トマス・ピンチョン全小説 ブリーディング・エッジ (Thomas Pynchon Complete Collection)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105372149

作品紹介・あらすじ

今度のピンチョンは9・11+家族小説!? 76歳にして新境地開拓の超話題作。ITバブルは弾けたが新世紀の余韻さめやらぬニューヨークで、子育てに奮闘する元不正検査士の女性。知人の仕事を手伝い覗いたネットの深部で見つけたのは、不穏なテロの予兆だった。NYの、そして世界の運命は肝っ玉母さんの手に――オタク的こだわりと陰謀論にあふれる、謎に満ちたアメリカ文学の巨人が放つビッグバン。

感想・レビュー・書評

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  • 2001年の春。シングルマザーのマキシーン・ターノウはニューヨークで不正調査員として働きながら2人の息子ジギーとオーティスを育てている。
    以前は公認不正検査士だったが、今は資格剥奪されてフリーランスだ。

    数年前にクルーズ船で知り合った男友達でカメラマンのレッジ・デスパードから、自分が契約している会社が怪しいから調べてほしいと頼まれる。
    それはハッシュスリンガーズ(”情報を叩き切って見えないところに放り投げる”、というスラングらしい)というコンピューター・セキュリティ会社で、ÇEOのゲイブリエル・アイスはバブル崩壊後も成功者として名の知られる若手資産家だった。
    ハッシュリンガーズは、人々の怪しい噂の格好の対象だった。政府のセキュリティ専門部署とも関連があり、機密任務も請け負っているとか、目的不明の大金がこの会社を経由してあらゆるところに流れているという噂がある。噂の真偽はともかく、たしかに不自然なくらいに資金が上昇している。
    探りを入れようとしているコンピューターマニアや記者たちにも今の所お手上げだという。

    マキシーンは、ゲイブリエルとは繋がりがない、とも言えないくらいの位置にいた。
    まずマキシーンの友人のマーチ・ケレハーの娘のタリスがゲイブリエルの妻だ。
    マーチはブロガーで都市伝説やら陰謀やらアメリカ裏社会の闇やらを発信している。そしてマーチはハッシュリンガースとゲイブリエルを怪しんでいて、ブログで攻撃しまくっている。娘のタリスを心配しているのだが、タリスは怒って絶縁状態。

    さらに、ゲイブリエルが買収したがっているインターネット仮想空間ゲーム<ディープアーチャー>は、マキシーンの友人のジャスティンと相棒のルーカスだった。

    そしてマキシーンの妹のブルックはイスラム系のアブラム(アヴィ)と付き合っている。このアヴィはハッシュリンガースからスカウトされていた。
    そのせいなのか、ある時ターノウ家にはFBIでもCIAでもない情報組織のニコラス・ウィンダスト捜査員が話を聞きに来る。

    さらにハッシュリンガースの調査を進めるマキシーンの身の回りにはキケンが迫っている…ような気がする。
     あとをつけられている?
     トイレの壁に重大なメッセージが書かれている?
     どこかから届けられたメモリーカードに秘密の情報が?
    ついには死者が出た。以前ハッシュリンガース傘下の会社で働いていたが、会社が精算されることになり、かなりの大金である隠し金を自分の懐に入れていたレスター・トレイプスの死体が見つかったのだ。公式には事故死。だがマキシーンはレスターは消されたのだと確信していた。怪しいのはニコラス・ウィンダスト。

    さて。私はこの小説にはかなり手こずりました_| ̄|○
    地の文も会話もバブル調というのか「〇〇だワ」「〇〇ってわけ」という調子。小説が読みやすいか目が滑るかっていうのは、文章のリズムに乗れるかどうかであって、わたしはこの語り口のリズムに乗れず_| ̄|○

