天使エスメラルダ: 9つの物語

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制作 : Don DeLillo  柴田 元幸  上岡 伸雄  都甲 幸治  高吉 一郎 
  • 新潮社 (2013年5月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105418069

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天使エスメラルダ: 9つの物語の感想・レビュー・書評

  • 解説にあるとおり、作者の数々の長篇のダイジェスト版とでもいうべく、それら長篇のエッセンスを感じることができる短篇集です。

    もちろん、長篇に挑むまえに読むといい、というような入門編のような良さだけでなく、本作それ自体で楽しめる一冊です。個人的には、スラム街の少女と修道女、そして第三次世界大戦に携わる二人の宇宙飛行士を描いた二篇が、さすが小説家と思わせてくれました。

  • 「第三次世界大戦における人間的瞬間」と「天使エスメラルダ」が良かった。
    長編は未読だが、荒廃した世界観にみえる人間性、みたいなものを巧く書くなぁという印象

  • んー、訳者に柴田元幸がいたのでじゃあ、と読み始めたけど。ムードは悪くない割にツメのキレが悪い話が多過ぎ。いやまあ、ビールじゃあるまいし、キレが良けりゃいいってもんじゃないけどね。

  • 九つの物語はどれも静かな物語だ。
    しかし決して穏やかな物語ではない。

    「ランナー」ではある瞬間を記録する。
    彼はただ走っていた。
    そう、ただ走っていたに過ぎないのだが、突然一人の女性に話しかけられる。
    「いまの、見ました?」
    どうも父親が母親から娘を奪ったようだった。
    彼は何もしていない。
    ただ、近くでそんな出来事があったというだけ。
    人はいつもそうだ。
    ただ、歩き、話し、とまり、そんな何でもない日常を生きている。
    誰かにとっての悲劇であっても、必ずしも自分が心動かされるわけではない。
    ただ日常が、その中でいつもとちょっとだけ違う瞬間が過ぎていく。
    その時ふっと自分に目を向け、耳を傾けようとするけれど、妙な気持ちになって、終わることの方が多い。
    また、元どおり。
    それが「普通」だから。

    「天使エスメラルダ」
    12歳の女の子は死んだ。
    乱暴され、投げ捨てられて。
    この報復は誰にすべきだろうか?
    シスターは死んだエスメラルダの顔を見た。
    確かに彼女の顔が浮かんだ。
    それは奇跡だった。誰かにそれは違うと言われても、シスターは祈り続けるだろう。
    誰のために?
    エスメラルダのために?
    自分自身のために?
    神よ、許し給え。
    ......何に対して?
    それでも彼女は唱え続ける。
    ずっと。

    これらの物語に明確な言葉はない。
    はっきりした言葉は必要だけれども、同じように朝もやに浮かぶ風景のような言葉も必要なのだろう。
    よく見えないからこそ。

  • オールスターキャストによる翻訳なので日本語のレベルが高い。代表作ホワイトノイズは読んだが訳がめちゃくちゃなので誰か・・・と思ったら都甲さんがやってくれているのか。
    それでもデリーロが好きにはならないな。すごく読みにくいし固いし重い。日本語で訳された本自体が少ないが読む人がいないからだろう。後書きによると「アメリカでもそんなもの」ふむ、評価が高く有名な割に読まれていない・・・大江健三郎みたいなことだろうか。
    とはいえ面白い。読みにくいが不思議な地点に着地する違和感に刺激される。

  • とてもおもしろかったー。切り詰められた乾いた筆致からふとこぼれ落ちてしまうかのようなエモーショナルな瞬間(まさにHuman Moments)。お気に入りは「ドストエフスキーの深夜」と「槌と鎌」。

  • カリブでやってこない飛行機を待ち続ける男女二人の客。ギリシャで大地震のあとの余震に脅える教師。ブロンクス地区で修道女が目にした奇跡。衛星軌道上で第三次世界大戦に携わる宇宙飛行士。経済犯罪者たちが集う収容所、自分の娘たちがTVで経済ニュースを報じる姿を塀の中から見守る囚人。

    時間を、空間を、人生を、ともに過ごすひとがすぐそばにいるというのに、むき出しの魂に触れあうことを恐れるように、決して相容れることなく互いに孤立し、そのことに気付いているのか、いないのか。
    様々な場所で、様々な現実を生きるアメリカ人たちの姿に、誰にもある心の歪みや瑕、信仰や願望、気づくことのない悲しみや淋しさまでもが浮かびあがる。1979年から2011年まで30年以上にわたって描かれた9つの短編ベスト・セレクション。

