- Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900649
作品紹介・あらすじ
1966年夏、ビーチ・ボーイズが発表したアルバム『ペット・サウンズ』は、現在までに総計900万枚を売上げ、ロックの歴史を変える名盤となった。しかし、それまでのハッピーなビーチ・ボーイズ像を覆すこのアルバムは、発売当初はファンやメンバーの戸惑いを呼び、やがてビーチ・ボーイズの、そしてリーダーのブライアン・ウィルソン自身の生き方を大きく狂わせ、崩壊させていくことになった。著者は十代の初め、幸福な少年時代が終わりを告げた時期にこのアルバムに出会い、世界への不安が消えていくのを感じた。チャイムのようなギター、天国に上り詰めていくようなヴォイス-。それからほぼ40年を超えてなお魅力を放つこのアルバムの一曲一曲に、著者はブライアン・ウィルソンの恋愛への憧れと挫折、父親との確執、引きこもり、麻薬、肥満、そしてそこからの奇跡的な回復という闘いのドラマを聴きとっていく。一枚のレコードに込められたアメリカ西海岸の青春の光と影を描き出したノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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実に面白い。ジム・フジーリは泣く子も黙る不朽の名盤である『ペット・サウンズ』の魅力をさまざまな角度から解析する。歌詞を読み込み、コード進行を分析し、アンサンブルを解体し、人間模様についても鋭く切り込む。『ペット・サウンズ』は今でこそ泣く子も黙る傑作だが、同時にここまで哀しい事実(父親との不和、周囲の無理解、迫るプレッシャーなどなど)に彩られたつらい作品であることも生々しく伝わる。もちろんそんなつらい事情など知らずにただジンワリ来る『ペット・サウンズ』の魅力に触れればいいとは言える。聞いてから楽しむべき一冊
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著者よりも村上春樹が全面に出てきてしまう。
ビーチボーイズの評伝というよりも私と『ペットサウンズ』と言う趣が強い。 -
文学の形を借りた、著者から一枚のレコード「ペットサウンド」へのファンレター。
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「〈ものごとが昔のようであればいいのにと、君は思っている。そこでは人生はもっとずっとシンプルなものだった。感情は込み入ったものではなく、人々は単純素直だった。君は当たり前のものごとをそのまますんなり理解すればよかった。ところが今、君は変化することを求められている。ところが君は変化や成長なんか求めちゃいない。すぐそこまで来ている新しい世界に直面することを、君は望んでなんかいないのだ〉」(p.169)
「愛というものはどのような意味を持ち、人の人生のどの場所に埋め込まれていくか? それは人生のかたちを定めるのだろうか。そして愛が去ったとき、あとに何が残るのだろう?」(p.73)
「この曲は一見して、いろんな音楽的方向にばらばらに走っていこうとしているようにも映るが、おおむねのところ固定的であり、一貫する不吉な底流をより確かなものにしていく。曲はBメジャーのキーで始まり(ポップ・ソングにはほとんど使用されないキーだ)、ずっとBメジャーのままに留まる。G#メジャー・コードは、歌の中に love という言葉が現れるときに(ただ一度しか現れない)それを支えるように出てくるのだが、その登場ぶりはきわめて印象的だ。二度目には、G#メジャー・コードは同じ箇所で、今度は fail という言葉とともに現れる。ブライアン・ウィルソンのアレンジメントで、ベースがルート音を強調する例はきわめて希だが、キャロル・ケイは二度とも、G#メジャーをしっかりとヒットしている。ブライアンはリスナーに向かって、曖昧ではない明確なメッセージを送ろうとしているかのようだ。彼の魂によっては、少なくとも彼の音楽においては、「愛」と「失敗」は同義語なのだ、という」(p.121)
「『ペット・サウンズ』のような芸術作品に巡り合ったとき、あなたはそれをそのまま受け入れた方がいい。もしあなたにいくらかでも叡智に向かおうとする心があるなら、自分が今何かの道を示されており、その道筋にあるものを探求しているのだとわかるはずだ」(p.167) -
ビーチボーイズは若い頃から理解出来ない音楽その1でした。うーん、今聴くとわかるのかなぁ…音質的なものは置いといてPCから引っ張り出して聴きたいと思います。
そしてそれなりの村上主義者でもあるのですが、村上春樹の翻訳も良さが全然分からない。何でこんな読みにくい回りくどい翻訳なんだろう。 -
名盤として知られているが何度聴いても良さが解らなかったアルバム。この本を読んでビーチボーイズブームが到来!! このアルバムにも聴き入ってみよう著者の導きに従ってより深く。それにしてもこのcontinuum社の「33 1/3」シリーズって魅力的なラインアップなんだけど、続刊がないのが残念だな。
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ビーチボーイズ、ブライアンウィルソン、そしてペットサウンドを自身の少年の頃を回想を通して、とても愛情深く語る一冊、何といっても村上春樹氏の翻訳は絶妙、ビーチボーイズをBGMに楽しく読みました♪
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特にビーチ・ボーイズに関心があったわけではないのだが、なんとなく図書館で手に取ったら興味をひかれて、そのまま読了。10代の時にビーチ・ボーイズのアルバム「ペット・サウンズ」を聞き影響を受けた著者が、このアルバム制作中のブライアン・ウィルソンの苦悩をたどりつつ、いかにしてこの傑作が生まれたかをひもときながら、なぜにこのアルバムが人の心を打つかを解き明かしていく。ブライアン・ウィルソンの心情が歌詞やコード進行、楽器選択などにどう現れているかについてかなりしつこく迫っている。好きなものについて書くならこうあるべきという好例かと。この言及のしつこさは村上春樹の小沢征爾へのインタビューにも似ている。「ペット・サウンズ」全曲はYouTubeで聞けるので、ぜひ曲を聴きながらどうぞ。ちなみに、原書はContinuumという出版社から出ている、名盤1枚につき1冊ずつで論じたシリーズの1冊らしい。他のラインナップはこんな感じ。http://en.wikipedia.org/wiki/33%E2%85%93
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ペットには癒される。猫とか最高。