    また、この話の舞台が2001年なので、当時流行したエンタメや、当時の政治家や有名人が出てくるし、スラングやオタク用語や言葉遊びもたっぷり。これはアメリカ人だったら「わかるわかる」と楽しめたのだろうか(・・;)、私には「コメディアンの口調で」「映画の〇〇みたい」と言われてもその元ネタがわからないので楽しみが共有できず_| ̄|○
    そしてたまに「将来はきっとこうなる」というような未来予測もされているのだが、私には果たして現在その様になっているのかどうか(将来〇〇が流行するから今から買っておこう、みたいな)がわからないので、その登場人物は先見の明があったのかおバカな投資をしてしまったのかがわからない…これもアメリカ人だったらわかるのだろうか…
    かろうじてわかったのは悪徳資本主義者の体現のドナルド・トランプと、色々揶揄されている当時のNY市長(最近だとトランプ派閥でお騒がせだった)のジュリアーニ。彼らのお騒がせっぷりは日本人の私にもなんとなくはわかる。
    そのうえ情けないことに世界情勢や経済の流れが全然わからないので、アメリカの中近東や南米での派兵行為やIT業界のバブル崩壊やらの背景にある流れやら政治の動きやらが全く読み取れない_| ̄|○
    悪徳経営者のゲイブリエル・アイスも、テロリストの資金洗浄とか、彼もユダヤ人なのに反ユダヤ主義者の仕事も関わっているんだとかいうのですが、おそらく当時の企業や世界情勢がわかる人なら彼がどうやってここまでの資金を集めたのか、彼の企業姿勢はどんなものなのかも理解できず(´・ω・`)
    さらにウィンダストが関わった中東の作戦?はなんなのかーー世界情勢に詳しい方はきっともっと楽しめます(´;ω;`)

    さらに出てくる登場人物が個性的すぎて、本書のほぼ全てでライトがチカチカピカピカ光っているようななんとも頭がチカチカしてくる。登場人物は私が理解できた範囲でこんなかんじ。
     ホレスト・レフラー:マキシーンの元夫で子供たちの父親。事業は調子が良いみたい。結婚に向かないというので円満離婚したけれど、別れても家族というか仲は良い。
     アーニーとエレインのターノウ夫妻:マキシーンの両親。オペラ好き。
     ヴァーヴァ・マケルモとその娘のフィオーナ:マキシーン母息子が家族付き合いしている。この一家の父親は<ディープアーチャー>開発者ジャスティンなんだが、ヴァーヴァはゲイブリエルとフリンしている。ア〇〇セックスがいいんだとか言っていて、マキシーンは「その話は深くも浅くも聞きたくないかなー」という感じ 笑
     エマ・レヴィン先生:マキシーンの上の息子のジギーが通っている格闘術の先生。イケてる女性らしく、恋人は元モサドの男。
     ハイディ:高校時代からの悪友
     イヴァン・ストリューベル:ハイディの元婚約者でコンピュータ不正操作で逮捕された。
     ジョエル・ウィーナー:マキシーンが調査員ライセンスを取り上げられる原因になった不動産屋。
     ロックウェル・スレ−ジャド、通称ロッキー:ゲイブリエルに投資している。
     ショーン:サーファーで禅マスター
     コンクリング・スピードウェル:異様に鋭い嗅覚で調査員をしている。ハイディと付きあっている。
     チャーズ:タリスの不倫相手。でもゲイブリエルにあてがわれた相手みたい。タリス曰く「ペニスが本体で、それに東テキサス人がついている」 
     マーヴィン:派手な格好でニューヨークを回る配達人。マキシーンに重要な情報をもたらす書類やらビデオやら届ける。依頼人は誰だっけ? 
     ドリスコス・パジェット:ジェニファー・アニストンに憧れるハッカー
     イゴール、ミーシャ、グリーシャ:なんかロシアの…企業マフィア??のイゴールと、その手下の2人。ラップの乗りでゲイブリエルを脅すためにマキシーンやタリスを誘拐しようとしていろいろごちゃごちゃする。(ごちゃごちゃするだけで深刻にはならなかった)
     シオマラ:ウィンダスとの最初の妻。中近東で彼女を助けたことが、ウィンダスとの最後の善行らしい。
     ドッティ:ウィンダスとの二番目(現在)の妻