  • ドン・デリーロ『天使エスメラルダ 9つの物語』新潮社、読了。スラム街の少女と修道女。第三次世界大戦に携わる宇宙飛行士等々。本書は現代アメリカを代表する作家の珠玉の短編集。人と人、人と土地の距離感を痛々しいまでにリアルに描き出す。不安と向き合う人間の内面がこびりついて離れない。

  • ああ、アメリカ文学だな、という感じの短編集。色彩に乏しくてスタイリッシュ。でも独特で決して没個性ではない。

  • 『「もの」ってなんだろう? 多分僕らが理解する日は来ないのだろう。僕らは受け身すぎるんだろうか、この男を受け入れすぎているんだろうか? 単なる機能不全を見て、神がかりの知性だなんて呼んでいるだけなのだろうか?』ー『ドストエフスキーの深夜』

    全てのエンターテインメント系の作品を否定するつもりはないのだが、物語に乗せられていると感じた瞬間に白けてしまう自分がいる。デリーロを読んでいると、一層その思いがはっきりする。世の中は全て散り散りの偶然に支配されてるいるような気がしている。それを予定調和的にまとめて欲しくない。そんな思いをそっくり受け止めてくれるような本には余り出会わないが、デリーロはそんな稀有な本を書く一人だと思う。

    コズモポリス、アンダーワールド、ボディアーチスト、Falling Manと読んできてけれど、互いに似たところのない作品たちだな、と漠然と感じていたことが、この短篇集の中ではより明確になる。その捉えどころの無さが、デリーロについて多くを語ることを思い止まらせる一つの要因でもある。しかし共通するのはその語り口で、その低温さに気圧されて熱く語り得ないという側面もある。この淡々とただただ偶然が支配する世界を書き綴る作家について何を語り得るというのか、との思いが腹の底の方でふつふつと、怒りに(但しそれは作家に向けられたものでは決してない)も似たような感情を伴って湧いている。

    世界はゼロサムゲームで、世の中の多くの人々はプラスになるように意識的に、あるい無意識に努力しているだろう。そんな中でデリーロは、むしろマイナスを引き受ける人々のことを書く。その作品を読むと自分自身もマイナスを引き受ける人の存在に共感してしまいそうになる。何もノマド的なものに対する漠然とした、かつ安全な場所からの思いではなく、山の中で道に迷った時の不安と同時に襲ってくる心地よさを知っているだけのことだが、その心地よさが、このまま迷い続けたらどうなるかのだろうという想像から生まれて来ることをデリーロは思い出させる。

    『「もしふと浮かんだ、束の間の考えを分離させられたら」彼は言った。「起源も推し測りようのない考えを。そうしたら、我々は日常的に錯乱しているということが見えてくる」』ー『ドストエフスキーの深夜』

    まさにその通り。だから、果てしのない内省に人は捉えられがちになるのだけれども。

  • 世界最高の長編作家の書いた短編集
    長編のような輝きはやや薄れてしまっているけれど、ややライナーノーツ風味で気持ち悪い訳者あとがきに書いてあるように、長編への良いきっかけになる本である
    特にアンダーワールドの一部をなすことになる表題作は、この短編だけをしても筆舌に尽くし難いレベル

  • デリーロの長編のような重さ、複雑さはないけれど、やはりデリーロはデリーロで、テーマも語り方もそのままだなと納得。短編な分、物語はわかりやすく直裁的。長編の部分が浮かんだりするけれど、実は短編から入った方がデリーロに入りやすいと思う。個人的には「アンダーワールド」の作家、なんですけどね。
    短編集ですが、相変わらず重たい作家です。

  • 他人に近づきたい思いがゆがんだ形に表現され、切なくなる9編。

  • 見事。

    最後の短篇に出てくる映画は間違いなく「EUREKA」だ。
    なんというシンクロニシティ。

  • 「心に沁みるポストモダン」だそうです(新潮2012年1月号「世界同時文学を読む 6」都甲幸治より)。。。

    新潮社のPR
    「宇宙飛行士。修道女。リゾート客。異なる国と時代に生きる人々の物語が私達の生の形を浮き彫りにする。米文学の巨匠による初短篇集。 」

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天使エスメラルダ: 9つの物語の作品紹介

九つの短篇から見えてくる現代アメリカ文学の巨匠のまったく新しい作品世界。島から出られないリゾート客。スラム街の少女と修道女。第三次世界大戦に携わる宇宙飛行士。娘たちのテレビ出演を塀の中から見守る囚人。大地震の余震に脅える音楽教師――。様々な現実を生きるアメリカ人たちの姿が、私たちの生の形をも浮き彫りにする。三十年以上にわたるキャリアを一望する、短篇ベスト・セレクション。

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