソードやくだらないジョークだったりしないだろうか。
    アーヴィングが奇想天外な物語の中で繰り返し描くのは、人生は突然の悲劇に溢れていても、その幕間には素敵な想い出の数々が詰まっているということだ。

    「ホテル・ニューハンプシャー」「オーウェンのために祈りを」「熊を放つ」(極私的なベスト3なので悪しからず)に及ばずとも、読み終わったあとに幸福な気持ちになれる素敵な物語だった。

  • 不慮の事故を発端に逃亡する父子。父子は名を変え、子は小説家へ。月日の流れの中で様々な回想が父子と友人の結び付きを明確にしていく。常に追われる父子の日常にはさらなる悲劇を予感。圧倒的なエンディングと仕掛けに唸る。

  • 最後まで読んで、モヤモヤが取れた。
    もしかすると、映像化した方がうまく伝わるかもなぁと思った。
    料理の描写がアメリカ小説としては最高(笑)

  • 久々に堪能した米国純文学で、「タマをぶっ違いにしない」で読み切りました。
    総じては父子の物語であることに尽きます。
    下巻では3組の父子の別れがメインになっていて、ラストで、作者のトリックにまんまと引っかかっている自分に気づかれました。
    (それほど老樵ケッチャムの存在感は圧倒的ですから)
    また、これほど一文、一語を徹底して追及している作家は、最近の日本では高村薫、村上春樹が思いつきますが、だからこそ、自分も真摯に文と対面したいと思います。
    訳者の不慣れな点が散見されて、若干読みにくいでしたが、満足しました。

  • 古い林業と製材業の町の話し。筏流し師が出てくる話しだ。

  • これだけ長い物語なのだから不満が全くないと言えば嘘になる。馴染みのない食材名の並ぶ料理の記述、あるいはニューメキシコからカナダへ続く土地の描写はいささか読みづらさがある。

    しかし、それは文章の欠点ではない。それは単に自分の距離との齟齬であるだけだ。知らない国の映画を見る際のぎこちなさのように、世界観が完全に確立されているからこそのズレなのだ。

    物語は澱むことなく流れ続ける。誤って殺してしまった息子を連れて逃げる父親、追いかける保安官。本流のストーリーと並走する複数のレストラン、ケッチャムと狂った妻にテロ。ケネディファーザー。人々の人生に絡まる大きな歴史。何処にけちをつけることが出来るだろう?

    父親の死やケッチャムの苦悩に涙をすることはそうであるが重要なのは全てなのだ。言葉によって世界が生まれ、そこに起こる出来事を体験することができる。そんな事を可能にできる作家をなぜ尊敬せずにいられるのか。

  • 初めて読む「巨匠」ジョン・アーヴィングの作品でした。そもそも祖母からの贈り物。本の帯通り、父と息子の逃避行物語です。新鮮だったのは主人公が従軍はしていないが、ベトナム戦争の時代を生き、また9.11のテロの時代も生き、その当時の主人公の主観が本に描かれていること。いままでのアメリカ文学にはなかった視点だと思いました。
    なかなか辛い人生を歩む主人公ですが、必ず誰かが主人公を支えていて、それは自分にもきっと当てはまるのだろうなと自然と思えてしまう、そんな素敵な作品でした。

  • 面白いとは思うんですが、長いなあと言う印象を持ちました。詳細すぎる地理の説明には閉口します。

  • 人生の旅を描いた物語。登場人物のそれぞれの想いがひしひしと伝わり、長さを感じなかった。読後感も良く、さまざまな想いをもって本を閉じることができた。

  • アーヴィングの作品は3冊め。
    とんでもない悲劇が起こって、いろいろ損なわれる事があっても、人生が決定的にダメになる訳じゃない。必ず誰かが支えになってくれる。
    あと、作者本人と思しき主人公。
    何を読んでも結局同じかな~なんて思いつつ、どっぷりはまって読んでしまう。流れの早い曲がりくねった川に翻弄されるような読書でした。

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