    それぞれの登場人物たちのアンダーグラウンドな服装やら持ち物、好みの音楽などがその都度書かれているので、読んで頭に浮かべられる読者だったら彼らの人物像をすぐに具現化できるんだろう。しかし私には〇〇と書かれたTシャツといわれても、その〇〇のブランドやらスラングやらがまったく理解できず_| ̄|○

    さて、本文に戻って。
    マキシーンの元にあるビデオが届く。
    それにはビルの屋上からボーイングを狙撃しようとする男たちが映っていた。
    その数日後に911テロが起きる。
    マキシーンはなにかを知ってしまったのか?それともこれも”陰謀論”なのか?
    ゲイブリエルやウィンダストはどう関わっている?

    私が物語についていけないままラストを迎えたのだが、このラストは理解できない私にも面白く読めた。
    ゲイブリエルに買収されるくらいなら、と全米公開された<ディープアーチャー>は、自分自身がそのゲームの世界に入ることができるという世界らしい。このバーチャル世界でマキシーンは死者の声を聞いたり、残したものを受け取ったりする。

    その後の誘拐事件のごちゃごちゃを乗り越えて、なんか終盤は家族が戻っての大団円、だった気がする。
    物語に全くついていけなかった私がラストのすっきり!!は味わえたのだから、全部を理解できた人はさぞかし楽しい読書体験ができるんだろう。

  • 原題は<BLEEDING EDGE>。辞書によれば「技術などが開発最先端の(テスト段階にある、試作的な、アルファ版の)通例、安全性・実用性などが十分に確認されていないもの」を指すらしい。作中にコンピュータおたく二人が開発した「ディープ・アーチャー」というサイバー・スペースが登場する。いまだライセンス化されていない試作段階のサイバー空間には、それなりの腕を持つハッカーなら誰でも侵入可能で、各々が好き勝手なことをし放題の状態にある。つまり、「ブリーディング・エッジ」は、まだ知られぬ能力を持つハッカーたちの草刈り場にもなるわけだ。

    あの、トマス・ピンチョンの最新作である。前作『LAヴァイス』で、サンダル履きのヒッピーくずれを探偵にしたかと思ったら、今度は二人の子持ちのシングル・マザーを探偵役に起用している。しかも今回は本物の私立探偵ではない。投資関係の不正処理を暴く、本人いうところの「帳簿係」だ。人の好いのが災いして、信用してはいけない人物の口車にのせられた挙句、資格を剝奪され、今は「非公認会計不正検査士」を名乗っている。それでも腕が立つからか、あっちこっちからひっきりなしに依頼の電話がかかってくる。

    そんなマキシーンのオフィスに、以前クルーズ船で知り合ったドキュメンタリー映像作家のレッジが現れる。ある会社に仕事を依頼されたが、実際仕事にかかってみると、かなりヤバそうな会社なので調べてほしい、というのだ。その会社というのが、新興IT長者のゲイブリエル・アイスが興した「ハッシュスリンガーズ」。調べてみると、誰に訊いてもいい評判が返ってこない、いわくつきの会社だった。

    時は二〇〇一年、場所は前作のロサンジェルスから一転して、ニューヨーク。ここまで書いたら、生粋のニューヨーカーならずとも思い当たる。物語が始まるのは春分の日。運命の九月十一日まであと半年足らず。物語の背景にワールドトレードセンターのツイン・タワーが暗い影を落としている。あの同時多発テロがイスラム過激派によるものでなく、アメリカによる自作自演だったという説は、早くから囁かれていた。では、いよいよピンチョンが満を持して、お得意のパラノイア的想像力を駆使してその解明にあたるのか?

