天使エスメラルダ: 9つの物語

  • 新潮社
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本棚登録 : 206
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105418069

作品紹介・あらすじ

九つの短篇から見えてくる現代アメリカ文学の巨匠のまったく新しい作品世界。島から出られないリゾート客。スラム街の少女と修道女。第三次世界大戦に携わる宇宙飛行士。娘たちのテレビ出演を塀の中から見守る囚人。大地震の余震に脅える音楽教師――。様々な現実を生きるアメリカ人たちの姿が、私たちの生の形をも浮き彫りにする。三十年以上にわたるキャリアを一望する、短篇ベスト・セレクション。

感想・レビュー・書評

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  • 皆さんが書いてるように読みづらかった。整頓され過ぎてひっかからないのだろうか。全体的に人間同士のコミュニケーションがおかしく、それをどうするとかでもなく、どうしようもないものとして放置してあり、それがいわゆるユーモアってやつなんでござましょうか。自分は宇宙飛行士の話が好き。エスメラルダはアズミハルコを思い出した。タイトルといい、言葉を選ぶセンスは素晴らしいのだろう。いかんせん読む側のセンスが足りないものでして。

  • ドン・デリーロ初の短篇集

    天地創造 1979
    第三次世界大戦における人間的瞬間 1983
    ランナー 1988
    象牙のアクロバット 1988
    天使エスメラルダ 1994
    バーダー=マインホフ 2002
    ドストエフスキーの深夜 2009
    槌と鎌 2010
    痩骨の人 2011

    そうね、ノーベル賞候補ぽいかも。
    でも圧倒的に感動が少ない。
    表題作くらいかなー、後に残ったの。

    全体に青春ぽくて。
    いろいろ考えてるんだろうね。

  • 解説にあるとおり、作者の数々の長篇のダイジェスト版とでもいうべく、それら長篇のエッセンスを感じることができる短篇集です。

    もちろん、長篇に挑むまえに読むといい、というような入門編のような良さだけでなく、本作それ自体で楽しめる一冊です。個人的には、スラム街の少女と修道女、そして第三次世界大戦に携わる二人の宇宙飛行士を描いた二篇が、さすが小説家と思わせてくれました。

  • 「第三次世界大戦における人間的瞬間」と「天使エスメラルダ」が良かった。
    長編は未読だが、荒廃した世界観にみえる人間性、みたいなものを巧く書くなぁという印象

  • んー、訳者に柴田元幸がいたのでじゃあ、と読み始めたけど。ムードは悪くない割にツメのキレが悪い話が多過ぎ。いやまあ、ビールじゃあるまいし、キレが良けりゃいいってもんじゃないけどね。

  • 九つの物語はどれも静かな物語だ。
    しかし決して穏やかな物語ではない。

    「ランナー」ではある瞬間を記録する。
    彼はただ走っていた。
    そう、ただ走っていたに過ぎないのだが、突然一人の女性に話しかけられる。
    「いまの、見ました?」
    どうも父親が母親から娘を奪ったようだった。
    彼は何もしていない。
    ただ、近くでそんな出来事があったというだけ。
    人はいつもそうだ。
    ただ、歩き、話し、とまり、そんな何でもない日常を生きている。
    誰かにとっての悲劇であっても、必ずしも自分が心動かされるわけではない。
    ただ日常が、その中でいつもとちょっとだけ違う瞬間が過ぎていく。
    その時ふっと自分に目を向け、耳を傾けようとするけれど、妙な気持ちになって、終わることの方が多い。
    また、元どおり。
    それが「普通」だから。

    「天使エスメラルダ」
    12歳の女の子は死んだ。
    乱暴され、投げ捨てられて。
    この報復は誰にすべきだろうか?
    シスターは死んだエスメラルダの顔を見た。
    確かに彼女の顔が浮かんだ。
    それは奇跡だった。誰かにそれは違うと言われても、シスターは祈り続けるだろう。
    誰のために?
    エスメラルダのために?
    自分自身のために?
    神よ、許し給え。
    ......何に対して?
    それでも彼女は唱え続ける。
    ずっと。

    これらの物語に明確な言葉はない。
    はっきりした言葉は必要だけれども、同じように朝もやに浮かぶ風景のような言葉も必要なのだろう。
    よく見えないからこそ。

  • オールスターキャストによる翻訳なので日本語のレベルが高い。代表作ホワイトノイズは読んだが訳がめちゃくちゃなので誰か・・・と思ったら都甲さんがやってくれているのか。
    それでもデリーロが好きにはならないな。すごく読みにくいし固いし重い。日本語で訳された本自体が少ないが読む人がいないからだろう。後書きによると「アメリカでもそんなもの」ふむ、評価が高く有名な割に読まれていない・・・大江健三郎みたいなことだろうか。
    とはいえ面白い。読みにくいが不思議な地点に着地する違和感に刺激される。

  • 天地創造

  • とてもおもしろかったー。切り詰められた乾いた筆致からふとこぼれ落ちてしまうかのようなエモーショナルな瞬間(まさにHuman Moments)。お気に入りは「ドストエフスキーの深夜」と「槌と鎌」。

  • カリブでやってこない飛行機を待ち続ける男女二人の客。ギリシャで大地震のあとの余震に脅える教師。ブロンクス地区で修道女が目にした奇跡。衛星軌道上で第三次世界大戦に携わる宇宙飛行士。経済犯罪者たちが集う収容所、自分の娘たちがTVで経済ニュースを報じる姿を塀の中から見守る囚人。

    時間を、空間を、人生を、ともに過ごすひとがすぐそばにいるというのに、むき出しの魂に触れあうことを恐れるように、決して相容れることなく互いに孤立し、そのことに気付いているのか、いないのか。
    様々な場所で、様々な現実を生きるアメリカ人たちの姿に、誰にもある心の歪みや瑕、信仰や願望、気づくことのない悲しみや淋しさまでもが浮かびあがる。1979年から2011年まで30年以上にわたって描かれた9つの短編ベスト・セレクション。

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著者プロフィール

1936年、ニューヨークに生まれる。アメリカ合衆国を代表する小説家、劇作家の一人。1971年、『アメリカーナ』で小説家デビュー。代表作に、本書『ホワイトノイズ』(1985年)の他、『リブラ――時の秤』(1988年/邦訳=文藝春秋、1991年)、『マオⅡ』(1991年/邦訳=本の友社、2000年)、『アンダーワールド』(1997年/邦訳=新潮社、2002年)、『堕ちてゆく男』(2007年/邦訳=新潮社、2009年)、『ポイント・オメガ』(2010年/邦訳=水声社、2019年)、『ゼロ・K』(2016年)、『沈黙』(2020年/邦訳=水声社、2021年)などがある。

「2022年 『ホワイト・ノイズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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