    いやいや早まるでない。ハンドバッグにベレッタを忍ばせることはあっても、マキシーンはただの会計不正検査士。大規模犯罪を暴くにはあまりにも非力だ。物語の基本的な枠組みは、あくまでも悪徳企業で働く一人のエンジニアの死の背景を追う、ハードボイルド小説のそれだ。しかるに、マキシーンは薄汚れた都会を彷徨う孤高のヒーロー、なんかじゃない。二人の子の学校への送り迎えもしなければならないし、ママ友と女子会したり、両親の家を訪ねたりもしなけりゃならない。いたってドメスティックな役回りなのだ。

    面白いのは、全盛期を過ぎたとはいえ、ルックスもスタイルもかなりイケてる三十代女性が探偵役となると、周りに集まってくる男の対応が、男の探偵の時とは違ってくる。イタリア系の投資家ロッキー、ロシア系の顔役イゴールをはじめとして、普通なら敵側に回りそうな面子が、みなマキシーンに力を貸すから愉快だ。そんな大物たちや、足フェチの天才ハッカー少年エリックの力を借りて、マキシーンが立ち向かう当面の敵は、ゲイブリエル・アイス。この男をめぐる金の一部が中東その他に流れ、闇のプロジェクトに使われているらしい。その上前をはねた男が殺されたところから事件は動き出す。

    ジョン・レノンが殺された現場に建つダコタ・ハウスがモデルとされる、屋上にプールのあるビルだとか、モントーク岬にアイスが建築中の別荘の地下にある使途不明の巨大空間だとかいうお定まりのガジェットに加え、今回魅力を振り巻くのがディープ・アーチャーというサイバー空間。開発者の一人は、マキシーンのママ友ヴァーヴァの夫。その話を聞いたマキシーンは実際に仮想空間を体験する。このあたり、ゲーム好きなら、解像度や何やかやの凄さが分かるのだろうが、素人にはIT用語はさっぱりで、楽しめないのがもったいない。

    実は、マキシーンはユダヤ系。妹の夫はイスラエル人でアイスに雇われているし、アイスの妻タリスの母親は、マキシーンとは旧知の間柄で反体制活動家のマーチ。アイスが何をしているのかは知らないが、マキシーンたちは、初めから事件に巻き込まれていた。そんなマキシーンの前にウィンダストという男が現れる。国家と関わりの深いネオリベ組織の活動員らしいが、危険な魅力を発散し、マキシーンはそれから逃れられない。そんな折、マキシーンの家に、ビルの屋上で行われるスティンガー・ミサイルの演習実践のビデオが届けられる。一見して分かるように、航空機を狙撃しようと企む連中がいるのだ。

    トマス・ピンチョンと聞いて怖毛を奮う必要はまったくない。これがニューヨーカーという人種だろうか? 主人公マキシーンの一人称視点による軽いノリで、ポップカルチャーを適当にピックアップしながらテンポよく会話が進んでいく。話があまりスピーディーに進んでいくので、五十人弱に及ぶ、付録の「主要登場人物紹介」を手許に置き、時々のチェックは欠かせないものの、要所要所には註が付されているのでネタの解釈に悩む心配はない。ピンチョンがこんなにスラスラ読めていいのかしら、という疑問が湧くぐらいのものだ。

    が、そこはピンチョン。国家の枠を超えて動く使途不明の金の動きを追いながら、ふた昔も前のテレビ番組や映画、ポップミュージック、イタリア系、ロシア系、ユダヤ系、それぞれのお気に入りの飲食物、それに今回はファッションやら香水にまで蘊蓄を披露して飽きさせない。巻末に、ニューヨーク市、ロングアイランド、マンハッタン、アッパー・ウェストサイドと四枚の詳細な地図が付されている。舞台となるニューヨークという街を知らないのがいかにも悔しい。当時を知る人なら、ジュリアーニ市長が登場する前のNYCと、それ以降の景観のちがいを思い浮かべ、感慨に耽るのではあるまいか。

    覆面作家であるのがわざわいして受賞に至らないものの、その正体を明かす気さえあるならノーベル文学賞間違いなしというポスト・モダンの旗手、トマス・ピンチョン。ファンが手ぐすね引いて待っていただけはある、読みごたえ充分の作品だが、一般の読者にも門戸は広く開かれている。『ヴァインランド』がそうだったように、入り口は広く奥の深いのがピンチョンの世界だ。若い読者なら『LAヴァイス』や、この作品からピンチョン・ワールドに入っていくのが正解かも知れない。

    • 淳水堂さん
      abraxasさんこんにちは。
      私も読み終わりましたが相当手こずりました(´・ω・`)
      ピンチョン導入にちょうどいい、という評価も多いの...
      abraxasさんこんにちは。
      私も読み終わりましたが相当手こずりました(´・ω・`)
      ピンチョン導入にちょうどいい、という評価も多いのですが、現在の大衆芸能、世界情勢、IT社会の移り変わりの基礎知識が全く無くて。。_| ̄|○

      しかし世界の政治経済、現実と仮想現実までスケールが大きくなっていますが、結局は家族の話なのか、ラストはスッキリ大団円…てことで良いんですよね。
      私がラストはスッキリ読み終えたので、情景がわかる方々は本当に楽しめたんだろうなあと思いました(´・ω・`)
      2021/07/01
    • 淳水堂さん
      abraxasさんこんにちは。
      私も読み終わりましたが相当手こずりました(´・ω・`)
      ピンチョン導入にちょうどいい、という評価も多いの...
      abraxasさんこんにちは。
      私も読み終わりましたが相当手こずりました(´・ω・`)
      ピンチョン導入にちょうどいい、という評価も多いのですが、現在の大衆芸能、世界情勢、IT社会の移り変わりの基礎知識が全く無くて。。_| ̄|○

      しかし世界の政治経済、現実と仮想現実までスケールが大きくなっていますが、結局は家族の話なのか、ラストはスッキリ大団円…てことで良いんですよね。
      私がラストはスッキリ読み終えたので、情景がわかる方々は本当に楽しめたんだろうなあと思いました(´・ω・`)
      2021/07/01
    • abraxasさん
      淳水堂さん、こんばんは。
      私も、コンピュータは全くダメで、分かってたら面白いんだろうな、と思いました。芸能ネタはいつものことで、これがない...
      淳水堂さん、こんばんは。
      私も、コンピュータは全くダメで、分かってたら面白いんだろうな、と思いました。芸能ネタはいつものことで、これがないとピンチョンではないので、分からないと楽しめないですよね。
      でも、ピンチョンって、非常に人間的なところがあって、そこが好きです。今回は家族に焦点が当たっていましたが、仲間というか、人間同士のつながりをいつも大事に描いています。そういう点では『逆光』もいいんです。仕掛けも大掛かりで気球まで出てくるので、おすすめです。再挑戦の機会があれば、是非!
      2021/07/01
  • 飲み会で斜め前の人がさも「自分の話す内容は重要でありためになり」と言ったまやかしを疑うことなく生きてきて、しかしそれには少しも信念やリアルさなどがなく心を打たないにも関わらず、「理解できない人間って現代人都会人として変わってるよね」とかいう雰囲気をあらかじめ発射しているもんだから、周りの人間も「へー、そーなんだー、そーゆーふーに考えるって必要なことだよね(なんのためだ)」的な聞き流す攻略法で場をやり過ごす以外にめんどくさい、そういう飲み会で話に加わらないんだけど、同じテーブルでむかむかしている自分を思い出しました。

  • アフリカに脳を置いて行く…面白い

  • WTCに旅客機が突っ込んだあとのセリフ「あの日はひどい災禍だった。でも、それだけじゃない。あなたも感じてない?みんなが退化しているの。9・11はこの国を子供化したわけよ。成長するチャンスはあったんだけど、それを逃して、子供に退化する道を選んでしまった。」が妙に納得してしまった。

    コロナ・ウィルスが蔓延すれば弱者救済という名目でバラマキを行い、国境を閉じて難民を締め出したりしました。ロシアのウクライナ進行が始まれば、原油の価格があがり資源の奪い合いがはじまり化石燃料の使用が止まらなくなっていく。少しは良くなっていくと思っていたところで、様子を伺っていたように災難が起きて時代が逆戻りしていくのはよく見ている状態です。

    小説の内容はよくわかりませんでした。少し前に読んだ『LAヴァイス』は主人公のドック。スポーテッロが支配する側と支配されまいとする側の間を要領よく動き回りたくましく生きていく様子に爽快さを感じました。今作ではもやもやが消えません。テクノロジーの進化に人間がついていけないのがもどかしい感じがしてしまします。

  • 数年ぶりのピンチョン再訪は最新刊のブリーディング・エッジ。帯の人物リスト(必須)を頼りに、「この人はどこで出てくるのか」と一人ひとり登場人物を確かめていく。次第にキャラクターが分かってくると、人物表の名前だけの存在から、より活き活きとした(というかバタバタした)人物像が浮かび上がってくる。ほとんどが主人公マクシーンの行動を追っていく形で進み、脱線も少ないので読みやすいが、これはもちろんピンチョン的基準である。話は分かりやすく、細部で何を言っているのかも分かりやすい。お馴染みのコミカル感に細かいカルチャー物言及(注を楽しみ、検索するのが正解)、陰謀や事件や突然のエモさに急展開、シリアスもコメディも、あらゆる要素を巻き込んで疾走するイケイケな文体。改心のジョークにややすべりのジョークあり。なんかちょっと言ってみただけのジョークあり。知的水準が高くて伝わらないジョークあり。世代でもあるから、いままでのピンチョン本で一番カルチャー的にはわかる物が多かったかな。私もゲーマーだったし、パソコンとともに成長した世代です。(私の成長は止まった。)エンタメ度最高のピンチョン。カッコよくて情に厚い、口先キレキレかと思ったら、その晩見る夢に動揺しているマクシーン。放ってはおけない気持ちになってくる。みんなで彼女を応援上映しよう。

  • 新刊(去年ですが)でてたので借りてきました。これほど読みやすいピンチョンは初めてでした。なんでかっていうと2001年物だからかなぁ、しかもピンチョン流9・11。今さら? と思わないでもないけれど、ピンチョン宅の目の前で起きた大惨事らしいので、書いとかなきゃってところでしょうか? 

    無茶苦茶ですけどね。ニューヨークが主人公みたい。陰謀論テンコ盛り。あの飛行機が突入に以下省略しますが、もうザ・アメリカって感じ。にしても超がつく大金持ちったら例外なく悪党なんでしょうかね。株価自由に操って、儲けたお金で武器を作って、世界中にばら撒いて、戦争を起こす、と。

    4、5人の大金持ちがゲーム感覚で遊んでんじゃね? たぶんいま起きている、っていうかいつの時代の戦争もこれ。虚しさが募る。じゃあどうする? 好きなことやれるうちにやっとく。が、なぁ、それすらももうコントロールされてるっぽい……。

    《インターネットの自由ってのを声高に叫んで、その声は大きくなるばかり。そうしながら、ネット世界の大部分を悪い奴らにゆだねてるでしょ? ……おれたちはさ、寂しいし、貧しいし、見下されてる、そこにつけ込んで、チンケな一体感の真似事みたいなのを売り込んでくる……。これじゃさ、おれたちただのゲームの駒でしょ、しかもこのゲーム、最初から仕組まれて、インターネットが、本物の、夢のある、未来を約束していたインターネットがだよ、それが破壊されるまで終わらないんだ》

  • アメリカで謎の巨匠のを初めて読んだ。解説にもあるようにまさに破天荒なストーリーで正直いって自分でも終わりまで読みはしたけど、理解したとはとても思えない。Dainさんがいう、「醉う」というのが正しいところ。いつか他の作品も読んでみたいと思うが、自分がそこまで成長していればいいのだが。

  • ピンチョン史上最も読みやすいかも
    視点人物が一定でしかも、ちゃんとヒーローしてる!
    とはいえ登場人物多すぎて覚えられん!!

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